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叙爵式

「スタンピードを収めた褒章が決まったから、バースデートーチを採って来てくれ」


仕方なくメリエレさんファンクラブと一緒にバースデートーチを採って来た。

 皆にはクロウさんのスケッチを手伝ってもらった3日間の指名依頼の支払いが遅れている。ポーション代として500、バースデートーチ代として5000。一人に公用金貨7000枚支払うことにしたら、今回の分だけでいいと5000枚返して来た。

 よく聞くと魔蜜の分が、頭割りで支払われてメリエレさんファンクラブはお金に困ってないらしい。一人公用金貨47億枚くらいもらえて、ヘキサゴナルに旅行に行きたいらしい。いいよ。連れて行ってあげる!


とりあえず今日の叙爵式が終わってからだ。

 父上とルティーナ様と一緒に宮廷に行くとジロジロ見られてやな感じ。ファインさん達と合流して宮廷見物してると、また、ローゲンツ公爵親子が、来て三文芝居を始めた。


「父上、何か匂います。何の匂いでしょうか?」


「下々の者の匂いではないか?あちらからプンプン匂って来る。気分が悪い!こちらに来なさい」


メリエレさんファンクラブは気分を害していた。


「鼻が悪いんだね、パフュームバタフライの香水付けてるのに解らないなんてよっぽど、だよね」


私がそううそぶくと父上に軽くゲンコツされた。


「そういうはしたない噂話は自分の品を下げるから止めなさい!ルークシード」


「申し訳ありませんでした!父上」


父上、私を叱ってるふりであの親子のことディスってるね?

 

「ルークシード様、最近パフュームバタフライは採取しないんですか?」


「それが、居ないんだよね。切り取ったみたいに綺麗にサッパリと。魔獣に食べられてるのかもしれないね。香りがいいから」


思わず反射で答えて振り返ると、精一杯のおめかしをした平民の青年たちがいた。


「お願いします!パフュームバタフライを採取して来て下さい!工房がつぶれそうなんです!」


「お願いします!頼れるのが貴方だけなんです!」


「……一応、採りに行くけど期待しないで」


工房さん一行が去ると今度は栞作家氏が来た。


「幻惑蝶を採取して来て下さい!全財産捧げます!」


「ん?幻惑蝶?初めて名前聞くけどどんな蝶々?」


「揺らめく炎みたいな、見る角度で色が変わる宝石のように美しい蝶です。多分、新種だから、名前が決まってなかったんだと思います」


「あ!魔蜜に寄って来た蝶々か!わかった!依頼料は栞が売れてからでいいよ。獲れるかどうだか心配だけど、ね」


「何?!キミ、魔蜜が獲れるのかね?!ぜひとも採取して来てくれ給え!公用金貨100億枚払う!」


「私は1000億枚払える!」


「る、ルークシード=クロスディア!魔蜜?!魔蜜と言ったか?!私たちは10兆億枚支払う!」


「ローゲンツ公爵閣下もお好きなのですね。いいですよ。採って参ります。明後日までに」


ファインさん一行がうなずく。サウスさんにも依頼出しておくか。行きたいって、言ってたし。

魔蜜を採って来る依頼を40件くらい引き受けた。本物のお金持ちは、贅沢するときはとことんらしい。量は様々だったが、皆店で売ってるサイズのハチミツの瓶くらいが欲しいようだ。だいたいそのくらいで公用金貨100億枚が相場らしい。特殊な調味料の店を商ってるメイラー=ダック伯爵が教えてくれた。

ダック伯爵にはそのサイズを5つ注文を受けた。

そんな中での叙爵式。


ファインさん達には一人公用金貨1枚づつ。名誉市民として表彰されてファインさん達は苦笑い。


「ルークシード=クロスディア!そなたは、たった一人で幻惑森林のスタンピードを収めた功績を称え男爵に叙する!」


「ありがたき幸せ、光栄に思います」


そして金品ナシ。あり得ないよ!バラムさんに言いつけてやる!

胸に勲章を付けられてスンとしてると、父上と目があった。人差し指で口の両端を上げている。笑えと?

