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第5話『金髪幼女シスターと妖精』

 扉から出ると外だった。目の前で噴水が勢いよく水を出している。

 先ほどの真っ白な世界では分かり辛かった圧倒的な現実感。

 空を見上げれば太陽が燦燦と輝いている。呼吸をすればパンの焼ける美味しそうな匂いと、甘い匂いがする。触覚はどうなのかと、噴水の水に触れれば冷たい。


「すごい……!」


 本当にゲームなのかと疑いたくなるレベルだ。今ここで博士みたいな人が出てきて「実は君を少女に改造手術して別の場所に移動させたんじゃよ」と言われたら、俺はゲームの世界よりも博士の言った方を信じてしまう。

 それほどまでにここがゲームの世界だということが信じられない。

 どこかに博士みたいな人はいないのかと探してしまう。


「ん?」


 さっきから耳や頬がくすぐったいと思えば、髪が長くなっているんだった。

 なにを販売しているか分からない店のショーウィンドウで、もう一度自分の姿を確認する。

 やはり可愛らしい少女になっている。顔にへばり付いていた髪を後ろに全て持っていく。


「甘い匂い……」


 髪を鼻に近づける。甘い匂いがした。

 ずっと甘い匂いがして落ち着かない。先ずは自分の体臭に慣れないといけないようだ。

 噴水の近くにベンチがあったので、そこに腰を下ろす。

 マリアに言われていたことをやらないといけない。スキルの確認だ。


「…………」


 そういえば、どうやって確認すれば良いんだ?ポケットを漁って何か説明書のような物がないか確認する。

 そんなものは入っていなかった。ベンチの下を見てみるが、ヒントのようなものはない。

 ならば最終手段だ。念を送ってマリアに聞いてみるしかない。きっと伝わるはずだ。


「うーー……」


 届け俺の念!

 そもそもスキルの確認方法をしっかり教えなかったマリアが悪いだろ!……いやウソウソ!そんなことこれぽっちも思ってないから誰か教えてくれ!


