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伝説の淵術師  作者: ぶっぺぽん
「→」
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アサイド⇐傍白

その謎のルビー色の目をした男は、とてもとても真剣な顔で、告白した。



「多分。俺は未来からやってきている。」


「そんなところでしょうね。はい、オリジナルブレンドコーヒーよ。」


「へ?驚かないのか?」


「世界どうの、炎がどうの言ってたしねえ。そうそう、私の名前知ってたし。」


「おいお前ら!せっかくコタツに電源を入れたというのに・・・・さっさと来ないか!」


「真面目な話ですし、遠慮しておきますよ。」


「おいカルロス君!教えてあげよう、何故、コタツにみかんが外せないかを

!さあ!来たまえ!」


「いかないでね。カルロス」


「いや・・・・ははは」


火口からそのまま降りた私たちは、とある広い研究室にいた。火山の真下にあるというマグマだまりはかなり大きく、

たくさんの淵術師たちをしゃくしゃく仕舞い込める広さがあった。


「ズズ・・・おお、これはうまいな!」


「でしょう?私が精魂込めて・練った炎で炙った豆を・使ったものなのです。ホントは紅茶のほうが得意なんだけどね」


「ほぉー」


「フッ。変に韻を踏んでいて面白いね」


「ガァー!お前ら無視しおってぇ・・・・・こうなったら、こうなったら・・・」


「師匠、コーヒーです」


「おー、すまんすまん」


淵術師団体の数だけ、それぞれ研究室という名の空間を与えられているが、その中でもここは大きかった。

端から端まで200mはあるか。私と師匠のたった二人しかいない淵術師団体だが、例によって師匠の功績がたたえられて、これほどの部屋を確保している。格調高い、茶色と黄褐色の木材でこの空間全体が構成されていて、事物の境界は曲線で描かれている。たまに意味不明な場所に謎の盛り上がりがあれば、邪魔以外の価値が見いだせない木の枝が上の方で茂っていたりする。雰囲気はとても落ち着いていて、宙に散らばって浮遊する電球色の明かりが、しっとりと主張しない綺麗さを、(ほの)めかしている。


「それで?どういうわけ?未来ってどのくらい先?」


「いや・・・、50年もないだろう」


「ふむ。それは随分と近いことだ。」


ズズっ


「・・・熱い」


「猫舌。淵術師なのにね」クス


「う~ん、どうも熱いものは苦手なんだ。しかし興味深いね。本当に。僕の書き上げてきた詩が未知の何かで壊れてしまう。(ズズっ)ほどに。」


「詩?カルロスは詩が好きなのかい?」


「ああ。といってもたいしたものではないよ。自由律、自由詩を気ままにそらんじているだけさ」


「ふーん。珍しいね。俺の知っている淵術師はもっと悲観的だった。娯楽性をまるで忘れていたよ。詩を読むなんてもってのほかだ」


「何だって?それはいけない、それはいけないね。コウコ君、今すぐ君に送ろう、暖かい生の」


「悲観的ってどうして?何かあったの?」


「ん?ああ。しかし、先に彼の詩を聞いてみたい」


「うおおお!!」


バームクーヘンのように丸く段々になった構造の部屋は、研究のためにいくつかの扉がそれぞれ壁にめり込むようにしてつけられている。師匠や私のプライベートな部屋もそこにある。今私たちがいるのは、[油断の間]。とくになんの用事もなく、フラッと入り浸る。ここはそんな部屋だ。

曰く、「油断が大敵であるならばまず、敵を知らねばならぬ」らしいが、残念ながらテーブルにコタツにTVに、ポットに新聞に漫画に、ソファーに布団に万年筆という、いつの間にか何が何でもそろった状況で、完全にしてやられている。

曰く、「時には油断も必要だ」らしい。・・・でも最近になって、研究室のど真ん中に引っ越したのはさすがにどうなのだろうか・・・。もはや間ですらない。


「・・・・・・・。」


「でも黒が怖いからやめておくよ・・・ちびり」


「フハハハハハハ!お前ら仲がいいなー!」


「んん、その様子を見るに黒炎はつまり詩が嫌いだ、ということかな?」


「そんなんじゃないわ。でも、私たちは淵術師よ?炎に対していつも真剣でなければならないの。詩にうつつを抜かしている暇なんてないわ」


「・・・だからこそ必要だと思うんだけどなあ・・・(ボソリ)」


「今何か言ったかしら?」


「ハッハッハッハ。詩はまた今度お聞かせするとして、今日は君の身の上話を聞こうじゃないか」


「ううむ・・」


「頼むッ」


「わ、分かったって。うん。さっき悲観的だといった話だが、それは淵術師のほとんどが殺されてしまっているからなんだ」




「「・・・・・・・・・・・・・・・。」」




「戦争が起きているんだよ。淵術師でない普通の人間も巻き込まれるひどく規模の大きいものでね。地球という星の総人口ももう100万人はいるかどうかってくらいさ。かくいう俺も、生きるためにしのぎを削って・・・」


「ストップ。」








・・・・・・・・・・。











「あなた、未来から来たって言ってたわよね。」


「ああ。多分そうだ。未来では君、黒炎は残り少ない淵術師を率いて勇敢に戦っていたよ。英雄の名前だ。子供でも知ってる」





・・・・・・・・・・・・。













妄想だな。うん。


「ハハハ!それはご苦労だな黒炎!」


師匠が全く動じずに、楽しげな声を上げる。


「それで戦争の原因はなんだ?金か?飯か?馬鹿共の権力競争か?それとも、星でも落ちてきたのか?」


「いいえ。ブグです。ブグが人を殺し始めたんです。・・・ズズ・・・」


コト。コーヒーの入れたマグカップを置いた青年は涼しげな眼で私たちを眺めていた。



時刻は・・・・さっき確認したが忘れてしまった。


食べ物を補給し、今日の異変をやや激しく議論を交わしあいながらとりあえず伝え終えて、休憩をはさんだ、その時の出来事だ。




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