ニッコリ笑って下がる。

さてと、帰るか。

父上とルティーナ様と転移で屋敷に帰ると屋敷が何か淋しい。


「あ、調度品が無いんだ!何で?」


「引っ越しだよ。男爵に相応しいお家に住まないと空気が読めない人になっちゃうからね」


ルティーナ様が当たり前のように言うのを聞いて私はまたスンとした。


「父上、屋敷の代金は私が支払います。いくらでしたか?」


「それがな、言い値で売って下さるそうなんだ。新しい使用人棟も付いていて2束3文で買えるような屋敷ではないんだ!」


困ってる父上。新鮮です。


「ルーク様ぁ!一カ所に纏めときましたからアイテムボックスにしまって、ぴょいっと新しい屋敷に転移して下さい!貴族街に入って5軒目の屋敷です!ルメリーさんが先に行ってます!」


キャサリンはムダに元気だ。

 ダンスホールに行くと足の踏み場もないぐらいの荷物。4回に分けて転移した。

当たり前だが、瀟洒だが小さな男爵邸には全部入らない!

 ルメリーさんが調度品だけ売らず絨毯やカーテンは売り飛ばした。そして新しい物を買い屋敷を片付けてたら、もう真夜中だ。

 有無を言わさず父上達と同じベッドで寝る。まだ、私の部屋がないのだ。

翌朝早く起きた私を父上とルティーナ様が見送り父上達の寝室を出た。自分の部屋を探す旅に出るとダンが扉の前で待ってた。

私の部屋は、以前の3分の1の部屋だったが、以前の屋敷より手がかかっている。


「ルメリーさんって、起きてる?」


「多分、起きてらっしゃると思います。その前に着替えましょうね?ルーク様」


「幻惑森林行くからボロい服でお願い」


「また、あの危ない森に行くのですか?!」


「ダン~、ちゃんと元気で帰って来るから~」


ダンが幻惑森林を良く思ってないのは知ってたが、怒り出すほどだとは思わなかった。


「あの森に行くと、靴まで、ボロボロでしょう?!ソレ用の靴を買ってきて下さいませ!」


そんな理由か?!私を大切にしてるからとか考えてた私のバカ!

 ダンに靴を買うことを約束して平民でもボロい服に着替えてルメリーさんがいるゲストルームを訪ねると、まだまだ元気な徹夜明けのルメリーさんが出てきた。


「あ!その格好は幻惑森林ね!で、何の用?」


「この屋敷の代金を決めて支払って来てくれないかな?これ、虹証」


「あら!ランクアップ出来るわよ!ここの下に赤線が入ったらそう!じゃ、魔力流しといて」


魔力をあらかじめ流しておけば他人でも使える機能付き。思わず残高を確認して凍結した。ルメリーさんが私の視線を追いかけて、それを見て素っ頓狂な声を上げる。


「6300兆億枚?!どんな悪い事したの!!言いなさい!」


襟を絞められてタップすると離してくれた。


「多分、新種の蝶の落札価格、だと思う。栞作家さんに全財産捧げますとか言われたし」


「へぇ、捕って来たら見せて!」


「それくらいお安いご用です。じゃ、行って来ます!」


カケイ冒険者用品店に行くと私よりボロい服を来たサウスさん達がいた。


「早速誘ってくれて、ありがとうな!さっきメリエレとそこで会った。瓶か、壺買っとけって、言われたけどどのくらい買う?」


「今日は幻惑森林内をうろうろして魔ミツバチの巣を2~3個回るから大きな壺7つくらいかな。私は蝶の採取頼まれてるから瓶が必要だけど、ね。あと、デススパイラルスネークの小さいヘビがたくさんでるから、狙い目。革がお財布とか、バッグになるの。工房さん大喜び。倒し方はシッポ切って血抜きして討伐するの。首は毒袋があるからいい稼ぎになるよ?首切ったら、商品としてダメ」


サウスさん達は注意事項を聞きつつ7つの壺とガラスの瓶の大きなのを幾つか選んだ。私はガラス瓶の小さいのをたくさん買い壺を2つ買った。

パフュームバタフライを捕まえることも考えたら、大きな瓶も5つくらい欲しい。買うか!


「それだけしか買わないのか?ケイトス」


「おはよう!メリエレさん。もういっぱい買ったよ!今日は、夜も採取するけどつきあう?」


「異常耐性ポーションの数によるな。多分夕方には無くなる。スマン」


「ふふふ、い~よ!また今度ね!」

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