表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

(4)

 その少女の名前はゆかりちゃんと言った。ゆかりちゃんは一人っ子として生まれ、父と母の愛情を一身に受け育っていった。誰もが羨む幸せな家庭がゆかりちゃんのもとには存在していた。しかし、不幸は唐突に訪れる。

 ゆかりちゃんが小学校五年生になった時、父親が交通事故によって帰らぬ人となってしまったのだ。母と二人になった生活は裕福なものから一変、貧しいものとなった。

 だが、ゆかりちゃんは決して不幸には思わなかった。父が亡くなった事は悲しい事ではあった。だが悲しんでいても仕方がない。母と助け合い強く生きなければ。懸命に文字通り身を粉にして働き生活を支えてくれる母の姿を見て、ゆかりちゃんはそう思った。生活は確かに苦しかったが母とは仲良く日々を過ごしていた。

 母のおかげでゆかりちゃんは無事に義務教育を終えた。そして大学受験。ゆかりちゃんは母から手作りのお守りをプレゼントされた。

「頑張るのよ、ゆかり。お守りって中身を空けてしまうと効果がなくなってしまうから、大事に持っておくのよ。中身は空けちゃいけないからね。」

 ゆかりちゃんは母の気持ちに心から感謝した。結果、ゆかりちゃんは無事に大学合格を果たし、卒業後は就職先も決まり晴れて社会人となった。

 これでやっと母に苦労をさせずに済む。恩返しが出来る。

 ゆかりちゃんはその気持ちとして初任給で母親と旅行へ行く事にした。

 ゆっくりと羽を伸ばし、母の今までの苦労を労う旅になるはずだった。しかし不幸はまたも訪れた。

 旅行途中、母親は不慮の事故によってその命を終えてしまったのだ。

 悲しみに暮れるゆかりちゃん。やっと、やっと母に安息が訪れると思ったのに。そんな矢先に起こってしまった事故。

 茫然とするゆかりちゃんの手には今や母の形見となってしまったあのお守りが握られていた。

 開けてはいけない。

 しかし感情のどん底に追いやられたゆかりちゃんの手は母の忠告を無視し、お守りを開けてしまった。

 中には一枚の紙切れが入っていた。そこには何か文字が書かれており、ゆかりちゃんはその内容に目を向けた。


“お前がいなければもっと楽な生活が送れたのに。死ね、ゆかり。シネシネシネシネ。”


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