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蘇生勇者と悠久の魔法使い  作者: 杏子餡
腐敗した国とメルの涙
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番外編 ルーシェと闇の胎動

 暗い闇の中、そこには多くの者たちが存在している。暗く深い闇の底、ここはロロの大迷宮百一階。


『へぇあの男…面白い能力を持っているのね』


 黒髪の黒いドレスに身を包む女性、喪服の様にも見えるが死者を偲び送り出すというよりは、その狂気を纏う禍々しい闇により無理矢理に送る側なのだろうと受け取れる。

 その女性、ルーシェが片目を瞑り独り言のように呟き、別の影が答える。


『如何されますか? すぐにでも処理するならば…』

『まだいいわ、だって弱いじゃない。あんな皇太子に頭を踏まれて動けないのよ。もう少し強くなってから楽しみたいわ』


 ルーシェは足を組み直し、顎に手をやる。そしてふぅとため息をつくと足元、いやルーシェが座っている者に声をかける。


『まったく…私の楽しみを奪っておいて、あんた何様のつもり?』

『うぅううう…くそっ……!』


 ボロボロになったその男は、赤黒い髪をぼさぼさにして這いつくばっている。百一階と呼ばれるこの場に地面は無い、闇の空間が広がり無重力とも呼べる程に誰もがフワフワと浮いている。それなのに押さえつけられ、身動きが取れない。

 

『お……俺の妹はまだ生きているんだ……やられてはいない!』

『はぁ? なにいってんの? それで持ち場を離れたって事!?』


 ルーシェは腹がたち、何度もその男の頭をヒールの高い靴で蹴る。


『ぐぅうぅぅぅ……感じるんだ…妹の波動を……!』

『気持ち悪いわねぇ……なんでこんな奴にあの場所を任してるのかしら』


 この【メテラス】はこの闇の魔物達の中でランク付けされるのならば、上位に名前が挙がる程非常に冷酷で強い。だがここ数日、彼はルーシェに椅子にされる屈辱を受けても抵抗出来ない程弱く、そして持ち場を勝手に離れるほど身勝手な男に成り下がっていた。


『確かに感じるんだ……生きている波動を……我が妹…エリュオリナの波動を……』

『波動ねぇ……ん? そう言えば…あの場所にタチュラが居たわね……』


 思い出した様に暫く考え込むルーシェ、邪視により動けなくなったタチュラを蹴り上げた時に感じた、闇が払われた様な気持ち悪い嫌な感覚。


『もしかしたら……あの男の力と関係しているのかしらね。ねぇメテラス、もしかしたらエリュオンは生きてるかもね』


 それを聞いたメテラスと呼ばれた男は、ルーシェが座っているのも構わずに立ちがる。


『きゃっ』

『それは本当か!』


 その刹那、ルーシェはメテラスの顔面を蹴る。


ガスッ!


『ぐっ何をする!』

『何をする! じゃ無いわよ!』


 顔に蹴りを喰らいながらも、メテラスはルーシェの両肩を掴んで揺する。


『本当にだろうな!』


 だが力強くルーシェを掴んでいたメテラスの両腕は、一瞬で黒い靄となり消滅する。


『がぁぁぁぁぁ!』


 メテラスは両腕を失い、その痛みに跪き苦しむ。その頭に足を乗せ、ルーシェはメテラスを見下しながら更に踏みつける。


『誰に触れているの? 少し周りが見えてないようね』


 同じ闇であっても、力では適わない彼女の腕に触れたのだ。プライドの高いルーシェが、メテラスを消滅させそうな勢いで頭を踏む力を強くしていく。


『ぐあぁ――――!』

 

