10手間
「始め」の合図とともに一気に詰め寄ってくる青年は、
その勢いそのままに、上段から両手剣を振り下ろしてくる。
ガッキィ‼︎と金属同士が激しくぶつかる音がして、
その両手剣を避けも受け流しもせず、ナイフで正面から受けると、
ギルド長や外野は驚愕の表情に、青年はますます憤怒の表情を強める。
「どんなインチキを使ったんだ!!」
と唾を飛ばす勢いで青年ががなるので、
「インチキ?何を言うておるんじゃ。ただ受けとめただけじゃよ。
確かに魔獣であれば一刀両断であろうが、この程度ではダメじゃの」
そう挑発してやれば、血管が切れるんじゃないかというほど青筋を立て、
我武者羅に両手剣を振り回してきたので、今度はナイフを捨てすべて躱してやった。
「この程度の剣筋では魔獣相手がせいぜいじゃの。魔物相手では死ぬんじゃないのかの?
今まで魔物からおぬしは逃げまわってたのかえ?」
先程から面白いように挑発に乗ってくるから、調子に乗ってそんなことを言えば、
青年は今度はキレ過ぎて顔の筋肉がぶっつんしたのか、表情がすとんと無くなり
両手剣を振り回すのをやめ、バックステップで距離を離し目を瞑った。
何をしてくるかとワクワクしてたら、まるで野球のバットように、両手剣を横に構えた。
ギルド長や外野がそれはやめろ、とか殺す気かなどと叫んでるが青年はどこ吹く風。
カッっと目を見開くと、まるでマナが宿っていると感じるほどの声で、
『ファイヤァァァァストォォォォオオオオム!!』
という怒号と共に両手剣が燃え盛り、横一閃とともに炎が嵐となってこちらに襲い掛かる。
「これが魔法か!面白い面白い!もっとワシを楽しませて見せよ!」
逃げ場なく迫ってくる炎の嵐に魔手を展開しつつ突っ込むと、
受付のお姉さんの悲鳴が響き、外野の息を呑む音が聞こえたのでニヤリとする。
目前の炎の嵐を握り潰し、マナを喰らう。全身に力が滾るようで、今の自分は実に猟奇的な笑みをしてるだろうと
自覚しつつ青年を見れば、初めて会った時のアレックス以上に
顎が外れんばかりに口を開けて立ち尽くしていた。
これ以上何もしてこんのか、と青年の両手剣を見れば、炎で溶けたのか柄と辛うじて鍔が残ってる状態。
それほどの熱量でこの程度か、とますますニヤリとしつつ、得も言われぬ高揚感のせいで
「耐えて見せよ!」
なんてどこぞの魔王だか虫だかみたいなセリフを叫びつつ、
魔手を思いっきり薙ぎ払う。その瞬間殺っちまったかと思ったが、
青年は目の前から掻き消え、結界の外に現れる。よっぽど勢いよくはじき出されたのか、
地面をゴロゴロと転がっていく。それ以上に、ファイアストームを喰ったマナと
自分で高揚感のまま込めたマナの量ががよっぽどだったのか、
魔手に触れてはいない筈の、若干離れた箇所の地面と結界が、まるで爪で抉ったかのように削れていた。
マナを込めた攻撃はこうなるのかー、なんて呑気に考えていると、
結界の抉れたところから、ビキビキビキと試験場全体に響く程の音を立てながらヒビが入っていく。
その音で、転がっていった青年を見ていたギルド長や外野はこちらを向き、
ハトが豆鉄砲を食らったかのような顔をした。
そして、パリーンとガラスが割れたかのようなひと際高い音を響かせつつ結界が砕けると、
はぁぁぁぁぁ?なんて素っ頓狂な声を上げるギルド長。その視線の先には
やっちまったぜって顔をしているワシ。
ここは元日本人として、両手を合わせ手を頬に当て首をちょこんと傾げ
「すまんの?」
と誠心誠意謝ってみる。受付のお姉さんは鼻を抑えてプルプルしてるので許してくれたと思うが、
ギルド長は額を抑えながら首を振っていた。その後、青年を運ぶ様に指示してから、こっちへ来いとワシに声をかけ、
そのままギルド長室へと連れていかれてしまった。
弁償とかギルド登録不可とかじゃなければいいのぉ…などと考えつつ、トボトボとそのあとを付いてくのじゃった。
ワシTueeeeeee
魔手そのものだけでも膂力は巨獣すら吹き飛ばす!
そして触れたもののマナを喰らい尽くすから結界障壁なにそれ美味しい!
やだなにこれチート
なんでこんなものが必要なのかは追々
連続投稿はひとまずこれまで次回以降は話がある程度まとまり次第投稿します




