1045手間
何のことは無い、攻められているのならば返り討ちにすればいいだけだ。
とは言え攻められているからといって、ほいほい手を貸すわけにもいかない。
「ところで、戦を仕掛けられておるからには、その隣? のやからと仲は良くないんじゃろうが、元からなのかえ? それとも突然心変わりしたのかの?」
「向こうの長老が代替わりするまでは悪い関係では無かった、それが百巡りほど前だろうか、事故で急死してその息子に長老の座が変わってその直後は良かった、しかし、暫くしてからは今までは何でも無いことで、ちょくちょく諍いが起こるようになってな」
「ふぅむ……」
先代は話の分かる気のいい奴だったのにと、長老が先代のことを思い出してるのだろう目を伏せ首をゆるゆると横に振る。
それにしても事故に見せかけ若者が先代を殺し、その座を簒奪して過激な路線に走ってゆく。
物語ではよくある話だが、何にせよその新しい長老が過ぎたる野心を持っているのは間違いない。
「まぁよい、攻めてくるならば返り討ちにすれば良いだけじゃ」
「それは無理だ。奴らは俺たちよりも先に魔導銃に手を付け、今やかなりのモノを作っている。そのせいで親父はやられたんだ」
ドノヴァンが悔しさをぶつけるように、ダンッとテーブルを握りしめた拳で叩きながら吠える。
「何か対策でもあるのか?」
「策を弄するまでもないのじゃ。ワシが、ワシ一人おれば幾万相手がおろうとも、千々に策を弄そうとも、全てねじ伏せれば良い」
「確かに、俺とレイッチの槌を片手で受け止めるくらいだ、強いとは思うが……」
「魔導銃は、金属製の礫を撃ちだす武器だ、剣や槍と違って強くなるのに技術は要らない。起動し当てることさえ出来れば小さな子供がただの一撃で大人を殺すことが出来る、そんな危険な武器なのだぞ」
ワシが自信満々に、胸の前で左の手の平に右の拳を打ち合わせるようにパンッと鳴らして答えれば、ドノヴァンが戸惑うように呟き、長老が子供の駄々を諭すように、しかし上から押さえつけるような威圧でもって告げる。
「大丈夫じゃ、ワシにとっては子供が小石を投げてきたのと変わらぬ、現に顔に何発か当たったが、何ぞ当たったか位にしか感じんかったからのぉ」
「やっぱりあの時当たってたのか!」
「んむ、マナが込められておらぬ攻撃なぞ、ワシに何の痛痒も与えることはできぬ」
「あれに耐える? 俄かには信じ難い」
「では確かめてみるかえ?」
そう言いつつワシは握った右手の人差し指と親指をLの字になる様に伸ばし、自分のこめかみに当てる仕草をし、何を確かめるのか二人に伝えるのだった……




