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第4話『我が名はマリー』

「それってどういう意味だ?俺は変態じゃないってことか?」

『どういう意味もなにも、アンタは優勝したのよ?アドベンチャーワールド2のプレイ中に注目を集めないように見た目を変えたいと思うのは当然だと思うわよ。このゲームって見た目は現実世界の姿とそこまで変えれないからね。それにこのゲームってプレイヤーキラーっていうプレイヤーを襲ってくるプレイヤーがいるから、狙われないようにの対策なんじゃないの?』

「なるほど!その発想はなかった!」


 そうに違いない!きっとそうだ!そうであってほしい。


『説明は以上よ!こっちも予定があるんだから、さっさと職業を選びなさいよね!」

「あ、ああ。ありがとう……」


 職業か。ゲームの定番って言えば、剣士とか魔法使いだよな。

 そんなことを考えていると、目の前に半透明の大きな板が現れた。

 その半透明の板には、先ほど想像していたけど剣士やら魔法使いに格闘家など、パッと見ただけでも百種類ほどの職業が書かれていた。


「こんなに職業ってあるのか?!」

『このアドベンチャーワールドの特徴は数百種類の職業と、数万種類の装備アイテムが売りなのよ』

「多過ぎだろ!」

『星の数がちょうど五つになるように、この職業の中から選んでよね』


 星?よく見れば、剣士の横に星が二つ付いている。


『その星はレアリティって意味よ。その星の合計が五個になるように職業を複数選ぶってわけ』

「なるほどな」


 つまり星一つの職業を五つ選んでも良いというわけか。

 極端な話で、この一番上にある破壊剣士という星5つの職業しか選ばないという選択肢もあるわけだ。 


「これっておすすめとかってあるのか?」

『そんなのあるわけないでしょ。知ってても教えてあげないんだから!』

「なんだよケチだな」

『うっさい!ぶっとばすわよ!』


 これ以上聞くのはやめよう。にしても、どの職業を選ぶのが正解なんだろうか?

 絶対にハズレの使えない職業ってのがあるはずだろうし。


『そんなに悩むのなら、ネットで調べたら?その画面の左端に検索できるから』

「検索?これか?」


 虫眼鏡マークのボタンを押すと、メニュー画面が切り替わりインターネットの検索画面が表示される。

 ネットなど使った記憶は無い。でも不思議と使い方は分かるので、アドベンチャーワールドのサイトにアクセスして調べてみる。

 このサイトでは他のプレイヤーに質問ができる掲示板があったので、そこで聞いてみるとことにした。


「えっと……アドベンチャーワールドⅡを始めたばかりなのですが、おすすめの職業ってどれが良いんでしょうか?っと」


 すると直ぐに回答が二つきた。


「私は抽選に落ちたので、新作のアドワがプレイできるのが羨ましいです。私のおすすめは格闘家と召喚士です。格闘家は近接戦闘で武器を持たないので武器のメンテナンスも必要ないので便利ですし、召喚士は召喚獣を召喚して使役して戦うという面白い職業ですよ。アドワ2エンジョイしてください(笑)」

「合成士がおすすめ。錬金術師の上位互換のようなもので、幅広く物を作れるので便利だぞ(笑)」


 という内容だ。良い人がいて良かった。

 切り替えのボタンを押して、職業の選択画面に戻す。

 そこから先ほど教えてもらった星一つの格闘家と、星一つの召喚士、それと星三つの合成士の職業を選択する。


「決まりだ!」

『決まったのなら、下にあるOKボタンを押してよね。ちなみに職業は冒険者ギルドで変更できるから、二度と変更できないわけではないから心配しなくて良いわよ』


 下にスクロールしてOKボタンを押す。


「それじゃあ、装備はどうする?」

「装備?」

「そう、初期装備。さすがにその格好で冒険なんてできないでしょ?」


 俺は自分の姿を見る。白いシャツに短パンという軽装備。

 少し草が生い茂った場所に行こうものなら、怪我をしてしまうだろう。


「最初に格闘家の見習い装備ね」


 俺の服がパッとヘソ出し、太もも出しチャイナ服に変わった。

 足を上げたら中が全て見えてしまいそうだ。


「これはないな」

「なら次は見習い召喚士の装備ね」


 またもパッと服が変わった。

 白い長袖のシャツに黒い長ズボン、それに魔法使いのような黒色ローブを羽織っている。


「おお!これ良いじゃん!」


 姿見で自分の姿を観察する。

 先ほどの露出が多い格闘家の装備よりも百倍マシだ。


「ならそれで決まりね。一応、格闘家の装備もアイテムボックスの中にあるから、気が向いたら装備してみたら?」


 あんなのを着ることは、ないだろうと思いながら話を聞き流す。


『それじゃあ、お楽しみの抽選タイムね』

「抽選タイム?」


 鏡がパッと消えると、それに変わり抽選器が現れた。


「抽選ってこのガラガラでするのか?」

『そうよ。これを一度回して金色が出ればユニークスキルと加護が貰えるの。銀色が出れば加護が貰えて、赤色が出ればユニークスキルが貰えるってかんじで、白色はハズレで何も貰えないから』

