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再びの最初から③

再び、裏庭の職人棟まで転移すると、部屋のドアの前にズラリと立つ職人さん達。手前から入って見ていくが、何だコレ?という作品が多い。ほとんど買わずに最後の銀細工職人までやってきた。


「あ、まあまあ、いいかも」


後ろにはナーテさんが用心棒代わりについてきてる。

敢闘賞ということで銀貨3枚を渡して労った。

まだ、買うまでの作品じゃない。


「あの~。公用金貨くれるんじゃなかったんですか?」


「銀貨3枚返してください!自分がそんな値段で売れる腕だと思ってるんですか!考え違いです!」


青年は真っ赤になり、引き下がった。


「でも、貴方はこの職人棟の中では良い腕しています。慢心せずに研鑽して下さい。

もうすぐしたら、近くの職人村で安く素材を買える様にしますから、たくさん作って売って腕を磨いて下さい」


ナーテさんに二の腕を突かれた。


「銀を安く買えるのか?」


「輸送費用が無いくらいだけどね」


「職人村はどこに作るんだ?」


「北門出てすぐ。今作ってる。安い食堂と飲み屋も作るからご利用お願いします」


「助かる!市場の食事高いしな!君は何て名前?」


「え?!俺?ミリスだけど?」


「俺の弟子にならないか?俺はナーテ。元紫証の銀細工職人だ。今は橙証だけどな。ミリス君には指導者がいた方がいい!私は昔ながらの職人だから、作る物は古くさいけど技術は教えてあげられる。引っ張ってあげるから上に上がっておいで!」


「え?!元紫証だから、買い取りの値段よかったの!!早く言えよ!チビ!ああ、恥ずかしい!勘違いもいいとこだよ!」


「腕がいいからだよ。紫証でも慢心してたら買わない。私はチビでなく、ケイトスと申します」


「ナーテさんはどんなの作るの?」


「これが最近作った秀作だよ」


圧巻の秀作だった。銀のバングルに付いてるトルコ石を花で頭を飾ったリザードが守っている美しい物で、ユニセックスなデザインなのがナーテさんにしては珍しい。

 ミリスはゴクリとツバを飲み込みナーテさんに体を2つに畳んで弟子入りのお願いをしたのだった。


ナーテさんはミリスの衣食住を見なければならなくなったので、何か徒弟制度のお得な事を考えてあげた方が良い。

3食タダ?うーん。何か違うし。それはそれでいいんだろうけど、あ!服をあげられるよ!


「ケイトス、いろいろ考えてるのはわかるけど着る物はちゃんとしたのが1枚あればいいし、出来れば素材を安く仕入れたい。何とかならないか?」


「お祖父様に掛け合って見るけどあんまり、期待しないで」


「直轄地の関係者?」


「遠い、ね」


「貴族なのか?」


「どこにでもいる田舎貴族だよ。じゃ、いろいろ動いて見るけど役に立たなかったらごめん」


お祖父様には、何かお土産を、あ!ブルーチーズがある!

正装に着替えてリンディーが髪を結ってくれた。リンディーたちも一番良い騎士服に着替えて王宮に転移した。


「約束はないのですが、お祖父様にお会いしたくて。珍しい食材が手に入ったのです」


門番の近衛兵にそういうと慌てて謁見の許可を取りに行った。


「礼拝堂でお待ちください!」


礼拝堂まで3人で転移するとリンディーとコリンズには入れないから入り口で待ってもらう。礼拝堂に入るとナサニエル司祭様がいて私を抱っこする。


「少しは重くなったか?陛下はもうすぐ到着する。一人で来たのか?」


「いえ、3人で。外で待ってます」


その時扉が開いてお祖父様が走り込んで来た。


「ルークシード!何かあったのか!」


「お祖父様にお願いがあって参りました。これ、ウチの市場で売ってるブルーチーズです。後で召し上がって下さい」


「おお、すまぬな。ありがたく受け取っておく。市場は盛況のようだな!私も鼻が高い」


「その市場の事で来たのですが銀を安く仕入れられませんか?」


「「自分が掘ってくるしかない」」


脳筋な解決策だった!


