敏腕助手
ジェラルドさんに連れて行ってもらったルメリーさんちは敷地内に何棟も宿舎が建っていた。
ルメリーさんが玄関ホールに姿を見せた瞬間私は土下座していた。
「小麦粉を忘れてました!申し訳ございません!」
「チーズとベーコンはあるのね?」
「はい!全て捧げさせていただきます!」
「倉庫に転移して、ジェラルド」
「俺も巻き添えかよ」
ブツブツ文句言うわりには、ルメリーさんに従ってる悲しい男ジェラルドさん。
倉庫は屋敷が入りそうな程大きくてチーズを保管する部屋に通されて空になってる棚にブルーチーズをありったけいれたら、ルメリーさんが叫んだ。
「いやぁああああん!ブルーチーズ様じゃない!!こんなにたくさん!許してあげる!小麦粉ぐらい。普通のは?」
「売り切れてました。すみません」
「どうしたの?やたらとウッカリじゃない。悩みがあるなら聞いてあげる!」
「ジェラルドさんが解決して下さいました。ベーコンどこに出しますか?」
「ベーコンはこっち~!」
部屋によって温度が違うっぽい。この倉庫、デキる!
ルメリーさんに幻想庭園の話が聞きたいと引き止められたけど、明日の朝一番でまた、ヘキサゴナルなのだ。
「ジェラルドさんから聞いて下さい!」
「あ?!ケイトス?!俺を売りやがったなぁ!」
「おやすみなさい!」
即座に屋敷に転移して寝た。
そして翌朝一番でクロスディア魔石販売店改め幻蝶屋に行くと店長達に囲まれた。ナーテさんから買ったペンダントトップと指輪を出すと早速宝石が良くないのに気づいたヘブンズマンティス達に幾らだったか聞かれて、投資したのだと話したら納得してくれた。
「で、いくら?」
「公用金貨25枚」
「「「「「「「「チッ!」」」」」」」」」
コワッ!
「次の仕入れの予定は解りません。懇意にしてた工房の一つと取り引きを辞めたので不定期の仕入れになります」
「ビーズアクセサリーを仕入れられませんか?」
「頑張ります!次に帝都に帰ってくるのは10日後になります。たまには店を閉めてゆっくり休んで下さいね。これ、サロンでお茶でも飲んで下さい」
店長さんに公用金貨1枚渡して屋敷に転移した。
玄関ホールにはヒューイット魔法建築師の残党15名と何故かハンナとルメリーさんが荷物をいっぱい持っていた。
「おはよう、昨日はよくも逃げたわね?ゆっくり付き合ってあげる!」
「いやいや!仕事あるでしょう!?」
「お祭りあるんでしょう?見たいな!」
クソー!ハンナまで巻き込んで!ルメリーさんめ!覚えてろよ!
「ちょっと朝食を食べながら待ってて下さい!仕入れしてこなきゃいけないんです」
見送りに来ていたハッシュが厨房に走った。
ルメリーさんとハンナが付いていくというので、革工房への案内を頼んだらファインさんちだった。
見るからに廃れた工房だったが、製品の質は高い。ルメリーさんに目利きしてもらって全部買い付けた。ギルドタグで支払ってファインさんに伝言を頼む。ブラッディウルフの皮をなめした物を1000枚指名依頼した。
アイテムボックスに革をしまって、冒険者ギルドに行きブラッディウルフを1000頭討伐依頼を出す。依頼者はファインさんにした。お金も支払った。ちょっと色を付けたので依頼は奪い合いになった。
私たち3人は酒場で朝食を食べながらそれを見ていた。
「いつ気付くかしら、Aランカーにつき、っていう注意事項に。ホホホホホ」
「受け付けで言われてからじゃないかしら?ホラ!」
「見つけたぜ!白王子!」
私は椅子から引っこ抜かれロマン病罹患者の指輪をした、精悍な青年に抱っこされていた。
「誰?何の用?」
「怒るなよ!俺の名前はサウス!チーズありがとうな!婚約者が喜んでた。金渡すからまた買ってきて!ベーコンも、滅茶苦茶うまかった!とりあえず10個づつな?」
