蝶々のパーティー
口止め厳戒令発令中に蝶々のパーティーへの打診があったので、幻惑森林に行って珍しい蝶々を取ろうと腐心して見たがうまい具合には行かなかったので、一匹づつ模様が違う小花蝶を捕ってお土産にしたら、同じことを考えた少年がいて、小花蝶のしおりを持ってきていたので、出したのはブルーチーズだったが、旦那様の好みにストライクしたらしい。
下にも置かぬもてなし受けた。
帰りにベーコンを厨房に届けてカルトラの屋敷に転移してその日は、部屋で休んでいたが、翌日、蝶々のお嬢様が私を訪ねて来た。
「お兄様、洞窟ではありがとうございました」
あの中にいたのか!
「何のことでしょう?覚えが悪くて申し訳ありません」
ぷくっと頰を膨らませて蝶々のお嬢様は私に蝶々を出すよう命じた。
「お兄様がわざわざ幻惑森林に行ったのの調べはついております!さあ、お出しなさい!」
ぺしぺしと、持ってる扇を畳んでテーブルを叩く様は可愛らしすぎる。お母上の真似だろうか?思わず笑ってしまった。
「何でノイジーの事を笑うのです!プンプンです!」
小動物みたいで可愛いし、いやされる。
笑ってしまったお詫びに小花蝶をアイテムボックスから出すと目を見開き小花蝶の入った瓶を大切そうに抱きしめる。
「お嬢様の物です。もっと違う蝶を取りたかったのですが、取ろうと思って行くといつも獲れないんです。笑ってしまったお詫びにどうぞ。ご飯を食べませんか?ウチのシェフもなかなか美味しい物を作りますよ?」
「食べる!」
◆○◆○◆sideノイジー=ルルー
初めてお会いしたのは、裸んぼでだった。
お兄様は鬼神の如き強さで私たちを救って下さった。助けてくれたのが、蝶々のお兄様と知って早速パーティーに招いたらチーズをくれた。確かに美味しいがこれじゃない!
お父様が喜んでただけじゃない!怒ってセーブルにクッションを投げて八つ当たりしてると、シェフのランドルが教えてくれた。
「蝶々の兄様は、昨日幻惑森林に行ってたらしいぜ。多分、他の子と贈り物が一緒だったから、ブルーチーズをくれたんだろうよ。旦那様はその優しい気持ちを労ったんだよ」
「じゃあ!お兄様は蝶々を持ってるって、ことね!採りに行くわ!」
「ああ?!お嬢?!そうじゃない、そうじゃないんだよ!」
ランドルが何か言ってたけど、騎士を8人も連れていくし、大丈夫よ?
お兄様は真っ白な髪に紫色の瞳の神秘的な方で、ホントに話したり笑ったりするのか、心配してたけど、何が可笑しいのか私が話すだけで噴き出したのよ!
レディーに対して失礼だわ!
まあ、小花蝶をたくさんくれたから、許してあげた。
幻惑森林の危険で楽しい採取作業の様子を私にもわかるように教えてくれるお兄様。
騎士達も興味深く聞いて笑って、すっかりお兄様のファンになってしまった。
お昼ごはんどころか、晩ご飯までごちそうになってしまった。
お兄様は送って行くと言って騎士達や馬車ごと私の屋敷に転移してくれた。
「父上を心配させてはいけないよ。ではね」
お兄様は紳士の中の紳士です。何でドキドキするのかしら?
お父様が何か言ってたけどぼんやりして聞いてなかったわ。ああ、お兄様!今度はどんな蝶々を捕ってくれるの?
◆○◆○◆sideペペロミア=グランツ
「今日のノイジー様は、シェフのランドルが口を滑らせてケイトス様が蝶々を持ってると言ったのでケイトス様の屋敷まで蝶々を貰いに行ってました。ちょうど昼だったので昼食に誘われて食べたら、美味しくて、ケイトス様も話し上手で幻惑森林のことを面白おかしく話して下さりお茶の時間になり、お菓子がまた美味しいのです!ランドルが修行に行っても不思議じゃないくらいに!レシピを買って来ました!
