反攻
ホムンクルス神側も、何も手を打っていないわけではなかった。
「おい、トフィルドトフスキを呼べ」
「承知しました」
トフィルドトフスキと言うのは、全宇宙の中で、神に近いと言われている魔術師である。
数分後、身長が低く少しやせぎみの男が、ホムンクルス神の前に出てきた。
「お呼びですか?」
「そうだ。新たなる神の力を手に入れた者が、敵側にそのまま入った。こちら側の戦力と、向こう側の戦力を比べて欲しい。できる限り早くだ」
「承知仕りました。では、失礼します」
彼は、そのまま、思案顔でどこかへと消えた。
さらに、1時間がたった時、ホムンクルス側も、トフィルドトフスキが立てた作戦に基づいて、陣地配置をしていた。そこへ、スタディン神側が押し寄せたのだった。それこそ、地獄絵図だった。あちこちで、斬りあい、発砲し、さらに、同士討ちと言う事も起こった。数時間後までには、神々と数十名の人のみが生き残っていた。
「さて、これで、お前と戦える」
スタディン神が、一歩近づいた。ホムンクルス神は、微笑みながら言った。
「そんなことはない。我が本性は、真実が見えぬものには暴けぬ。我を倒す事、即ち殺す事は、そこに直結する。つまりは、我が真実なる姿を見つけた時、おのずと分かるだろう」
「どういう事だ?」
ホムンクルス神は、何も言わず、指を鳴らした。
「トフィルドトフスキを呼べ」
「承知しました」
すぐに彼は来た。
「さて、お前の力を示す時だ。頼んだぞ」
「承知仕りました」
ホムンクルス神は、そのまま、神殿の奥に帰って行った。
「こらっ!」
スタディン神が追いかけようとすると、トフィルドトフスキが立ちはだかった。
「お前達は、ここで、死ぬんだ」
「さて、それはどうかな?」
出てきたのは、雪野だった。鋭くとがった槍を持っていた。
「なんだ?その槍は」
「突神槍。俺が作り出した、神器だ」
「そんな、単純なもので、このトフィルドトフスキが倒せると?」
彼も、手に何か持っていた。
「そんな単純な槍よりも、こっちのバルムンクと言われる剣の方が、力があるぞ」
「さて、どうかな?」
そして、槍と、剣の戦いが始まった。
刃と刃が重なり、火花が散る。体が重なり、再び離れる。どちらとも、致命傷を負う事なく、また、傷も負わずに、ただ、疲れていくだけの戦いだった。
一瞬、トフィルドトフスキがふらついたと思うと、そのままの格好で槍の刃が心臓を突きぬけた。その時、口は叫んでいたが声は一切聞こえなかった。ただ、黒い塊が、遥か上空に拡散するのが見えただけであった。
それを見て、ホムンクルス神側の雑兵は、蜘蛛の子を散らすように散り散りになった。
「さあ、進もう」
一行は、前に進みだした。
30分ぐらいした時、一番奥の部屋で、ホムンクルス神を見つけた。
「やっと見つけたぞ、ホムンクルス神!」
「やれ、見つかっただけでは、我を殺せないぞ」
「それぐらいわかっている。だからこそ、その真実なる姿を暴きに来た。自分がいた世界、イフニ神や、カオス神がいたあの世界。錬金術と言う学問の中で、ホムンクルスと言う名前が出てきた。それは、フラスコの中で作られた、人造人間である。つまり、ホムンクルス神、あなたは、最初から人間であるような話をでっち上げ、自らが人造人間である事を隠してきた。違いますか?」
ホムンクルス神は、拍手をした。
「さすが、神の中で最も知能が高いスタディン神なだけはあるな。だが、それが分かったとしても、我を倒す事はできない」
スタディン神は、笑い出した。
「自分だって、そんな単純なもので倒せるとは思わないさ。だが、フラスコと言う住処を追われたホムンクルスは、どうなるかな?」
その時、遠いところで振動が起こった。
「なんだ!」
「いよいよ、お別れだな。巨大な力を持ちすぎたものは、必ず葬られる。今回、神と言う力に長い間いた影響で、他人をこき使うしか考えがなくなったお前の負けだ。さあ、ホムンクルスよ。生まれた空虚なる空間へ帰りたまえ。そして、二度と自分達の目の前に姿を見せぬように…」
「いやだー!やめろ、こらっ、誰か助けろ!やめろー…!」
誰かに引っ張られるようにして、その姿は、徐々に形を失った。そして、ついに、何かが弾けるような衝撃と共に、その姿は、空虚な空間へと戻った。
「ホムンクルス神は、どこに行ったんだろう…」
「宇宙と宇宙の狭間、あの隙間から生まれたんだ。彼は、その隙間に戻っただけ…」
そして、神殿が崩れ始めた。
「彼がいなくなった事によって、この神殿の支えがなくなったんだ。みんな!急いで自分についてこい!脱出する!」
神殿の外に出ると、空気がなくなりつつあった。
「あの船に、乗ってください。2分後に、脱出します」
どたどたと、船に乗り込んだ。そして、全員乗り込んだ事を確認して、オメトルの最期を見届け、全世界正史委員会中央評議会の空間に戻った。