1047手間
案内されたのは、見るからに丈夫そうな壁に囲まれた、テニスコート一面分よりやや広いかといった広場。
その広場のワシらが入って来た入り口からみて奥の方、テニスで言えば相手がサーブを打つ一辺に土塁が作られ、その中腹辺りにペンキか何かで大きな白丸の中に小さな赤丸がある的が三つほど、間隔を開けて描かれている。
なるほど、確かに射撃場といった趣の場所だ、長老はその一角にある全く窓の無い一見牢屋のような小屋へと向かい、扉に掛けられた三つもの南京錠を開けその中へと入る。
「あの倉庫に、この訓練場で使う魔導銃やその弾が保管されてるんだ」
「ほほう、なるほどのぉ」
なるほど、それならば三つも掛けられていた南京錠も全く大げさでは無さそうだ。
「それにしても、取り出すだけというのに、意外と時間が掛かっておるの」
「あの中には更に鉄格子付きの扉と、魔導銃が保管してある棚にも更に鍵が掛かってるんだよ」
「実に厳重じゃな」
「魔導銃はそれだけ危険なモノなんだよ」
続いてドノヴァンが語るワシが感心した以上の厳重な保管方法に頷いていると、長老が魔導銃と何やら革袋を手に戻って来た。
「これが魔導銃だ、そしてこっちの中身が魔導銃に使用する弾の入った袋だ」
「ほほう、これが魔導銃かえ」
魔導銃の見た目は種子島に代表される、いわゆるマスケットのような形状で、全体的に太く角パイプを曲げて角を少しとったような雰囲気だ。
握る部分など、マスケットであれば木製であろう箇所は全て石製で、太さも相まって見るからに重そうだ。
「意外とデカいのじゃのぉ」
「安全性や威力を考えるとどうしてもな、魔導具の起こす爆発で弾を飛ばすという機構上、どうしても両立するとなると大きく重くなる」
ワシが矯めつ眇めつ魔導銃を眺めていると、長老がモノづくりに携わる者の常か、聞いていない作る際の苦労までつらつらとワシの横でやや自慢げに語り始めた。
「それでは撃ってみても良いかの?」
「あぁ、ただし人には絶対に向けないこと、そして撃つ時は必ずあの的に向けてだけ撃つこと」
「んむ」
ワシが魔導銃を受け取ると、長老が念を押すよう強い口調で言うものだから、ワシも同じ様に深々と理解したと頷く。
そしてようやく魔導銃を撃てるかと思ったのだが、そこから始まる長老の脇を絞めてだのという撃ち方講座に、ワシは内心辟易しつつも聞かないと撃たせてもらえないのだろうなと、遠い目をしつつ若干自慢話へと変わってきた撃ち方講座を聞き流すのだった……