「どうかしましたか?」

「え?」


 俺の思いが届いたのかと、顔を上げる。

 そこにはシスター服を着た、可愛らしい少女が心配そうな顔をして立っていた。


「うわっ!かわいいっ!」

「はい?」


 思わず声が出てしまった。それほどまでに可愛らしい少女だった。

 驚いて見開いた少女の青い瞳、陶器のような白い肌。シスターの帽子から金髪も覗いている。年齢は十歳くらいだろうか。


「ご、ごめん!可愛いから思わず口から出てた!」

「ふふ、気にしないで下さい。それにあなたも可愛いですよ」


 ニコリと優しく微笑んでくれた。本当に可愛らしい。


「その、困っていたようなので声をかけたんですが……」

「あっ……ああ、実はスキルを確認したいんだけど、やり方がわからなくて」

「そうでしたか……もしかして今日から始めたんですか?」

「ああ、今さっき始めたんだよ」


 そう答えると、少女は俺の横に座る。少し恥ずかしそうにしながら、小さく咳払いする。


「ステータス」

「え?」

「念じながらステータスって言えば、自分のステータスやスキルが確認メニュー画面が表示されるんですよ。別に言わなくても見えるんですけど」

「そうだったのか!ステータス!」


 そう念じながら言うと、メニュー画面が表示された。


「おお!本当だ!ありがとう!」

「そこから職業を選ぶとスキルが確認できますよ」

「本当に助かったよ!ここからどうしたらいいか分からなかったからさ」

「お役に立てて良かったです」


 少女は自分のことのように、喜んでくれた。性格も良いようだ。


「私もステータスの見方が分からなくて教えてもらったので、気持は分かります」

「初心者に厳しいゲームだな」

「あの、教えたので見返りに頼むわけではないんですが……ある人を探してまして」


 指をモジモジとしながら、少女は申し訳なさそう頼み事をしたそうにしていた。


「一緒に探すよ。教えてもらったし、それに困っていたらお互い様って言うだろ?」

「ありがとうございます!私の名前はアリアと言います。よろしくお願います」

「おう、俺はマリーだ」

「そうだ、良ければフレンドになりませんか?探している人の情報交換もそうですけど、同い年のプレイヤーっていないので」


 同い年のプレイヤーか……俺が実は十七歳と知ったらショックを受けて、引いてしまうかもしれない。

 このことは誰にも言わず、やっていくことにしよう。


「良いぞ。やり方が分からないから教えてもらっても良いか?」

「はい!ありがとうございます!送りましたので、教えますね」


 アリアに教えられてフレンド登録を完了した。

 その流れでメッセージの送り方や、盗撮防止の機能も教えてもらった。

 盗撮防止機能は、どうやらアリアくらいの見た目の少女を盗撮するプレイヤーが増えているようなので、やっておいた方が良いそうだ。


「それで探してほしい人いうのは、エルフの女の人なんです」

「エルフ?エルフってあの、耳が尖ってるあのエルフか?」

「そうです。名前はミツハと言います。見た目は中学生くらいのお姉さんで、金髪の長い髪に左眼を髪で隠しています」

「見つけやすそうな見た目だな」


 小さな声でアリアが「それでも見つからないんです」と悲しそうに言う。


「もしかしてそのエルフのミツハさんって人が、アリア……さんにステータスを教えてくれたのか?」

「そうです。困っていた私にこのゲームを教えてくれた人です。私のことはアリアで良いですよ」

「なるほどな。あと俺もマリーで良いからな」

「それならマリーちゃんって呼ばせてもらいますね」


 アリアの恩人か。困っていた俺を助けてくれたので、どうにか力になりたい。


「わかった。見つけたらそれとなく話してみて、アリアに教えるよ」

「ありがとうございます!それでは、私は行きますね」

「おう、ありがとうな!」

「はい!それじゃあね!マリーちゃん!」


 小走りでアリアはどこかに行ってしまった。


「それじゃあ、早速」


 自分の選んだ職業のスキルを確認してみる。召喚士は契約召喚ってスキルしか使えない。格闘家も正拳突きってスキルしか使えない。合成士に関しては何もできない。

 有識者から勧められて選んだ職業だったが、本当に強いのだろうか?

 召喚士の項目を見ていると、召喚士の名前の横に本のマークがあるのを発見する。

 その本のマークを押してみると、説明が表示された。


『召喚士』

 《召喚獣を召喚して戦う後衛ジョブ。レベルが2つ上がるごとに召喚できる召喚獣が増えていく。最初に召喚できる召喚獣は三体。召喚する召喚獣のレア度はランダムであり、やり直しは不可。最大レベル十。進化あり》


 契約召喚のスキル名の横にも本のマークがあるので押してみる。


『契約召喚』

 《初回は三回召喚可能。レベルが上がることに再度使用出来るようになる。召喚される召喚獣はプレイヤーの性格に影響する。召喚される召喚獣のレア度はランダムであり、召喚し直す事は不可》


「なるほど、なるほど。なら早速……契約召喚!」


 手を勢いよく突き出しスキルを唱える……が何も起きない。恥ずかしい。

 周りのプレイヤーらしき人たちも俺を何事かと見ている。恥ずかしい。


「あれ?何か間違ってたのか?」


 メニューに表示されているスキルの『契約召喚』をタッチする。


【召喚獣を契約召喚しますか?(残3回)〈YES/NO〉】


 YESを押すが何も起きない。


「あれ?何か間違ってるのか?」


 何度もボタンをタッチするが何も起きない。


「何でだ?!契約召喚って押してるだろ! 」


 不具合か?バグか?

 そういえば、アリアが念じながらステータスを言うって言ってたな。


「なら……『契約召喚!』」


 念じながらボタンを力強く押すと、空中に召喚陣が現れた。


「やった!成功だ!……ん?」


 召喚陣がやけに小さい。小動物でも召喚されるのかな?

 召喚陣から勢いよく小さな何かが飛び出した。

 それが空中で静止して、ようやく召喚された召喚獣の正体を確認できた。

 背中に小さな羽を生やした小人。


「妖精……?」

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