飛来した民族
とある宇宙、オメトル神族の末裔である、オメトル・ホムンクルスがいた。彼は、オメトル神族の中でも最も高位の神官であり、特別な称号として、ホムンクルスの名を授かっていた。
「オメトルから出てきたのはいいが、スタディン神とクシャトル神なんて、どこにいるんだ?」
「まあ、落ち着けって。そうカッカするなよ。いずれは見つかるさ」
彼の相手をしているのは、オメトル・イフニ。イフニ神の名を授かっている、第4位の神官であった。二人は、幼き頃からの知り合いであり、いわゆる幼馴染と言える仲であった。
「とにかく言えるのは、どこかにいると言う事さ。神々がそうやすやすと死ぬとは思えない」
「確かにそうだな。しかし、なんでホムンクルス神はこんな指令を出したんだろうな。スタディン神とクシャトル神を連れ戻せって、何か企んでいるのか?」
「さあな、俺達、神官は神々の意思なんか知っちゃこっちゃないさ。わかっているのは、この広い宇宙間のどこかの宇宙にいるって言う事さ」
その時、彼らが乗っている船の前面にある画面に、とある空間が表示され、さらに、ある惑星表面上の家の中が出てきた。
「あの中にいるんだ」
オメトル・ホムンクルスが言った。
「さっさと終わらせようぜ。今日は娘の誕生日だ、きっと、お父さんどこ~って、探すはずだからな」
「着陸するぞ、時間停止手続、本船は、これより目標を補足し、回収に移る」
どこからかに設置されたスピーカーから、雑音が入っていたが、それでもこう聞こえた。
「…了解、相手は、神だ。油断をするな…」
「はいはい」
そのまま、操縦桿を握り、惑星上に降りた。
そこは、一棟の古いアパートだった。あまりに古く、根は錆びていたが、しっかりと、建物を支えていた。
「この中か…」
「部屋は、2階だな」
外付けの階段を上がり、2階のある部屋のインターホンを押した。
「スタディン神とクシャトル神、いるならすぐに出て来い!」
ちょっとしてから、スタディン神が出てきた。
「ホムンクルス神の手先か…」
「ここまで来るとは、彼は元気か?」
そんな悠長な話にいらだった、オメトル・イフニは、切れ気味に言った。
「うるさい!こっちは、ホムンクルス神からの直々の指令によって、お前達二人をつれてくるように言われているんだ!」
その時、二人がしらない人達が、スタディン神を守るように立ちはだかった。しかし、スタディン神が言った。
「彼らは、オメトル神族だ。君達が相手になるような人ではない」
一番奥にいた人が言った。
「ホムンクルス神?オメトル神族?なんだよそりゃ」
「ホムンクルス神と言うのは、神々の中の神と呼ばれる、最初に生まれた神だ。彼は、オメトル、自分とクシャトルが出てきた空間、最初に生まれた宇宙の名前だ、そんなところからこちらに来た。そこを統治している人々は、オメトル神族の末裔だ。彼らは、神々の粛清と呼ばれる大虐殺の時、ホムンクルス神側に立ち、戦ったのだ。それ以後、ホムンクルス神が統治する、神々の墓場と呼ばれるようになったのだ」
クシャトルが説明をしていた。その一方で、立ちはだかっている中で、彼らに言った。
「連れ戻せ、そう言われているんだな」
「ああ、その通りだ」
「じゃあ、まず、この、俺達を殺せ」
「ちょっと、雄一…」
女性の人が言った。彼らは、ため息をついて言った。
「じゃあ、こうするか…」
それから、右手を軽く振った。周りの時間は止まった。しかし、4人の時間は流れ続けていた。
「俺達に、時間停止魔法なんて効かない。そもそも、止まっているんだから」
そして、彼らの顔を見た。オメトル神族の人は言った。
「君達にも、来てもらう必要性があるようだ。さあ、来るんだ」
右手を動かすと、勝手に足が動き出した。スタディン神とクシャトル神は、微動だにしていなかった。
「君達は、神になれる。そのような存在は、早期に摘んでおくべきだからな。さあ、あの船の中に入るんだ」
新幹線の先頭車両に、尾翼をつけたような形をした船が、1隻、止まっていた。
「あれは…なんだ…」
「重力子移動船、簡単に言うと、宇宙同士を相互通行するための船だ。さあ、乗りたまえ」
そして、意思がないままに、二人に導かれるがままに、乗り込んだ。全員が乗った時、一枚の紙を代わりに家の机の上に置き、そのまま、船は発車し、そして、この宇宙から別のところへ移った。