お嬢様が冥府蝶を捕まえた時の話をリクエストして、幻惑森林の夜の生態系に聞き入ってる内に夕食の時間になりいただいて、転移で送られて今になります」
旦那様は煙草をくゆらせながら、私に問いかける。
「ペペロミア、お前たちで、幻惑森林で蝶が狩れるか?」
旦那様には悪いが無駄死にはしたくない。
「無理です。ケイトス様は精神魔法や幻覚剤、毒に対する耐性が他人の何倍も高いそうです。それでも足りないくらい強い幻覚作用を見せる魔獣も出るそうです。他の冒険者達は異常耐性ポーションなるものを飲んでやっと2時間、ケイトス様と対等な能力になるそうですが、虫系魔獣を多く討伐すると幻覚作用が強くなり、方角を見失うそうです。
そのポーションの原価が公用金貨100枚だそうです」
「幻惑森林は稼ぎの率が悪いな。ノイジーに近付けたくない男なのだが、ものすごく良い奴なのだよなあ!身分がもっと高ければ愛妾でもよかったのだけどな。さすがに、男爵は無い!」
「男爵に決まったのですか?」
「決まったのだよ。あの屋敷から引っ越したら、後が追えぬようにしておかねばな!」
なるほど。男爵風情には過ぎた屋敷ですからね。しかも帝国での身分は冒険者。
こちらは身分は無いとは言え、希代の豪商。
総資産は数えられない。
ノックの音がした。
この時間に入って来るのはオークションに行ってた家令のガストンだけだ。
私がドアを開くとガストンが滑るように入って来た。
「新種の蝶を手に入れて参りました!出品者はケイトス様で、スタンピードの折に偶然入手出来た物のようですが、とても美しいので、落札価格がいつもより高かったです。栞作家氏がなかなか諦めてくれないほどの美品。特と、ご覧あれ!」
赤にも緑にも見えるアレキサンドライトのような、蝶だった。
「これは、美しい!一つしか買ってこなかったのか?私も欲しい!」
するともう一つ瓶が追加されてそちらは青から橙に見える一品だった!
「同じ色は一つとしてありませんでした!私が競り落とせたのはこの二つだけでした!悔しゅうございます!標本作家が、ローゲンツ公爵家を財布代わりにしていたので、あまり、目立つのは得策ではなかったのです」
「良くやった!ガストン。ちなみにいくらで競り落とせた?」
「緑から赤の物が200兆億枚、青から橙のものが10兆億枚でした。他の蝶は1200兆億枚で5つ落札されてましたから、ケイトス様はしばらくは長者ですね」
「屋敷の一つを手放そうかと思う。貴族街に入ってすぐのあの倉庫にしてる屋敷だ。ケイトス君に買わせて見せよ!いくらで売っても良い。ガストンに任せる」
「男爵には良い屋敷ですね。安くたに売りはしませんよ!」
「確か使用人がばかみたいにいただろう?使用人棟を作ってから売りつけよ」
「ラムズ公爵家からの使用人達を引き取って面倒見てるだけでも負担だろう。ウチの屋敷に十数人程引き取ってやれ。最近掃除が雑になっている」
「ソレは申し訳ございませんでした!」
「侍従達は良くやってる。セーラの躾けが悪い!女官長から平に戻す!元ラムズ公爵家の女官を頭にすえよ」
「それはひと悶着あるかと……」
「合っても良い!退屈しのぎになる」
「「旦那様…」」
今の所、旦那様の退屈しのぎに勝てたのは、ガストンと私、最近では、ケイトス様位な物だ。
ケイトス様はまだまだ試されるだろう。ノイジー様が蝶々集めに飽きるまで。