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「ねぇ、レオは誰を誘うの?」

放課後、先生が配った卒業パーティーの案内を指さしてリズが聞いてくる。

「んー…どうしようかなー。まだ迷ってる」

『卒業パーティーへの案内状・申込書』をつまんでひらひらさせる。


王立ブロッサム学園の卒業パーティーは女性にとってはドキドキのイベントだが、男性にとっては…人によっては苦痛なイベントでもある。

卒業パーティーへの案内状は男性と女性で書いてあることが違う。


まず男性はファーストダンスの相手とラストダンスの相手を書くことになる。

すでに婚約者や彼女がいる人は、どちらともその名前を書くので楽だ。

問題は想いを伝えていない女性が相手だったり、すでにほかの想い人がいる女性を狙う場合。

相手の名前を書いたとしてもOKしてくれるとは限らないのだ。

そうなると、当日に相手がいないなんてことも起こるので、その場合は卒業パーティーを取り仕切る生徒会メンバーがいい具合に相手のいない同士を組み合わせてくれる。

その相手が可愛い子ならいいが、そうじゃなかった場合…苦痛にしかならない。

ファーストダンスとラストダンスにはひっそり受け継がれるジンクスもある。

ファーストダンスは大広間中央で踊るとあなたと結婚したい。

ラストダンスを大広間中央で踊ると、未来永劫2人は幸せになれる。

というものだ。

そう、どちらのダンスも中央で踊ってしまった場合、ここで意図せず結婚相手として認識されてしまい、外堀を固められてしまうこともある。



女性の場合はダンスの相手を書く紙は配られない。

これからの流れが書いてある紙だけだ。

女性たちは、もしかしたらあの人から誘ってもらえるかも…!というドキドキ感を楽しむのだ。

元々この国には女性から男性へアプローチする、ということが少ないのでこうなっているというのもある。

パーティー2か月前になると、自分の寮の部屋へ一緒にパーティーに行く相手の名前が書いてある手紙が届き、そこで初めて自分の相手がわかる。

基本的にはドレスやアクセサリーは男性側が用意するため、生徒会側が選んだパートナーの場合は家柄が近い人になるようにされているとのことだ。

そうでないと平民男性と貴族女性がペアになった場合、お互いからクレームが来るということが過去にあったからとされている。



「リズは誰かさんから誘ってもらえるといいな」

リズの頭をポンポンとしながらレオがいう。

「誰かさんって…!誰もいないわよ」

耳をほんのり赤くさせたリズはレオの胸元にパンチしながら、ちらりと教室の端を見る。

ちょうどオリヴィアと話していたアルフォンソもこちらを向いたようで視線が合う。

「…!」

目を見開いたあと、アルフォンソはオリヴィアに片手をあげて別れを告げリズの方へ近づいてくる。

「君は誰かに誘ってもらえそうかな?」

「余計なお世話よ!」

リズはプンっと横を向く。

「僕はファーストダンスはオリヴィアと踊らないといけないんだ」

そういわれた瞬間、リズの頭に集中していた熱が一気に冷めたような気がした。

「そうでしょうね…次期王配候補だものね。王女と踊らないといけないんでしょう」

もしかしたら、万が一…と期待していた心が一瞬にしてしぼんでしまった。

しかもツンケンとした言い方しかできずに落ち込んでしまう。

「君は…いや、何でもない」

少しムッとした顔をしたかと思うと、そのままアルフォンソは自分の席へ戻って行ってしまった。

「そんな言い方したら、あいつに嫌われるぞ?」

レオが哀れなものを見るような目でリズを見る。

「だって…だって…」

そうつぶやくとリズはトボトボと教室を出て行った。

「2人とも不器用だな…」

少し力を貸してやりますか、とレオは生徒会室へと向かっていった。








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