23話『冒険者養成施設というの名の学校』
三日後の養成施設に行く日。車に揺られること五時間。
俺は中々の都会にある大きな施設に到着していた。
「日野内さん、ここが冒険者養成施設です」
「ありがとうございます」
俺を休憩なしで運転して連れてきてくれた女性は、疲れを一切見せない。
ちなみに朝八時に向かえが来たせいか、エリーと俺は出発して一時間くらいで寝てしまった。
「ここが……」
『広い』『全部を案内するのに何時間掛かるんだ?』それがこの施設に最初に思った感想だった。
「広いね〜。ここを全部見て周るのに何時間掛かるんだろうね?」
すっかり目が覚めたエリーも俺が思った感想と同じことを言っている。
「それでは案内しますね」
女性が淡々と言いながら鉄扉に手を翳す。
すると鉄扉が自動ドアのように横に開いた。
「付いて来てください」
「エリーは戻した方が良いのかな?」
横を飛ぶエリーを見て疑問に思った。
こういう重要な施設では魔法が禁止されていたのを、どこかで見た記憶があった。
「大丈夫ですよ。冒険者養成施設では攻撃魔法や相手を傷つけるスキルなどが禁止にされているだけです」
「良かった……。エリー、誰かに噛み付いたりするなよ」
「しないよ!」
女性の案内に付いて行くと、古い学校のような建物に到着した。
靴のまま中に入り、部屋の前で立ち止まる。
「ここで日野内さんのクラス分けをします」
「クラス分け?」
部屋の中に通されると、椅子に茶髪の眼鏡をかけた若い女性が座っていた。
真っ白な病室のような部屋。ベッドや医療器具が置いてあるので、やはり病室なのか?
「ふーーん……ステータス値『四百六十』ね。可愛いのに残念、Fクラスね」
「え?」
意地悪そうな笑いをしながら女性は言う。
その言葉の意味が分からなくて困惑する。
「日野内さん、彼女の掛けている眼鏡は冒険者のステータスの数字を見ることができるのです」
「へー」
そんなステータスが見える便利なものがあるのか。
「そしてその数値でクラスを分けているのですよ」
「そういうこと。つまり君のステータス値では、一番下のFクラスってこと」
「へぇ〜」
クラスが上だろうが下だろうが、俺がダンジョンを攻略して特待生で卒業することに問題ない。
「それでは寮に案内しますね」
部屋を出て案内に付いて行くと、マンションのような建物に到着する。
「ここが初等部の女子寮になります。一階の十五号室が日野内さんの部屋です。それと学生証を渡しておきます」
ここで案内は終わりっという雰囲気だ。
手渡された学生証は、冒険者の登録をした時に貰ったカードによく似ていた。
「絶対に無くさないでください。絶対の絶対に無くさないようにアイテムボックスに入れる癖をつけるのをお勧めします」
「な、なるほど」
真顔で念を押して強く言うので圧倒されてしまう。
「それでは私は失礼します」
「ここまで運転とか色々ありがとうございました」
頭を下げると、女性はにこりと笑い立ち去って行った。
そういえば、名前を聞くのを忘れていたな。
「行くか」
「うん!」
エリーと一緒に寮には入り、部屋の前に到着する。
「これってどうやって開けるんだ?」
「ここに学生証をピッとするんだよ」
近代的な建物だな。案内の女性が言っていた意味が分かった。学生証を無くしたら部屋に入れないので大変だ。
部屋に入り室内を見てまわる。
「狭いな」
「部屋が一つに、トイレとお風呂があるだけだね」
この部屋にある物はベッドと洗濯機、それと小さな冷蔵庫があるだけだ。キッチンなどはない。
「ご飯とかは食堂があるからキッチンは必要ないってことなのか?」
「そうみたいだね」
エリーが頭を押さえて答える。
「もしかして調べてくれてるのか?」
「うん!資料は全部ここに入ってるから何でも聞いて!」
自分の頭を指差してエリーはドヤ顔をする。
ビンタしたいくらい生意気な顔だ。
「なら先にご飯食べようぜ。腹減った」
ずっと車の中で寝ていただけだが、人間は何もしなくてもお腹は空くものだ。
「だったら食堂だね。その格好だと目立つから制服に着替えないと」
「うっ……まじか」
俺はアイテムボックスから制服を取り出す。
取り出した制服は女子用だ。スカートだ。
「可愛い制服だね」
「はぁ〜……スカート嫌なんだよな」
俺は渋々着替える。
男子用の制服が良かったが、家に届いたのがこの制服だった。
「まあまあ良いじゃん。似合ってるよ」
この制服には『修復』『清潔』『追跡』の魔法が掛かっているらしい。
そのため簡単に新しい制服に変えてもらうということはできない。だから俺は諦めて女子の制服を着るしかないのだ。
でもスカートは嫌なので、抵抗として中に半ズボンを履いている。
「それじゃあ着替えたなら行こっか!えーっと……はぁ〜、なるほど。そういうシステムか〜」
エリーが呆れた顔をして、俺の方を向く。
「マリー、この部屋が狭い理由が分かったよ。メニューを開いて」
「お、おう」
俺はメニューを開くと、エリーが慣れた手つきで操作する。
「これ見て」
「なんだ?」
エリーが見せてきたのは、この施設のパンフレットだった。
「なるほどな……」
エリーが呆れた理由が分かった。
この養成施設はA〜Fのランクで全てが決まる。
つまり俺の部屋が狭いのは一番下のFクラスで待遇が悪いからである。
よく見れば教室や食堂のメニューの待遇も変わるみたいだ。
「それじゃあ食いに行くか、一番下のFクラスの飯でも」
俺たちは部屋を出て、食堂に向かった。




