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夏休み。
全国の学生にとってお待ちかねの大型連休。
これでもかとばかりに遊びの予定を敷き詰めていく者もいれば、のんびりとしたスローライフを楽しむ者もいるし、部活に所属する者なら勉学から離れた代わりに部活動に打ち込む期間としてストイックに過ごす者もいる。
小枝と流華達はもっぱらスローライフ派だ。部活動といっても非公式な保健室でのオカルトしゃべり場なのでストイックなわけでもないし、もともと活動的ではない二人にとってはあれやこれやと行事を重ねるよりもだらだらと過ごす方が性に合っていた。
二人にとって少し驚きだったのが、休暇天国なこの時期、保健室の女神である香澄先生が案外忙しい身にあるという事だった。
事務処理であったり、研修であったりと結構やる事が多いらしい。そういった事情もあるし、単に休みにわざわざ学校に行くのも面倒だなという気力のない二人の都合もあって三人での部活動はより不定期なものになっていた。
「でも出来ない事はないよね。」
小枝がそう口にしてくれた時、流華は少し嬉しく思った。オカルトものは好きだし、まだまだ部活動で取り扱われていない話は山程ある。そしてそれを語ることが出来るのは何も香澄先生に限っているわけではない。流華にだって出来る事なのだ。だったらという訳で二人は流華の家でまったりゆったり人工的に涼しく整った環境の下、部活動を行おうかという事になった。
非公式とはいえ顧問の先生に何の断りもなく勝手な行動を取る訳にもいかない。そんな硬い事を考えたわけではなかったが、香澄先生を仲間外れにしているみたいで申し訳なかったので一応この事は先生にも話しておく事にした。
「あらあら、熱心でいい事ね。全然構わないわよ。私も参加出来そうな時はこっちから連絡入れるから。」
と、自分が参加出来ない事の残念さを顔に浮かべながらも快く活動を承諾してくれた。
「あー着いたー。るー、飲み物頂いてよろしいかしら?」
「そんなかしこまらなくても用意するわよ。」
運動部や文化部のほとんどが決まった場所がないと活動を行う事は難しい。野球部ならグラウンド、バスケ部なら体育館。吹奏楽部なら音楽室。そういった環境が必要となる。でも流華達は集まりさえすればどこでも部室となり得る便利さがある。
「ただいまー。」
二人は今日も部室への扉を開けた。