「へぇ、だったら金色を狙うまでだ!」


 俺はガラガラのハンドルを回す。

 ガラガラに繋がっているであろう運という細い糸が切れないように、慎重にゆっくりと焦らずに巻き取るように回す。

 排出口からコロリと玉が出る。


「これって……?」


 出た玉を覗き見ると、それは赤色だった。


「赤か……。まあ何も貰えないよりかは良いか」

『それじゃあ、アンタが貰えるユニークスキルは!ダラララララララ…………」


 口でドラムロールを言うのか、微妙に盛り下がるな。


「ダン!!ユニークスキル【冒険者】をプレゼントするわ!』


 名前的に地味で微妙そうだ。あまり期待できそうにない。


「その冒険者ってのはどんな能力なんだ?」

『有名なスキルだけど知らないの?』

「いや、知らないな。悪いんだけど教えてもらって良いか?』

『まあ、いいわ。風邪のときに食べるおかゆのように優しい私が教えてあげる!』

「お腹には優しそうだな」


『ユニークスキル【冒険者】は全ての武器防具が装備できるけど、自分のステータス値はプラスされないって効果があるスキルよ』

「へぇ、なんでも装備できるのか……まあ良いか」

『これで私の説明は終わったけど、何か聞きたいことがあるなら答えてあげるわよ』


 そうだな。このゲームについても聞いたし、他にあるとするなら。


「今からゲームが始まるとして、何から始めたら良いんだ?」

『うーん、そうね。自分の使えるスキルの確認と、街から外に出る前にアイテムを買って準備したが良いんじゃないの?』

「なるほど。他には?」

『あんたって召喚士でしょ?先ずは召喚士の召喚獣を召喚するのが良いんじゃないかしら?召喚士は最初に三体だけ召喚できるのよ。それをするのが良いかもね』


 言われてみればそれもそうか。冒険をする前に準備するのは当然だ。


「ありがとう、先ずは言われたことをやるよ」

『うん、そうしなさい。これで終わりだけど……あっそうだ!』


 マリアが何かに気がついた。

 すると目の前のメニュー画面が切り替わり、キーボードが表示される。


『アンタのプレイヤーネーム、変えなくても良いの?そのままだと見た目を変えた意味なくなるでしょ?』

「たしかに……それもそうだな」


 『ユーゴ』のプレイヤーネームを消して、画面を見つめる。

 そう言われても、パッと名前なんか思いつかない。

 こういう時に飼っている犬やら好きなミュージシャンなどの名前にするのだろうけど、俺にはそんな記憶はない。

 どうしたものか……。


「どうしたの?さっさと決めなさいよ」

「そう言うけどな……あっ!なあ!マリアの名前を貰っても良いか?」

「私の?」

「ああ!そのまま使わないからさ!そうだな……マリアだから……マリカ、マリス、マリハ、マリ」


 う〜ん……どれもピンとしないな。


「えーーーっと……」

「マリー……なんてどうかしら?」


 マリアがそんな提案をしてくれた。即採用だ。


「良いな!マリー!ありがとうな!マリア!」

「べ、べつに感謝されるほどでもないわ!私の名前を使うんだから、案を出すのは当然でしょ!」


 俺はキーボードで名前を打ち込む。

 打ち込み終わると、目の前に白い扉が現れた。

 勝手に開いた扉の向こうには噴水が見える。

 ここから出ていけばアドワのゲーム世界に行けるということだろう。


「マリア、また会えるか?」

「そうね。ここはカスタマーセンターみたいなものだから、アンタがトラブルに巻き込まれて困ったらいつでも来なさい。仕方ないから一緒に解決してあげる」


 このまま名付け親でもあるマリアに、一生会えないのは悲しいと考えていた。

 でもマリアの再会できることを聞いて安心して、扉から出る覚悟ができた。


「ありがとう!行ってくるよ!」


 俺は勢いよく扉から飛び出した。

 後ろから優しい声で「いってらっしゃい」と聞こえた。

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