再興
ホムンクルス神という精神的支柱を失ったオメトル神族達は、新たなる支えとして、現在生き残っている神の中で最も高齢なマギウス神を新たな最高神として定めた。
「では、俺達は会社に帰らないと…」
雪野がスタディン神に言う。
「君達も、時々は遊びに来ていいんだからな。神の力を正式に得たんだから、本当は船に乗る事なく、来る事ができる」
「時間が空けば、ここに来ますよ。何かあれば、呼んでください。すぐに、駆けつけましょう」
そして、雪野、平水、加賀、宮崎は、会社がある空間へと戻って行った。スタディン神、クシャトル神、マギウス神は、とりあえずの作業として、神についての行動マニュアルを作った。そして、それに従って、必要な神々も置く事にした。
「さてと、とりあえずの措置として、ここまではした。万一の時があった場合は、スタディン神が、儂のあとを継ぐ事になるな」
「そうですね。しかし、どうでしょうか。新たに空間を創るならば別ですけど、当面、そのような暇はないと思います」
「確かに、それは、儂も同意見だ。と言う事だから、現在の図書館、あれを改組する事も必要だろう。今は、あのままでも構わないが、下に深くなりすぎると、使う側がやりにくくなる。そんな事よりも、時間の神は、どこに行ったんだ?ホムンクルス神がしていたと思ったんだが、時間が変動する事はなさそうだし」
マギウス神は言った。そして、スタディン神がそれに答えた。
「単純です。ちょっと、こちらに来てください」
スタディン神が案内したのは、中央会議室のちょうど下に位置している地下室だった。教室より少し広いぐらいの部屋の真ん中に、何かが置かれていた。それは、12個の数字が円形に等間隔に並んでおり、それらの特定の数を指し示すように、一定の速度で動いている針が1本あった。
「これは?」
「古来の時計と言われている時計です。天地開闢の時、どこからともなく現れた、遥かなる過去から今まで止まる事なく動き続けている時計です。時間の神、それは、この時計です。この時計があるからこそ、時間は永遠に刻み続けるのです」
「なるほど、だが、なぜここにあるんだ?もっと別のところに置かれるべきだったと思うが…」
「ここに置かれたのは、偶然でしかありません。最初の頃は、オメトルにおかれていましたが、オメトルにホムンクルス神が即位してから、時間を自由に触られると困ると言う事で、新たに時間をおくための空間を創る事になりました。それが、この全世界正史委員会中央評議会の空間です。この空間に古来より住み続けている民族は、時の民と呼ばれており、それによって、時間は、一定の速度で進む事ができます」
「そうか、なるほどな。じゃあ、時の神には、これからもがんばってもらわないといけないな」
「そう言う事です。とりあえず、彼は、大丈夫でしょう。これが動き続ける限り、世界の時は刻み続ける事が可能です。ただ、この時計は、1秒ずつしか計れません。全ての宇宙中が、この1秒と同じ時を刻み続けます」
ほとんど人がいなくなった図書館で、アダムとイブは、何か作業をしていた。
「………できた!」
「やっと、できた…」
「何ができたんだ?」
スタディン神とクシャトル神が、アダムとイブのすぐ後ろに立っていた。
「ずっとがんばって作っていたものだよ。スタディンが戦争に行ってからも、ずっと、していたものだよ」
「だから、何ができたんだって」
「これまでの神々の系譜、第40版」
「…はい?」
スタディン神は達成感で満面の笑みを浮かべているアダムたちに聞き返した。
「今までの神々の名前、功績、神になった理由等々をまとめて一つの本にしたんだ。ようやく出来上がったんだ。前々からある物に補足すると言う形にしたけど、それでも、相当時間がかかってね」
「そうか、まあ、とりあえず本棚にしまっとけよ」
「分かってるよ」