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統合する意識

リアル多忙なので時期を見て更新間隔を広げると思います。

多分その時は一話あたりの分量を増やします。

「第一次永久不可侵攻略作戦、と言う作戦。蓮は知っているだろう?」

「ああ。知っている」

 ネグラに戻った蓮たちは、念のため譲の祝福を受けてから、一番大きな部屋に集まっていた。

 その場にいるのは、蓮、美夜、太陽、晴臣、譲、そして長老。跡香と呼ばれたあの少女は、まだ寝ている。

 そんな中、晴臣が口にしたのは、3年前に実施されたとある作戦。

「『永久不可侵』の調査を目的として、国防陸軍から一個大隊(1000人)が派遣された作戦だ」

 晴臣は頷いて、紙製の地図を広げた。それは、首都圏全体、つまり、永久不可侵により断絶された地域全体の地図だ。晴臣は言う。

「当たり前だが、私たち隊員には、衛星電波や、電話回線を利用するメディアは渡されていない。『永久不可侵』はあらゆる電波も遮断するからな」

 美夜が聞く。

「ちょっと、いいかしら」

「なんだ」

「電波が無理だったとしても、永久不可侵の内側でも太陽は見えるわ。光を使った通信とかは、無理だったのかしら?」

「光? 駄目だ駄目だ。赤外線通信なんかで可能な交信距離を知ってるか? 精々が数メートルだ」

「直接ケーブルで接続されている……例えば、電話回線とか、光ケーブルは?」

「『永久不可侵』は地下にまで及んでいる。地上の道路が断裂したように、『永久不可侵』は地下のケーブルやその他なんかも断裂させている」

 ここで、長老が言う。

「確かに、その話は分かったんじゃが……、晴臣、何故、今その話をするのじゃ?」

 晴臣は言う。

「今後の方針のためだ」

 皆の声が重なる。

「方針?」


◆◆◆


 晴臣が言うには、『永久不可侵』の中でも生活は成立しているが、何時までこの状態で継続的に生存するのか、ということだった。

「私たちには目標がない。獣ならば生きる事こそが目的だろうが、私たちは人間だ。人間は生きることを手段とする生き物だ」

 譲が、初めて口を開いた。

「言いたいことは分かるぜ。だがよ、現状、俺たち程度じゃ、その日暮らしが限界じゃねえかよ」

「そうでもない」

 晴臣は、有無を言わさぬ口調で告げる。

「俺は他の隊員と共に、『永久不可侵』を超えた時、イザと名乗る人物に会った」

「ん? 晴臣さんもか?」

「え、蓮さんも、タケさんもなんすか?」

「……私もそうだったわ」

「俺も会ったぜ」

 長老は、黙ったまま座っていた。晴臣は続ける。

「今までこんな話をする機会が無かったからな。だが、これで俺の予想が概ね当たっていることが分かった」

 晴臣は、分厚いファイルを取り出した。それを見た譲は驚嘆の声を上げる。

「おいおい、そんな大量の紙、どうやって集めたんだよ……」

 現在の東京で、それだけの紙を集めるのは骨が折れたはずだ。

「いや、あの軍事基地にあった紙をかっぱらっただけだ」

「あ、おう、そうか。そりゃそうだよな」

 譲は申し訳無さそうに頭を掻いた。

 続けるぞ、と言って晴臣は言う。

「これは、俺と龍助が調査し、集めたデータだ。いずれ使うことになるだろう、とな。ああ、蓮は知らないだろうな。例の作戦の時、俺と二人組バディを組んでいた軍人だ。佐藤、龍助。今は、もう居ないけどな。二人で、このネグラで世話になってたんだ」

 晴臣の顔に、陰りがさした。

「大した祝福は使えない奴だったが……、ある日、大量のカラスの群れから逃げている時、急に今までにないほど目が赤く光ってな。そのまま……消えた」

 蓮はしかし、その『龍助』という名前に聞き覚えがあったはずだ。しかし、いや有り得ない、と蓮は頭を振る。佐藤も、龍助も、よくある名前だ。ただの同姓同名だ。

 だが、蓮の勘は告げる。その龍助は、間違いなく蓮の知る『佐藤龍助』だと。

「晴臣さん。佐藤龍助というのは……」

 しかし、ここで確認するべき言葉を蓮は殆ど持っていないことに気付く。だから、言うのはその、唯一知ってる情報。

「佐藤龍助というのは、母親が、佐藤由美子だったりしないか?」

「なぜ、知ってるんだ?」

 ビンゴだ。

「晴臣さん、龍助さんとやらは生きてる。間違いない。俺はここに来る時、龍助さんに会ってる」

 そこに居た全員の顔が驚きに染まる。

「なんだと!?」

 晴臣が迫る。

「それは、本当か!? 何処に居る!?」

「いや、もしかしたら、俺の勘違いかもしれない。龍助も、由美子も、何処にでも居る名前だ」

 晴臣は、引き下がる。

「あ、ああ……。そうだな、ああ。悪い、取り乱した」

「いいよ、晴臣さん。俺の考えてることは後で言う。まずは、晴臣さんの話を先にして欲しい」

「分かった」

 晴臣は、ファイルを開く。


◆◆◆


「龍助は言っていた。あいつはイザに目的を与えられたのだ、と」

 蓮は首をかしげる。

「どういう事だ?」

「つまり、本来、『永久不可侵』に選定されるほどの意思を持っていなかったが、イザによって無理やりその役割を与えられたと言うことだ」

 それは、

「それは、『永久不可侵』の選定は、意思持たぬものにも祝福を与えるということか?」

 それでは、イザの言っていたことと辻褄が合わない。いや、辻褄が合っていないのは俺たちの方?

「そう、その通りだ蓮。アイツの言うことには、イザは言っていたのだそうだ。『因子』を全て揃えろ、と」

「何すか?『因子』って」

「詳しくは分からない。だが、お前らもイザに会ったのなら分かるだろう? 恐らく、あいつは……」

 晴臣は全てを語らない。

 しかし、皆は理解する。

 イザは、間違いなく『永久不可侵』と深いつながりがある、と。

「そのイザが言ったんだ。二人の『因子』が揃うことで、『永久不可侵』は次のステップへ進む、と」

 つまり、

「まだ東京崩壊は終わってない」

「そうだ」

 晴臣は言う。

「そして、その『因子』とは、特に意思の強い生命に与えられる2つの祝福」


 その祝福は『分析と演算』、そして『予測と改変』の2つ。


「『予測と演算』……。まさか、俺が?」

 蓮の祝福について、完全に理解していない美夜、太陽、譲は首をかしげる。長老は動かない。

 しかし晴臣は、蓮の祝福にあらかた予想を立てていた。なぜなら。


「そして、2つ目の因子、『予測と改変』……。恐らく、『彼女』のことだ」


 『彼女』。それは蓮の探し人。


「――神酒みき桃花とうか


 それが『彼女』の名前だった。

用語解説


『因子』:イザ曰く、実験に必要不可欠な祝福、或いは祝福の持ち主。

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