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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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1028手間

 夕食の時間となったがクリスは居ない、そもそもここは所謂女子寮なので近衛などを除き男は来れないのだが……。


「クリストファー様は、先に宮殿にお帰り願いました」


「ふむ? どうしてじゃ?」


「クリストファー様から、あの遺跡の中のことを聞きましたので」


「なるほど、確かにそれは当然の判断じゃな。一応ゴーレムを作っておるらしきとことは潰したが、完全とは言えぬからのぉ」


 ワシとフレデリックが話している間にワシの食事が配膳されるが、ワシの膝の上に乗っている子供の分は運ばれてこない。

 これはイジメなどではなく、ワシがこの子の分は用意しなくても良いと伝えたからだ。

 

「ご要望通り座下の分だけをご用意させていただきましたが、その、お言葉ですが本当によろしかったのでしょうか?」


「んむ、この子はワシらとは食べるものが違うからの」


 種族が違うといっても見た目は殆どヒューマンと変わらない、大人のドワーフであればその体躯の小ささから理解できるだろうが、子供の場合は本当に分からない。

 ワシとて石を食べるという言葉でようやく気付いたくらいで、ならばフレデリックらに種族が違うというのをしっかりと理解してもらうためにも石を食べるところを見てもらった方が良いだろう。

 とは言え別にワシらが普段食べるモノをドワーフが食べられない訳では無いが、ドワーフからすればゲテモノ食いの類になるそうだ。

 ゲテモノとはいえ見た目に嫌悪感がある訳では無く、食べた時の食感やら味などがゲテモノといった感じらしく、現にワシの膝の上で何やら物珍しそうにサラダなどを子供が眺めている。


「これ、なに?」


「これはの、ワシらが普段食べておるモノじゃぞ」


「石じゃないの?」


「んむ、ワシらは石を食わぬからの」


 子供の口から石を普段食べているような言葉が飛び出し、ワシ以外のこの場にいる者皆が驚いている。

 特に年嵩の女性に至っては、まさかこの子は虐待でもされていたのではなどという、憐憫と怒りと驚きがない交ぜになった表情をしている。


「虐待などではなくの、ドワーフという種族は石、というか鉱石が主食なのじゃよ、じゃから地下から出ずに生活出来る訳じゃな」


「な、なるほど」


「という訳での、この子の食事はこれじゃ」


 そう言ってワシは左の手の平に、子供の握り拳大の晶石を創り出す。

 その途端、後ろからでも分かるほどに、ケーキでも出されたかのように子供がパッと雰囲気を明るくする。


「これ、たべていいの!?」


「んむ、遠慮せず食べるがよい」


「やったぁ!」


 子供が遠慮がちに振り返りワシに聞いてくるが、それにワシはにっこりと微笑んで頷けば、子供はひったくるようにワシの手から晶石を取ると、もう誰にも渡さないとばかりに両手で隠すように持ち口元へと運ぶ。

 流石に一口では食べられないのか、リスの様にカリカリと晶石をかじっている様は、食べているモノを除けば実に子供らしく可愛い光景だ。


「おいしいかの?」


「うんっ!」


 ワシが髪を撫でながら聞いてみれば、子供は一度食べる手を止め満面の笑みで頷き、ワシも思わず頬が緩んでしまう。

 彼らドワーフは以前聞いた話によれば、どうやら石の中のマナを食べているらしく、ドワーフにとってマナの塊である晶石というのは滅多に食べられないごちそうなのだそうだ。

 こちらでもそれは同じなのだろう、おいしそうに子供が晶石を食べるのを眺めながら、ワシも食事にするかとサラダに手を伸ばすのだった……

 



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