オメトル
「ここが、オメトルと呼ばれる場所だ。昔は、緑が生い茂り、さまざまな生命が生きていた、生に溢れていた宇宙空間と聞いている。しかし、神々の粛清後、こうして、炎と闇と破壊のみが生きている、そんな世界に変わってしまった…」
スタディン神がぼやいていた。
「結局、どこに生命が生まれたとしても、宇宙が崩壊していると言う事実は、変わらない。だが、ここだけは、常に生きていた。とある空間と共に、未だに生きている。それが、素晴らしい事だと思う」
「とある空間?」
加賀彩夏が、興味を示した。
「どんな空間?」
「通常は、許可された者しか知る事は出来ない空間だ。その空間の名前は、全世界正史委員会中央評議会と呼ばれており、今でも機能している。しかし、ホムンクルス神はその評議会の管轄外のため、一方のオメトルも手が出せずに、そのままほっとかれたと言うわけさ」
「そこまで話して良かったっけ…」
スタディン神が内情を話す横に座っているクシャトル神が言った。
「まあ、ここまで来ちゃったし、ここから出る事はできないだろうからな。それで、自分の知っている事を話しても構わないと言う気持ちになってね」
クシャトル神は、ため息をついて、外を見た。そとは、生命が存在していないような世界であった。あちこちで恒星が爆発をしており、それによって、強力な紫外線が放射されていた。惑星表面の大気は、全て剥ぎ取られており、命はなかった。ただ、唯一の例外が、これから彼らが行く、中央惑星と呼ばれる惑星だった。
「ここだ、降りろ」
連れてこられたのは、ガラスで作られたドーム状になった神殿らしい建物の前だった。
「ホムンクルス神…!」
スタディン神が、前に立っている長身の男と思う人に言った。
「久しぶりだな、スタディン神。元気にしていたか?」
「そちらこそ、少し太りましたか?」
ホムンクルス神は、微笑を浮かべながら言った。
「そうかもな」
そして、連れてきた人とは別の人に対して言った。
「こいつらを、まとめて一つの牢に放り込んどけ」
「分かりました」
3人だったが、それでも力は神に匹敵しているように思った。
建物の地下、3階ぐらいのところに、20畳ほどの広さの座敷牢があった。
「ちゃんとそこにおれよ」
めんどくさそうな顔をして、彼らは言った。そして、鍵を3重に閉め、そのまま上に戻って行った。
「さて、これからどうしようかな」
後ろを向くと、誰かいた。
「スタディンと、クシャトルか?」
「マギウス神!生きていましたか」
「この通りのざまだがね。やれやれ、第1世代の神はさすがに力が強い。そっちの4人は、第38代目の神々になるのかな?」
「そんなものです」
「そんな話はさておき、ここからどうやって逃げる?」
マギウス神は、首を振った。
「ここから出る事はできない。この二人が出られたのも、単なる奇跡に過ぎない」
「………」
「その上、お前達がいなかった時に、ホムンクルス神が乱心を起こした。彼は、契約を破棄したもの同然の行為をした」
「神を、喰らったのですね」
クシャトル神が、マギウス神に言った。
「そうだ。この老いぼれ一人だけは、どうにか生き延びれた。しかし、次は、この儂の番だろう…」
「どうにかならなんですか?」
雪野雄一が言った。
「どうにもならない。ここから出るくらいの確率で、儂が喰われるのを避けられると思えばいい…」
「それをするのは、万に一つない…」
「そんな…」
みんなが頭をひねっている間に、誰かが下りてきた。
「静かに!」
彼らは、真っ先にここの牢に向かってきた。
「皆さん、起きてますか?」
「お前達は、誰だ」
「自分達は、オメトル・スタディンとオメトル・クシャトルです。あなた達を助けに来ました。今、話している時間はほとんどありません。ついて来てください」
「分かった」
一行は、彼らについていくことにした。一縷の望みにすがるためであった。




