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デュアル・クロニクル other story  作者: 不破 一色
第一章
8/10

1-5

 聞いた話しでしか無いけど、そもそもほとんどの術式は、自然の模倣再現でしか無いらしい。

 錬金術師が、無や、別の物質から金を作り出すと言うのは、何も無から物質を想像する訳でもなく、鉛を金に変化させる訳ではなくて、大気や地面等の周囲にある様々な構成物質や、他の物質からの再構成で人工的に金を作り出すらしい。

 そう言えばあっちでも、人工的に金を作り出す事は可能らしいと聞いた事はある。もっとも、もの凄くコストがかかって割に合わないらしいけれど。

 こっちでは、科学技術ではなく錬金術という、所謂魔術式を使って可能だから、コスト的には問題無いらしい・・・とは言え、術式も扱う人の精神力--魔力なんてものはこっちでも発見されてなくて、魔法を使う場合でも消費するのは精神力、つまりは単純に体力等になるらしい--を相当消費するらしいから、やっぱり割に合わないらしいけれどね。

 金を作る場合、相当に能力がある人でやっと、一人分の精神力のほとんどをつぎ込んで出来るらしいから、下手すると衰弱死だって有り得る。

 能力があるという、つまりは貴重な人材が消費される可能性を考えたら、そりゃ、人工的に金が作れても割に合わないわよ。

 楽してお金持ちって、夢物語って事よね。


 閑話休題。

 これが魔法を含む術式を用いる場合は、それこそ、火を熾すのであれば摩擦で可能。

 そうした自然現象を用いて行うという違いだけだとか。

 物質を造り上げるのが錬金術で、現象を造り上げるのが魔術。

 結局は自然物の模倣でしか無い。

 それを扱うすべとしては、仙術って最強なんじゃない? と思ったんだけど。


「作られた結果、つまり人工物や、既に構築された物質や物体には対処出来んから、最強という訳では無いぞ?」

「単純な物理攻撃には弱いと?」

「そういう事じゃな」


 ふむ。ゲームで言えば、対魔がやたら強いけど、対物防御がほぼ無い中ボスキャラみたいなものかしらね。


「ところで先刻さっき、私達の事、何か言ってたわよね?」

「そうじゃのう。

 黒龍や白龍が言わなかった事を、あえて言う必要が有るかは微妙なんじゃがな。

 言わなかった理由があるかも知れんしな」

「自分達の事を隠されるのは、あまり気分が良い事じゃ無いんだけど?」

「ん。同意」


 そもそも、雅章さんが漏らした言葉が原因なんだから、そこは自己責任でしょ。


「まあ、仕方無いのう」


 そう始まった話しは、確かに直ぐに受け入れられるものでは無かったけれど、かと言って、納得出来ないものでも無かった。

 前提として、私達がこれまで暮らしていたあっち側と、今居るこっち側という、世界が二つに分かれている事は、もはや疑いたくても疑えない状況。

 オカルト話しとかで楽しむ内は、誰だって“有り得ない”と思いつつだけれど、実際にこっちに飛ばされた身としては、正直洒落にならないわ。

 |事実は小説よりも奇なり《Fact is stranger than fiction.》って言っても、流石にねぇ。

 とは言え、世界が二つに分かれて、こっちにも人間--人間族だっけ--が居た以上、あっちにも、知られずに人間族以外が残っていて、何もおかしな話しじゃ無い。

 こっちに来てから薫に打ち明けられたけれど、薫は魔人とのハーフらしい。

 実際には、魔神と人とのハーフからが魔人族になって、その魔人と人とのハーフも含めて、一定の血の濃さがあれば魔人族になるらしいから、何かややこしいんだけど。

 薫の場合は、通常は人間が出ているくらい血が薄いみたいだけれど、力を使う時には魔人の姿になる、魔人族としてはギリギリのところに居るらしい。

 つまり、もうほんのちょっと魔人の血が薄まれば、それは人になる事でもある。

 こうした、人であり、自分自身も人として認識している中にも、他の種族の血が混ざっている存在があっちに居て、何もおかしくない訳だ。

 調べた訳じゃ無いから分からないけれど、むしろそういう方が多いのかも知れない。

 けれど・・・。


「つまり、大鎌を出したお嬢さんと、扇を出したお嬢さんは、神か精霊の血が混ざっとるのう」

「はい?」

「そうじゃ無ければ、あの大釜や扇は出せんよ。あれは生魂塊せいこんかいで構成されておるが、生魂塊を物質化して用いる事が出来るのは、神か精霊種だけじゃからのう。最低限、どちらかの血を相応に引き継いでいる証拠となる」


 つまり、薫だけじゃなく、紗弓と私も純粋な人間じゃ無いと・・・。


「それは、人という定義の問題じゃな。

 儂から言わせれば、いや、こっちの者から言わせれば、お嬢さん方は三人とも人じゃ」


 人の定義違い。

 あっちでは、生物学上では霊長類としての“ヒト”を人とするのが一般的よね。

 でも、ヒト亜科としての括りではヒト属やチンパンジー属、ゴリラ族が含まれるし、ヒト属に絞っても、チンパンジー亜族やそれらの絶滅した祖先が属してる。

 そもそも霊長目だとキツネザル類やオナガザル類、類人猿なんかも含まれていて、結局のところヒトはサル目の一員でしか無い。

 一般的には、霊長類のサル目からヒトを除いた総称をサルとするらしいから、これは定義付けしているヒトが、ヒトを特別扱いした分割として見る事だって出来る。

 ではなぜ人はこういう進化をしたのかと言えば、所詮は環境適応なわけだから、同じ様に、他の生物だって環境適応した形ではあるわけよね。

 身近な犬にしろ、猫にしろ。

 そうした適応と、人の適応は全く違うかと言われれば、否とする事はかなり無理があるだろう事くらい、専門家ではない私にも何となく分かる。

 多種多様な適応が必要な程、環境も色々。

 ある程度の範囲で適応力があっても、適正という訳では無いんだから、様々な生物が存在している事に否は無い。

 何か、それこそ人を例にすると、猿から進化したという説は根強いけれど、それを確定出来る根拠も無いらしい。

 同じ様に、こっちには普通に居る獣人も、聞けばその種から進化したという根拠も無いらしく、むしろ例えば犬が環境適応であの状態となった様に、人としての進化過程で犬と同じ様な環境適応があった結果とする説もあるらしい。

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