 そこへ新たな闇が現れる。


『ルーシェ様ぁそれ位にしないとまた仕事が増えますよぉ』


 ルーシェから見て逆さまに現れたその女性。すべて黒いメイド服に身を包み、ニヤニヤと笑いながらもその纏う闇は濃く背筋が凍る程冷たい。


『ノイズか……じゃぁ、お前がこいつの代わりに私の椅子になればいい』

『んふふふふ、それも良いですがぁそいつを殺したら見れないじゃないですかぁ』


 甘ったるい話し方をする【ノイズ】と呼ばれた女性は、逆さまのままでルーシェに跪く。


『タチュラがいたって事ですがぁ、消えたのはミケットとエリュオンのコアもですよねぇ』

『ふん、耳が早いな』

『ですからぁ、エリュオンもタチュラ見たいに汚く白くなってるんですよぉ』

『ふん、それでお前の言う見れないとはなんだ?』


 さっさと答えろと、踏みつけているメテラスを更に踏む。


『ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!』

『んふふふふふ、メテラスとぉエリュオンをぉ戦わせてぇ殺し合いをぉさせましょうよぉ』

『なるほどな、どのみちタチュラの様になっていれば一度殺さねばならないな』

『そうですよぉ……面白いですよぉ絶対ぃ』

 

 ニヤニヤと笑うノイズの笑みは、ルーシェの笑みを誘う。


『ふふふ、まぁそれならこいつをまだ生かしていても良いか』

 

 ルーシェはそう言うと、メテラスの頭から足を下ろしそのまま顔を蹴る。


『ぐはっ!』


 両腕の無いメテルスはそのまま後ろに倒れ起き上がれない。それを見てルーシェがパチンと指を鳴らす、するとメテラスの失った両腕の付け根部分に闇が集まり、両腕が再生した。


『んふふふふ、お優しいですわぁルーシェ様ぁ』

『いいかしら? メテラス、貴方の管理しているイフリ山の精霊と繋がりがある村を消しなさい。それで今回の事は許してあげるわ』

『か……感謝する』


 ルーシェに好きな様にされ、怒りが込み上げるメテラスだがエリュオンと会うまでは死ね無いとひたすら我慢する。


『たぶん貴方が暴れたら、ママに気づかれると思うの。もしかしたらあの男が来るかもしれない』

『悔しいですねぇルーシェ様が興味をもたれる男なんてぇ殺したいですぅ』


 くねくねと腰を動かしながらハンカチを噛むノイズ。


『その男とエリュオリナにどういう関係が……』


 不敵な笑みを浮かべるルーシェがメテラスに告げる。


『馬鹿ねぇ、タチュラが白く染められていたのよ。エリュオンも白く染められている可能性もあるじゃない』

『なっなんだと!』

『んふふふふ、そうよぉメテラスぅもしかしたらもう、あれも済ましてるかもしれないわよぉ』


 二人してメテラスを煽り、その男への怒りのゲージを上げようとしている。


『な……な……なにぃ! もしそうだとしたら絶対許さん! 粉々になるまで殺してやる!』


 メテラスの目は血走り纏う闇に狂気の炎が噴出す。


『そうそう、だからさっき言った事やればその男も来るはずよ』

『ですよぅですよぅ。必ず来ますねぇ』


 メテラスの周囲に噴出す炎にルーシェもノイズも平然として微笑んでいる。


『じゃぁメテラス、頼むわね。エリュオンは一度殺さないと元には戻れないわ』

『そうですねぇ、辛いでしょうけどぉ必ず殺さないと駄目ですよぉ。んふふふふ』

『任せろ! 他の男に取られるくらいなら、我が力の全てでエリュオリナを殺す! もちろんその男もだ!』


 メテラスはそのまま炎を纏いながら消える。それを見たルーシェがノイズに伝える。


『アイツは駄目そうだから、事が済んだら殺しなさい。分かったわねノイズ』

 

 ルーシェはノイズに指示を出す、ノイズも満面の笑みで答える。


『お任せ下さいルーシェ様ぁあんな奴はぁ直ぐに殺してぇ死んだお互いの口の中に詰めてやりますよぉ』

『ふふふ、そうね。裏切り者は死ぬ以上に辛い目に遭わないとね』

『んふふふふふふ、たのしみぃ』


 ノイズは笑いながら闇の中へ消えていった。それを確認したルーシェが一人呟く。


『あの子素直なのに……どうしていつも逆さで話をするのかしら……』


 そのうち教育しなきゃと思うルーシェであった。

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