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デュアル・クロニクル other story  作者: 不破 一色
第一章
5/10

1-2

私達もこっちに飛ばされて、教えて貰ったけど、薫には秘密があった。特に私達が暮らして来たあっちでは、絶対に表に出せない類の秘密だったけど、こっちでもそれなりには厳しいのよね。でも、本気出すのか・・・。


「良いの?」

「ん。一緒に居られる内は、居る」


 そっか。もしあっちに帰る方法が分かったとして、私や紗弓が帰ったら、こっちに残る事を決めてる薫とはお別れする事になるんだもんね。


「そうか~。それじゃさ、うちも本気出して認めて貰わなきゃだねっ」

「紗弓も薫も決めたなら、私もやるわよ」

「ふむ。では見せて貰おうかの」


 私達がデュアル・クロニクルでやっていたのが、紗弓が無手師、薫が符術師、私が軽戦士だった。

無手師は、よくあるゲームで言えば格闘家とかかな?

そもそも、紗弓はあっちでは、病気のせいでこの数年の間は病室暮らしだったらしい。

余命云々という類の難病では無かったらしいけれど、軽度とは言え隔離された病室という空間から出られない身体だった事もあり、現実の自分では出来ない正反対なゲームキャラクターを作りたいからという理由で、無手師を選んだと言っていた。

実際、こっちに飛ばされてから出会ったリアルの紗弓は、病的に白く細い子だった。ただ、ゲームキャラクターの補正値が加わった為、自由に外で歩き、走り回れる事が本当に嬉しかったらしい。

ただ、元の身体が通常の人間と比べるとマイナス数値なので、実際には同レベルの無手師来訪者と比較すれば、運動能力等は落ちるだろう。

それを補う為に、この地の主達に相談して得たものがある。

個々が生まれ持つ、色による能力とか言うものの延長線にあるから、得たと言うか、能力開発して貰った感じなのかも知れないけれど、純粋に能力を鍛えても到達しない要素があるから、得たと言って間違いじゃないと思う。


 薫は、種族的にと言って良いのかは、あっちでは微妙だけれど、所謂、こっちと分離した後もあっちに残った種族の生き残りだ。

だから実際には、紗弓や私の様に、あっちで普通の人間とは異なる能力を持っていて、表立って使えないからか、魔法や術と言ったものに関心が強かったらしい。

デュアル・クロニクルというゲームは、よくありがちなファンタジー系職種ではなく、どちらかと言えば古典的日本の職種だったので、所謂魔法職と言うのが符術師だった。そこから安易に選んだらしいんだけど、こっちに来てからも種族的に、あまり表立って自分の能力を使わない様にしている関係で、符術師というのはある意味、都合の良い隠れ蓑として機能している。

怪我の功名? 何か違うか。

こっちに飛ばされて来てから、術を色々と学んで来ているので、初期符--ゲームの時に得られた符と、課金で得られた二級符--程度の術であれば、既に符が無くても放てるくらいにはなっている。

とは言っても、余力的な部分から言えば符を使った方が良いから、現状ではより上位の威力を持つ中級符--三~四級符。そこそこ高価であんまり買えない--をメインに、保険的に初級符を使っている感じが通常。

でも、今回は自分の能力を出すつもりらしい。

それは、自分の種族を示すと言う事と同じだから、この町でも、未だに紗弓と私以外には知らない筈の秘密・・・あぁでも、二人の関係からすると、もしかしたらベイセルさんには話したのかも知れないわね。


 私は、二人と比べてあまり特筆するところがないと思う。

こだわって職選びをしなかったから、この手のゲームだと一番多いだろう剣士--デュアル・クロニクルでは武師だった--を選んだし、かと言って盾役向きに防御系、攻撃向きに攻撃系とどちらかを突出させて育てる事も無く、器用とか速度に割り振った。

理由は単純で、前衛職を選んだけれど、上手く操作出来る気もしなかったから、ダメージ回避のし易さで育てただけだけどね。

最初の内は全体的に数値も低いし、それでもどうにかなったけれど、一月もすれば、同じレベルで見て、私のキャラは前衛職の癖に防御力も攻撃力も無い、所謂使えないキャラになっていた。

器用はともかく速度は、攻撃職に育て直して行くには無駄だったし、防御職に育て直すには両方が無駄に上がってしまった結果、不遇職と呼ばれた投技師にクラスチェンジするしか手が無かった。他のゲームだと軽戦士とかの辺りかしらね。

勿論、大抵のパーティーでは、こんな野良は相手にされなかったから、そんな状況で二人と知り合えたから、プレイが続けられた部分はかなり大きいわね。

紗弓が、得たスキルを使いこなす為にかけた時間分、私は薫と共に術を学んだ結果、今では投技師なんだか、術師なんだか分からない感じになっちゃってるけど、主から貰った鉄扇のおかげで、これまでは投技師の面だけで誤魔化して来られた。

二人が隠してる部分も出すって言うなら、おまけの私も投技師と術師の間の子の様な、今の独自技を出すしか無いでしょ。所詮私のは、二人のと比べれば隠す必要性もほとんど無いんだしね。


「さてさて、時間も限られてるわけじゃし、本気の上で、三人一緒に相手してやろう」

「言っておくけど、手加減出来ないわよ?

 未だ制御し切れて無いから」

「かまわんよ」


 それは、私達を舐めてるのか、それだけ自身があるのか、どっちでしょうね?

・・・両方かな?


「真桜ちゃん、私達軽く見られてるかな?」

「私達は未だ、その程度って事でしょ。

 てか、ちゃん付けやめれ」


 さて、ふざけてる場合じゃないわね。


「それじゃ、雅章さんの胸を借りますか」

「了解」

「ん」


 二人の同意を受け、私は鉄扇にイメージを通す。それがこの鉄扇本来の使い方らしい。

目線を送ると、紗弓の両脇に、宙に浮いた二本の大鎌が見えた。片方は黒い刃に白い柄で、もう片方は白い刃に黒い柄の、紗弓の身長より大きな鎌だ。

目線を動かすと、薫の肌が蒼黒く、薄い茶色髪は薄く青みを帯びた銀髪に変わり、目は漆黒に輝いていた。ハーフである薫は、普段は私達と大きな差異は無いけれど、もう一つの血を発現させれば、その姿に変わる。

二人共、準備は済んだみたいね。

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