「直轄地への立ち入り許可書を書いてやるから、自分で掘って来なさい。掘ったのの半分は物納だから、探査して掘るんだよ。それから、1カ月に1度は掘っても、掘らなくても公用金貨100枚銀山事務局に収めなきゃ行けないから覚悟して掘ろうね!」


「え?!じゃあほぼ毎日掘らないと損することに?」


ナサニエル司祭が苦笑して頷く。


「安いことに近道はないんだよ。許可書取るだけでもホントは審査が行って大変なんだぞ?陛下に感謝するように!」


でも、どっちかというと損する制度だよね。


「入山料とかは?」


「採掘した半分の銀を収めることがそれに当たる」


お祖父様は書き終えた許可書を私に虹証を出させると触れ合わせて登録を終えた。


「これで虹証を見せるだけで直轄地に入山が可能になる。寒いからちゃんとした防寒着を着て行きなさい。他にも困ったことがあれば相談に来なさい。いつでも待っておる」


「お祖父様……ベーコンも付け足しておきますね!」


「うむうむ。食べるのが楽しみだ。ありがとうルークシード。泊まって行くか?」


「申し訳ありません。すぐに帝国に行かなければならないのです。お許し下さい。また、お土産を持って参ります!」


「ただ顔を見せるだけで良い。たまに来ておくれ。では、元気でな」


「お祖父様も、お体に気をつけて下さい。それでは失礼します」


礼拝堂から出るとコリンズとリンディーが何故か私を睨んできた。


「ルーク様はやんごとなきお生まれのようで!」


「何故言ってくれなかったのですか!」


「私が偉いわけじゃないもの。言って何かの足しになる?そんな利用方法イヤだし!」


「「それでもいざというときの為に聞いて置きたかったです!」」


「はあ~。仕方ないなあ。母上が陛下の娘だっただけだよ。母上は私が2才の時に病気で亡くなったんだ。だから、お祖父様に可愛がってもらってる。さ、ジェラルドさんと合流するよ!」


転移して明けの星亭に行くと晩ご飯をのんびり食べてるジェラルドさんを1階の食堂で発見した。私達もついでに食べる。


「王都の屋敷に行ったらうるさい獣人の女に捕まってケイトスの所まで連れて行けって、しつこいから、こりゃ、ろくな用じゃないと思って無視したんだが、よかったか?」


「ありがとう!実は……」


こんな耳目のある所で話す事では無いがちょっと腹が立ってた私は洗いざらい今までのデルフィ工房への支援とその失敗を語っていた。


「うわぁ、ものすごい恩知らずじゃねぇか!追い出して正解だぞ」


周りの商人達が聞き耳を立てていた。話が終わると然り気無く立ち去って行く。

気が早い者は今から商談に出向くらしく宿から出て行った。


「何だかなぁ、皆。そんなにすごい店なわけ?」


「デルフィ工房があったから隣の領には観光客が寄っていくぐらい、すごい店だったけどすごい店すぎて、仲間外れにされてたんだよね」


「あの自己チューの小娘が代表者じゃまとまる物もまとまらないさ、さて、帰ろうか?」


ジェラルドさんって、年若いのにこなれてるな。サラッと悩みを聞き出すなんて、私なら面倒で出来ないな。

 宿代と食事代を清算して宿から十分遠ざかり銀冠山脈越えの転移。

 カルトラの冒険者ギルドまで1度で転移出来るようになった。

 解体場に行きイエールさん達にお土産のブルーチーズとベーコンを渡すと勝ちどきを上げていた。そんなに喜んでくれてよかったと、思ってたらまた、バラムさんに呼ばれてるらしい。直接ギルマス部屋に転移すると、ジェラルドさんが今回の指名依頼の報告中だった。立派なギルマスの机の上にブルーチーズ5個とベーコンを10個置き、報告が終わるのを待っているとデルフィ工房のことまで報告している!慌てて止めた。


「私の失敗広めないで!」


「俺は聞きたい。ケイトスがどんな金の使い方してるのか興味深い」


報告は行われ、何故かバラムさんによしよしされてる私。


「契約書は金が絡むことなら友達同士でも交わしておかないと痛い目に合う。ケイトスは苦手だからな、そういうの。誰か側に連れてろよ?これ、全部俺がもらっていいのか?ルメリーに怒られそうだな」


「あ、小麦粉買って来るの忘れた!」

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