1054手間
街の出口、長老が縦横三人分ほど巨大な門の前にある広場に、ドワーフたちは整然とはいかないが重武装をして集まっている。
ワシの背丈よりも少し長い程度の短槍を持った者たち、ドノヴァンが最初にワシに殴りかかってきたような槌を持った者たち、魔導銃を持った者たち、そしてドワーフが二人くらいまるまる隠れれるくらいの大きな盾を持った者たちと、なかなかに重苦しくむさ苦しい光景だ。
そんな彼らから感じるピリピリとした緊張感は、傍に雷でも落ちたかのように肌に突き刺さってくる。
ここに集まっているドワーフの人数は五十名ほどだろうか、多いとも少ないともいえない人数だが、蜘蛛を追い払うだけと考えると装備も人数も過剰にすぎるのではないだろうか。
「蜘蛛どもは執念深くはあるが頭は悪い、道を覚えるということはしないから、何が何でも、どんな犠牲を払おうとも街に入れないことが重要なんだ。頭は悪いが、その代わりに臭いを追う能力が凄まじく高いからな」
「なるほどのぉ」
ワシの表情からワシの疑問を読み取ったのか、隣に立つドノヴァンが決意に満ちた声でそう教えてくれた。
暗くどこもかしこも似たような光景の洞窟では、道を覚える頭を発達させるより何かしらの道しるべを辿る能力を発達させた方が良かったのだろう。
「それにしても、ちと蜘蛛相手に大袈裟ではないかの?」
「そんなことは無い、さっきも言ったが一匹たりとも街に入れる訳にはいかないからな、万が一を潰すことを考えればこれでも少ないくらいだ」
「ふぅむ」
ワシとドノヴァンが話している間にも、長老が指示を出し瞬く間に出発の準備が整ってゆく。
そんなドワーフたちの中から一人、すっと手を上げ長老に声をかけワシの方を指差す者が出てきた。
「長老、そこの変な格好をした奴は誰です?」
「今回の赤蜘蛛退治に同行することになった地上のもんだ」
なんともざっくりとした長老の紹介を受けると、ドワーフたちは口々に「地上は本当にあったのか」とか、「お伽噺やほら話じゃなかったのか」などとざわめき立つ。
「誰かは分かりましたが、いいんですか? その人連れて行っても」
「腕っぷしなら問題ない、何せドノヴァンの槌を止めたらしいから、な?」
「あぁ、全力で振り下ろした奴を片手で軽々とな、しかも俺だけじゃない、レイッチの槌も一緒にだ」
あんなざっくりとした紹介で納得するのかと内心ずっこけながらも、次いで出てきた疑問に長老は鷹揚に答え、それが事実であるとドノヴァンに確認を取るように声をかける。
話を引き継いだドノヴァンがしっかりと頷き、長老の言葉を肯定すれば、先ほどよりも大きなざわめきが広がる。
「そういえば、そん時にフィリップの奴の槌も脇腹にぶち込まれたはずなんだが……、何で無事なんだ?」
「何でと言われてものぉ」
なんでと言われても、効かなかったからとしか言いようが無いが。
さて何と表現すればよいかと顎に手を当てた瞬間、ゴウッと凄まじい風切り音と共にワシの頭上にまるで巨岩が落ちてきたかの如く、槌が迫り来るのだった……




