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第1話 Vtuberになるってよ

「先輩、私Vtuberになりたいです!」

「はぁ?」


 そんなことを俺の家に入ってきてそうそうに言ってくるやつの名は天野雪あまのゆき。俺の中学の頃の後輩だ。


 セミロングに艶のかかった綺麗な黒髪と人形のように整った顔立ちが特徴で、スポーツ万能、頭脳明晰。


 神様がバランス調整をミスしたんじゃないかと思うぐらい出来の良いやつだ。


「何でいきなりそんなことになったんだ?」

「いやー、少し前に見てからハマっちゃってですね、なってみたいなーって思ったんですよ。友達曰く私声良いみたいですし」

「そうか、そうか。よかったな。用件はそれだけか?それじゃあ帰れ!」


 雪の自慢に少しイラッときた俺はさっさと話を終わらせて帰らそうとする。


「ちょっと待ってくださいよ!何でわざわざ家まで来た可愛い後輩を帰らそうとするんですか!」

「いちいち自慢すんな!それに、話終わったんだから別に良いだろ」

「実際可愛いのに何で言っちゃダメなんですか!というか、話も終わってないですよ!」


 どうやらまだ要件があるらしい。いい加減帰ってくれると嬉しいんだが。(←雪ちゃん訪問から現在3分)


「それで、続きは?」

「あ、それはですね、先輩Vtuberになりませんか?」

「は?やだよ。なるわけないだろ。」

「即答!?いや、何でですか!」

「逆に何でなると思ったんだよ。なるわけないだろ普通」

「まぁ、私可愛いですからOKするかなー、って」

「何でお前が可愛いとOKするんだ……。するわけないだろ。……というか、何で俺が必要なんだよ。1人でやれば良いだろ」

「あー、それですか。確かに最初は私もそのつもりだったんですよ。1人でやってほどほどに人気を出そうかな、って。幸い私は天才なので失敗するはずがないですし」


 それが当然のように言いきる雪。 実際こいつは天才なのだが……、なんかこういう風に言われるとムカつくな……。


「しかしですね、私はある重大な問題に気づいてしてまったのですよ」


「重大な問題?」


 いきなりトーンが低くなった雪の声に思わずおうむ返しで聞き返してしまう。ここまで真剣ということはそれなりの問題なのだろうか。


「はい、それがですね……最初の方って、視聴者ほとんどいない状態、最悪誰もいない状態じゃないですか」

「おん」

「そんな中、一人で喋り続けなければいけないんですよ?どう思います?」

「……どう思います?って、そりゃ、……当たり前だろ。というか、企業勢じゃない限りほとんどそんなもんだろ?」

「たしかにそうなんですけど!できると思ってるんですか!?私はそんなメンタル持ってませんよ!」


 いや、知らんがな。というか……え?それだけ?重大な問題ってそれだけ?身バレの心配とかじゃなくて?……全然重大じゃないじゃねーか!こいつ、ただ道連れ要員欲しいだけかよ!


「ってことで先輩、私と一緒に二人でチャンネル作りましょう。そうすれば、いつも通り喋っているだけでよくなります」


「誰がやるか!!」


 こいつの道連れになるなんてごめんだね。勝手にやってろ。


「というかそんな問題だったら、企業のオーディションにでも応募しろよ。お前なら受かる可能性は十分にあるだろ?」

「いやー、なんというか、その…仕事にしたくないというか、あくまで趣味でとどめておきたいというか……」


 ……なあ、こいつ本当にやる気あるのか?


「はぁ〜、じゃあ、やめとけ。そんなんじゃどうせ続かない。ネットに黒歴史をさらして終わりだ」


 ……それに俺もやりたくないしな。


「んー、でも、もう絵は届いちゃってますよ?」


 そういって雪はスマホの画面を俺に見せてくる。え?それただの事後報告じゃね?


 スマホには雪によく似たアニメ絵の等身が表示されていた。碧色のドレスを纏い、背中から妖精の羽のようなものが生えている。青色の髪と不自然な胸部の出っ張りを除けばまんま雪だ。


「へーお前……、胸盛ったな?」

 

 俺は現実の雪の垂直な胸部を見ながら言う。


 さっきのとはかなり違うと思うが……。


「うるさいですね。ちょっとですよ。ほんのちょっとですから」


 対して雪は俺の質問に少ししかしていない、と弁明をする。……果たしてそれは弁明になっているのか。


「まぁ、それなことは良いんですよ。あとはこれです!」


 そう言いながら雪がスマホをスクロールさせる。すると、先程とは違うキャラクターが画面に表示された。色鮮やかな妖精とは一変し、上から下まで黒一色。黄色と赤のオッドアイを有し、中二病を体現したかのような存在だった。ほら、あのル●ーシュみたいなやつ。


 心なしか俺に似ているような気がするが……、気のせいだろうな……。


「……なぁ雪。……これはなんだ?」

「ふっふっふっ、どうですか!これは私監修の元デザインされた先輩ですよ!かっこよくないですか?」


 ……しっかり俺やんけ。

 ……というかこいつ、本人に確認とらずにイラスト頼んだってことだよな。……イカれてやがる。


「何で勝手にイラスト発注してんだよ!やる、やらない以前にそもそも俺に許可とってないだろお前‼︎」

「だから今取ってるじゃないですか。」

「それは許可を取るとは言わねぇーんだわ!というか、もっとノーマルなデザインにしろよ!なんでこんな痛いやつなんだよ!」


「でもかっこいいですよ?」

「お前の判断基準はかっこよさしかないのか?」


 確かにかっこいいがそう言う意味じゃないんだよな〜。


 しかし……、これでやらないという選択肢がなくなってしまった。流石にイラストレーターさんに書いてもらったのに使いません、は俺の気持ち的に許せない。


 というか、やるんだったらもっと普通ならキャラが良かった…。なんでこんな痛いたしいキャラに……。いや、まぁ確かにかっこいいよ?かっこいいんだけどさ……。


「いやー、すいませんね~。でも、どうせ先輩ここまでしないとやってくれないじゃないですか。しょうがないです」


 ニヤニヤしながらそう言う雪。


 何にもしょうがなくないんだが?


 そんなこんなで俺は後輩と一緒にVtuberをやることになってしまった。


 まぁ、どうせ人気が出るわけでもないんだし、すぐ飽きるだろう。俺は天才の雪がいるという現実から目を背け、自分に精一杯そう言い聞かせるのであった。


面白いと思っていただけたら『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!

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