1338手間
さてはて、おかしなことは言っていないはずなのだが、この沈黙は何だろうか。
まぁよい、ワシはワシのやりたいようにやるだけだ。
「さてさて、おぬしの知っておることを洗いざらい喋るがよい」
「私が何か知っているとでも? 例え知っていたとしても教える訳がないだろう」
「閣下なんぞと呼ばれとるおぬしがかえ? それにおぬしが来るのを、ここの者は知らんかったようじゃが? なれば何ぞ情報を持っておると考えるのが当たり前じゃろうに」
「ふんっ! 非帝国民が不正を働いていないかの抜き打ち監査だ」
なるほど、確かに事前に先触れなど無くても、何ら不思議でもない理由だ。
将軍などにも連絡が行っていないことにも説明がつく、単純に彼らも監査の対象だと言われてしまえばそれだけだ。
「なるほどの、抜き打ちならば連絡をしては意味がないからのぉ」
「だからそこを退いてくれないかな?」
「ふむふむ。で? じゃからどうした?」
ワシが素直に納得したからか、まるで聞き分けの無い子供に言い聞かせるように道を開けろというが、ワシはニタリと笑いだからどうしたと一蹴する。
「おぬしは我が国の領土を不当に侵す、橋頭堡たるこの砦に来たのじゃ。民の護衛などではなく武器を携えてのぉ、これは援軍と言う奴じゃろう、じゃったら援軍は潰さねばのぉ」
「なっ、めちゃくちゃな!」
「勝手に他国の領土に、砦を築く阿呆に言われたくないのぉ」
「公爵に正式に許可を取り、この砦は大帝国領として割譲されている」
「ちなみにその公爵じゃが、叛逆罪で処刑が決まっておる、つまり帝国は侵略だけでなく叛逆者に手を貸したということじゃな。それと、個人や小数の家族ならばともかく、他国の者が我が国に家を持ち滞在する場合は、国王の許可が必要じゃ。領土の割譲なぞ以ての外じゃな」
「だがすでに正式な文書で締結されていることだ」
「おぬしらは詐欺師が書いた文書を、正式なモノとして扱うのかえ? いくらおぬしらが正式なモノだと駄々をこねようと、公爵が書いておる時点でそれはただのゴミよ」
国王や国王代理出ない限り、ただの子供のごっこ遊びと同じモノを何故こうも堂々と正式なと言えるのだろうか。
「我らが偉大なる皇帝がお認めになったのだ、それは正式な書類である」
「なるほど、おぬしらのいう、いだいなるこうていちゃんは詐欺師に引っかかったと喧伝したいのじゃな」
「なっ、な、なんたるっ」
ワシの言葉に白髪を染める勢いで紅に頭から突っ込んだかのように顔をまっ赤にさせ、壊れたゴーレムが喘ぐかのように「なんたる」を繰り返す目の前の男。
馬鹿にされて怒るのは当然だろうが、小童がぼくがみとめたからほんものだもんと言っているようなモノではないか、いやほんとに帝国は国として大丈夫なのか?
よくそんなので国を乗っ取られなかったモノだ、周りの者がよほど優秀なのだろうが、今まで見てきた帝国臣民を考える限りそれも相当に怪しい。
まぁ大義名分がこちらに増えるならばどうでも良いことだ、ワシの民が苦労するのではなく皇帝の民が苦労するのだ、なんとも憐れなことよと、未だ沸騰している男を冷ややかに眺めるのだった……