公用金貨2枚渡された。お財布にしまう。
「10日後ね。私の名前はケイトスです。指輪買って下さってありがとうございます!」
「気に入ったから買っただけよ!ネックレスも頼むな!」
「は~い」
「おう!そうだ!そう言えば金仙瓜の依頼が次にあったら1枚噛ませてくれよ!俺、魔法使えないから役に立つぜ!」
「う~ん。メリエレさんが良いって言ったらね。私の勝手な判断でこれ以上犠牲者増やせないし」
「ああ!ゼロの件か。ありゃ、ケイトスが悪いんじゃない!メリエレに言っといてくれ!またな!」
嵐みたいな人だった。
私たちは朝ごはんを食べ終わると屋敷に転移してホールに集まってた魔法建築師と手をつなぎ銀冠山脈を越えバフォア公爵領の幻想庭園まで一気に転移した。
荷物を預かり雑魚寝部屋へ放り込む。
北門の職人村に転移して今日は元気なマーズさんに任せる。もう店が3軒と職人棟が2棟建ってる。
「おい、ケイトス!リンディーさんはどこだ?!」
「うわあ!聞いたハンナ!」
「きゃあ!ステキ!」
何で喜んでるの?2人とも。
「リンディーは帝都に里帰りしてます」
「いつ、今度は来る?!」
「祭りの前日に来ますよ!出来上がった職人村と宿場町を祭りの時に歩くの楽しみにしてましたね」
「リンディーさん誰か誘うのかしら?」
やめて!小芝居!ルメリーさん!!
「ウォオオオーーーッ!!貴様らやるぞ!」
「ふふ、男って馬鹿よね?ハンナ」
「でも、時々格好いい!」
ハンナ、それは家族のことだよね。
「さて、何を手伝ったらいいかしら?」
幻想庭園の事務局に転移すると、グッタリしていた男達がいきなり、紳士になった。
美人ってスゴいね。
「ルメリーさんにメリエレさんがやってた事務処理をして欲しいんだ。あと、ハンナには露店の売り子をして欲しい。私は銀山にメリエレさんと採掘に行ってくるから、2~3日戻らない」
ナジムさんがあちこちに伝達を飛ばし始めた。
「採掘やったことあるのか?ケイトス」
「全然ない!」
いざとなったら岩を砂にして銀だけ取るから良いんだよ。
「4人採掘専門の奴隷やってたヤツらを連れて行け。いつから行く?」
「お昼から行く」
「クレイビー男爵領の銀山入り口で待ってる。リーダーはガリアって言う身長の低い男だ。入山前に公用金貨1枚づつ渡してくれ。
それが報酬になる」
「解りました!ありがとうナジムさん」
ルメリーさんは早速事務処理のオーガになっている。処理能力がエグい。
ハンナと手をつなぎリダル商会の露店に行くとメリエレさんが商談中で会計がなかなか進まない。私はメイドさん達に値段を聞いてから服を畳み渡すのを繰り返す。
昼前には終わったので、片付けをメイドさん達に任せて商人の食堂で食事して、自分の部屋に転移して冒険者御用達の防寒着を着て寒さに備える。
メリエレさんが冒険者の服を着てると違和感ハンパない。
クレイビー男爵領の銀山入り口まで転移で行くと4人の筋骨たくましい男達が衛兵に囲まれて待っていた。
「初めまして、ケイトスです。今から報酬を渡します。ガリアさん、お疲れさまです!」
「先に渡して逃げたらどうする?」
「ナジムさんを拷問します」
「プッ!逃げられねえな!ユーゴ」
「あっしは逃げられますぜ。兄貴」
「じゃあ、ユーゴさんは本人を拷問」
「ユーゴよかったな!かまってくれて。俺はレイド、よろしくケイトス」
「俺は斥候のゼン。よろしく」
一人一人の革手袋の上に公用金貨1枚置いて早速中に入る。虹証を照合する機械にスラッシュして、身元確認されると、何故か衛兵達皆にハグされる私。
「「「「「「「「お帰りなさいませ」」」」」」」」
名前も知らない衛兵さんにふいに言われて泣きそうになる。
「ただいま!」