表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
1063/3468

1035手間

 ゴーレムの異常な行動にワシが関係無いと内心ホッとしていると、ふとそこで疑問が浮かんできた。

 

「五十巡りといえば、ついこの間とはいえ短くはない筈じゃ、扉は開けれずとも近くに坑道を掘って先を確かめることは出来たのではないかえ?」


「それなんだが、この街の周囲はかなり強固な地層になっていてね、それこそずっと昔から試してはいるが全く進んだ試しがないのだよ。お蔭でこの街は他の都市と違い、天井の崩落に怯えずに済んでいるんだけれどもね」


「なるほどのぉ、では柔らかい地層を掘って迂回というのもしなかったのかえ?」


「さっき言った強固な地層なのだが、これがかなりの広範囲にまで及んでいてね、死者の国とは反対方向の地下に関してはそこまででは無いのだけれども、死者の国方面に関しては強固な地層がずっと地下の方にまで及んでいて、迂回路を掘るのは現実的でないとかなり昔に結論が出されているんだよ」


「そうじゃったのか」


 穴掘り技術に関しては超一級のドワーフがそう結論付けたのだ、恐らくそれは不可能かそれに近いのだろう。

 それにだ、話を聞く限りかなり長いことここに居を構えているらしい、街に入ってすぐにこのマンションに入ったので街全体の大きさは知らないが、そこまで大きな都市では無かったと思う。

 それなのに長いことドワーフが同じ所に居るということは、恐らくだが近くに優秀で巨大な鉱床があるに違いない、これはもし交易をはじめたらかなり良い取引相手になるだろう。

 

「あぁ、そうじゃ、この街の長に会うことは出来るかの?」


「長老に?」


「んむ、ちと話がしとうての」


「今の長老は俺の祖父だから、大丈夫だと思うが」


「おぉ、それは本当かえ? では話が出来ぬか、繋いでもらうことは出来るかの?」


「それならすぐに行ってこよう」


「別にすぐでなくとも良いのじゃが」


「いや、恩人の頼みというのもあるが、長老も孫が攫われて随分と落ち込んでたからな、無事に帰ってきたと報告するついでだ」


「確かに、孫はかわゆいからのぉ」


 ガタッとドワーフが椅子から立ったところで、子供を寝かせに行っていた奥さんがティーセットをお盆に載せてやってきた。


「あらあなた、どうしたの?」


「この方が長老に会いたいというのでね、あの子が無事帰って来たことの報告と一緒に伝えに行こうかと」


「確かに、それは早く伝えた方がいいわね、お爺様の落ち込み様は私以上だったもの」


 奥さんが言うや否や、ドワーフは一つ頷くと転がるように外へと飛び出していった。


「あらあら、あの人、あの子が帰ってきて意外とはしゃいでいるのね」


「あれでかえ?」


「えぇ、あんなに慌てて出て行ったのなんて、あの子が攫われたと聞いた時だけだったもの」


 確かあの子供が攫われたのは、奥さんと散歩してた時だったと言っていた。

 だからだろうか、その時のことを思い出したのか、今にもティーセットを落としそうなほどに落ち込む奥さんをドワーフが戻って来るまでお茶にしようと、ワシは努めて明るく振舞い元気づけるのだった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