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第15話『サイバーフェアリーとダンジョン』

 妹のお下がりの服でダンジョンに入るわけにはいかないので、召喚士の装備に変えることにする。

 メニューを開いてボタンを押すと、一瞬で服装を変えることができた。

 着替える瞬間に全裸になってしまう心配があったが、そんなことにはならなかった。

 ダンジョンの近くにあった小屋に受付の人が居たので、冒険者カードを見せて入る許可をもらう。


「係員さんが言ってたけど、ここのダンジョンは一階しかないかわりに、広いみたいだな」

「そうみたいだね」


 エリーが顎に手を当てて、考え事をしている。


「俺の話聞いてる?」

「うん……」


 聞いちゃいない。

 少し腹が立ったので、飛んでいるエリーのスカートの中を見てやった。


「なに?!」


 スカートの中が真っ暗だ。何も見えない。

 まさかパンチラ防止されているとは、さすが全年齢で遊べるアドワだ。

 俺はゆっくりと姿勢を戻して、エリーの名前を呼んで肩を叩いた。


「あっ、ごめんね。集中してて気が付かなかったよ」

「ダンジョンの前で、そんな集中することあるか?」

「えっと、怒らないで聞いてほしいんだけど……実はマリーのスマホと私は同期中なんだ」

「同期中?どういう意味だ?」

「私は今、こうしてマリーと話しながらスマホで検索できるし、メールや電話もできるんだよ。つまりスマホ型妖精と言っても過言ではないってことなんだ」

「なんだか未来的な妖精だな」


 エリーに何か聞けば、検索して教えてくれるってことか。


「エリーが電子妖精になったとはな」

「電子妖精だと粒子の妖精になるからちょっと違うよ」

「ならマシーン妖精ってことだろ?」

「マシーン妖精だと剣とか持って襲って来そうで怖いから言い方変えて」

「サイバーフェアリーになっても俺は怒らない」

「サイバーフェアリーは全身機械の妖精だよ!ってもういいよ!」


 そんなエリーとのやり取りをしながらダンジョンに入った。

 ここのダンジョンは地下ダンジョンというものらしく、地下に一階あるだけの規模らしい。

 中は石造りで、所々に土が見える。

 こんなものが世界中に作られたなんて驚きである。

 そんな感想を思っていると、通路が二つに分かれた場所に出る。


「ヘイエリー、どっちへ行けば良いの?」

「普通に聞いてよ!調べてみるね……右だよ。左は行き止まりみたい。あともうそろそろモンスターが出るみたいだからスピカたちを召喚しておいた方が良いかも」

「了解。『召喚』スピカ!『召喚』ナイト!」


 召喚陣が二つ描かれると、スピカたちが召喚された。

 召喚されたスピカたちに世界の融合について説明しておいた。


「マリー、分かってると思うけど、ここはゲームじゃないの。ここで怪我をすれば痛いし血も出る。それに本当に死んじゃうんだよ。私はマリーにもしものことがあったらと思うと……」


 そうだ。エリーが横にいるので忘れていたが、ここはゲームではなく現実世界だ。

 もしも強いモンスターとの戦闘になってしまうと、今の俺たちでは負けてしまう。


「マリー、もしも……もしも危なくなったら私たち召喚獣を盾や囮にしてでも生き残って、私たち召喚獣は二時間経てば復活するから」

「……ああ、わかった」


 エリーたちを盾や囮にしてまで生き残ることには抵抗がある。

 だけど、俺が死ねば全て終わってしまう。覚悟を決めないといけない。


「出たよ!スライム!」

「あれがスライムか」


 ダンジョンを進んで行くと、水の塊が跳ねていた。

 よく見れば水の塊の中にゴツゴツとした黒い石が浮かんでいる。


「マリー、スライムはあの核を狙ってね」

「あの黒いのが核か、あれを攻撃すれば良いんだな!」


 どう狙うか。俺の格闘家のスキルで殴るか、ナイトに齧り付いてもらうか……。

 そもそもスライムは素手で触って大丈夫なのか?

 こういう時に剣士や魔法使いなら何も考えずに倒せるんだろうけど、格闘家の俺は考えてしまう。


「エリー、スライムって素手で触って大丈夫なのか?」

「私も気になって調べてみたんだけど、スライムは弱い酸で身体が作られてるみたいだから触るのは危険かも」

「じゃあ文字通り、俺たちは手も足も出せないじゃないか」


 俺もナイトもスピカも誰も倒せない。

 ダメージを受けながらであれば倒せるが、そこまでして倒すほどのモンスターなのか?


「素通りするか」

「そうだね。ナイトのスキルで壁を作りながら通ろう」

「わかった。ナイト頼めるか?」

「ワウ!」


 ナイトのスキルで生み出した闇属性の壁が地面から生えてきた。

 触ってみると鉄のように固く、頑丈な壁だ。

 その壁によって、俺たちとスライムを分断してくれる。


「このままスライムを避けながら、簡単に拾えるような物でも探すか」

「うん!」


 ダンジョンを奥へと歩き出し時、地面が歪んだ気がした。


「ん、あれ?」

「どうしたの、マリー?」

「いや……気のせいか。大丈夫だ、行こう」


 少し違和感を感じながら、俺たちは奥へと向かった。

 しかし歩けど歩けど、モンスターが出てこない。それだけならまだ気にもしなかった。

 ずっと同じ道を歩いている気がする。


「なあ、エリー」

「マリーも気が付いた?なんだか変だよ。私が調べたここのダンジョンは、少し歩けば広間に出るはずなんだけど……」


 エリーがそう言うと、部屋の入り口が見えた。


「あれが広間じゃないか?」


 俺は駆け足で向かい、その部屋へ足を踏み入れる。


「ここがエリーが言ってた広間じゃないのか?」

「う〜ん、ちょっと違う気がする。調べた広場はもっと広かったような」


 エリーが話していると、ドスン!っと俺の背後で大きな物が落ちる音がした。

 入り口が無くなっていた。正確には扉が岩で塞がっている。


「え?!閉じ込められた?!」

「うそでしょ、待って!この部屋って……」


 エリーが慌てて部屋を見回す。


「ボス部屋……そんなはずは!だってここは初心者ダンジョンなのに」

「エリー、この部屋のこと何か知ってるのか?」

「うん、ここはボス部屋だと思う。でも初心者向けのこのダンジョンにはボスは居ないはずなんだけど……」


 そんなことをエリーが言っていると、部屋の中央に召喚陣が現れた。

 俺が見慣れている召喚陣とは違う。まるで悪魔でも召喚されそうな、禍々しい黒いものだ。

 召喚陣から一体の化け物が黒いモヤを纏いながら現れた。


「何か召喚されたぞ……」


 赤黒い悪魔のような肌をした、鬼の顔をした化け物。

 三メートルはある大きさの化け物は、車を軽く持ち上げてしまいそうなほどの筋骨隆々の体をしている。

 その手には俺の身体よりも大きな木の棍棒を持っている。


「そんなウソでしょ……なんでこんな初心者ダンジョンに、レッドオーガがいるの」

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