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2(sideアルフレッド)

生徒会室の扉を開くと、窓際にあるデスクにピンクブロンドが見える。

「早いな」

アルフレッドが声をかけると、ピンクブロンドの持ち主でありこの王国の第一王女オリヴィア・ブラッドベリーが顔をあげる。

「おや、もう来たの?もう少しエリザベス嬢をからかって遊んでいるのかと思っていたよ」

クスクスと笑いながら手元にある書類をトントンとまとめ、そばにいたアイザックに手渡す。

「僕もアルはまだ来ないだろうと思っていた」

アルフレッドの前ではいつだってムスッとした表情のアイザックがつぶやく。

ほんのりと耳を赤くしたアルフレッドは、

「うるさい」

一言つぶやくと生徒会室の自分の席に座り、資料を作成し始めた。



オリヴィア、アイザック、アルフレッドは学園入学前から、なんなら産まれた時から一緒に過ごしている幼馴染だ。

オリヴィアの乳母がアイザックの母であり、アイザックの父はアルフレッドの父の弟である。

ほとんど同時期に産まれた子供たちなので、何をするにも常に一緒に行動していた。

もちろん学園入学後も生徒会役員として一緒に過ごす時間が何よりも多い。

そして、アルフレッドがいつも誰を見つめているのかも2人にはお見通しだ。


「あー…明日はついに卒業パーティーに向けた第一歩というところだね」

比護欲をそそるような見た目をしているオリヴィアの口から、あきれたような言葉が出る。

オリヴィアの素の口調は見た目に反して男っぽい。

それは生徒会役員しか知らない事実だ。世の中の王女のイメージって大切。

「で、誘うのかい?」

アルフォンソに詰め寄ると、

「誘うわけないだろ。僕は次期王配なんだろ?一般の子とダンスを踊るわけにはいかない」

手元の書類から目を背けることなくつぶやく。

「別に誘ってもいいのに」

ふんっと冷めた目でアイザックはアルフォンソを見る。

「こーんなに好きなのにねぇ」

「ねぇ?」

オリヴィアとアイザックはからかうように、いかにアルフォンソがリズのことを好きなのか暴露し始める。

「毎回テストが1位なのもエリザベス嬢に負けたくないからだもんね」

「リズって呼びたいのに意地はって呼べないんだよね」

「ほんとは一目ぼれなのにね」

「何年片思いしてるんだか」

やれやれとでもいうかのように2人はさらに言おうとする

「やめてくれ…ほんとに、死ぬ…」

耳どころか顔や首まで真っ赤にしたアルフォンソが手元の用紙を握りしめている。

「ほら、そこにエリザベス嬢の名前を書けばいいよ」

アルフォンソの手元には、今日の午後配られる卒業パーティーの案内がある。



ずっとずっと、入学した時からエリザベスが好きだった。

ふわふわと揺れるキャラメル色の髪。

晴れの日の空を映したような水色の瞳。

アルフォンソの胸元までしかない小柄な体。

友達に向けて笑う笑顔がまるでひまわりのようで一目ぼれだったと白状した時には、オリヴィアに笑われた。

お前にはその笑顔を向けてくれないのにね、と。

実際その通りだ。

僕は次期王配第一候補として、エリザベスに想いを告げることはできない。

唯一できるのは、クラスメイトとしてテストの点数を張り合うだけ。

たったこれだけ。

でも僕が1位をとれば、悔しがった顔を見せてくれる。

その顔は僕にしか見せない顔だって知っている。

いつか笑顔も泣き顔も怒った顔も全部僕に向けてほしい。

その想いだけを胸に、この卒業パーティーにかけている。

どうか、この想いが君に届きますように…





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