再びの最初から②
ほとんど1日ベッドの上で過ごしたら、気分は良くなったが、いろいろ考えるから機嫌はドン底に。
そこにコリンズが、いつもより一層胸を張って部屋に入って来た。
「あののっぴきならない馬鹿者ですが、リンディーが煽てて魔力切れまで働かせましたから、ご機嫌を直して下さいルーク様」
何したのリンディー?!
「馬鹿者は、リンディーが女だと思っていて、良い格好をしようと、一魔法使いを逸脱する行為ばかり積み重ねて、勝手に魔力切れで自滅しました!」
「女の子に間違えられて、リンディーが怒ってるんじゃない?」
「いつものことですから、自滅して行く馬鹿者を見て笑ってました。ところで私達の里帰りですが、いつになりますか?」
「明日の夕方だね。それまでに準備しておいて」
「お体の方は、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。元気が余ってる感じ!何なら今から仕入れに走れそう!メリエレさんどこにいる?」
「幻想庭園の事務所かと。ナジム様に呼び出されてましたから」
「ちょっと行ってくる。ご飯も食べたいし」
「着替えて行きましょう。商人達に侮られてはなりません」
コリンズが、支度をしてくれたが、どこのパーティーに行くんだよ!とツッコミたくなった。まあ、いいか。
事務局に転移すると夕食の最中でおこぼれに預かれた。
ナジム様は目元にぬれタオルを当てて口だけ休まず指示を出している。
「幻想庭園内の市場は小競り合いこそあれ、上手く運営されてますが、リオラの工房の荒くれ者達に何をさせるかが、問題になってますし、工房の運営が何一つ出来てませんからそれも懸案事項です」
「虹証出して、お金をあげる」
「そりゃ、楽しみですね。」
タオルを取って虹証を出したナジムさんに私の虹証を触れさせて公用金貨10兆億枚振り込む。ナジムさんが、何度も金額を確認している。ツバを飲み込み私に確認する。
「いいんですね?使って」
「まだまだあるから、ナジムさんに使い方は任すよ。足りる?」
「足りますとも!これだけあればいろんな手が打てます!」
「宿場町と職人村の建設費用は全部私が出すから安心して。明日の夜から翌日の昼まで帝国に行って来ます。留守を頼みます!」
「大丈夫か?無理してないか?ケイトス」
「今やらないで、いつやるんですか?」
「そりゃそうだけど、魔力切れ繰り返してると体が弱るらしいぜ。心配ぐらいさせてくれよ」
「人数運ばなきゃ何とかなります。革を帝国で仕入れて来ますから、革職人さんも集めて下さい。おやすみなさい」
「金があるなら、飛行艇を貸し切ってそれに乗せて帰って貰えばいい。連れて来るのにも金がかかるんだから、楽な方法を選べよ。おやすみ」
メリエレさんは、まだ頑張るらしく書類を整理してサインしたり、他の資料を探したりと忙しそうだ。ラプナーもその隣で同じようにしてるが、私と目が合うと1枚の地図を持ってこちらに来た。
「デルフィ工房の移転先ですが、この潰れたパン屋が良い物件かと」
「明日、魔法建築師を連れて直してくる」
「おいおい、お前たちそんなことまでしてやるのか?あの、頭の中が自分のことしか考えてないお嬢ちゃんに」
「もう、早く出て行ってほしいんで、手段は選びません!もちろんお金は貰いますしバカにされた分私たちが用意した何て言いません!」
「それでも甘いが、な」
「今まで私が稼がせた分全部私に返してもらうつもりで売りますから!」
「多少は面白いことになりそうだな。1口噛ませろ。その物件俺が売る!」
こうして、ナジムさんに仕掛け人になってもらうことに。
翌朝一番でラプナーが買い上げた王都のパン屋さんに転移した。
マーズさんに木材と共に任せて足りない材料をアリョーシャさんと仕入れてくる。
朝一番に起こされる業者さんの機嫌は大口取引だと解るとすぐに上を向いた。
ついでに職人村の建材も仕入れてるので損はさせて無いはずだ。
ガラス屋さんは設置に行かなくて良いのかと大喜び。魔法建築で作っちゃえばそんなこと関係ない。防音壁や、屋根瓦などを選んでいたらあっという間に昼になり、マーズさんから伝達でお腹が空いたとクレームが来たのでルティーナさんから聞いたまあまあの味のレストランで白身魚のフライをパンに挟んでもらって持ち帰る。
パン屋さんの煙突はもう無くなっていて、外観も随分変わっている。
木枠だけになったドアを開くとカウンターに突っ伏して寝ているマーズさんに私たちは思わず視線を交わした。
「お~い!マーズや!まだ死なれちゃ困るのだ!ハサミパンを買って来たぞ!起きろ!」
顔が上がって驚いた。土気色になってる!
「魔力切れですか!教会に行きましょう!」
「スマン。ワシは今日はここまでしかできんから、アリョーシャやってくれ。部屋の半分以上が厨房で改造するのに、手間がかかった。教会はいい。ハサミパンくれ」
「ああ、石窯が解体するのに面倒な上に魔力持っていくんだよなあ。幾つあった?」
アリョーシャさんから、ハサミパンを受け取るとまずワイルドに1口噛み千切り咀嚼してからマーズさんは片手を開いて見せた。
「5つもかよ!?そりゃ、死にそこなうわけだ!後は俺に任せとけ!」
マーズさんは頷くとパンを平らげカウンターの上に寝転んで寝た。
私はマーズさんを幻想庭園のゲストルームに
連れて帰り、橙証の銀細工職人のナーテさんがいる裏庭の職人棟まで転移した。
ナーテさんがいる部屋は覚えていたので恐る恐るノックする。
「ケイトスです。買い取りに来ました」
中からすごい勢いでドアが開いた。
「遅かったからもう来ないのかと思ってた!」
「一応検品します。お金はいくらですか?」
中に招かれて入ると今の今まで作ってたのか、作業台の上が楽しい。
「うわあ、綺麗!」
ナーテさんはちょっと得意気に鼻をこすった。
「今日は護衛は?」
「露店の警備してますし、これでも私強いんですよ?」
「プッ!わかった、わかった!そういうことにしといてやる」
信じてくれなかった…。ちょっとショック。
ナーテさんは手際良く商品を作業台を片付けてたくさん並べてくれた。
宝石を縁取るようにいろんな装飾が凝らされたペンダントトップは、300はある。
皆ペンダントトップなんか作らないから、いい仕入れになりそうだ。後は指輪。元紫証の職人さんの仕事って、個性があって、美しい。
「ナーテさんは女の子物が得意な職人さんなんだね」
「おうよ!女にこその銀細工だろ?男に作って楽しかない!それで卸値何だが、大金貨5枚でどうよ?」
「何でそんなに安いの?公用金貨25枚ね!」
「いいのか?型も古いし、宝石のランクも低い」
「きちんとしたお仕事だから、大丈夫!売って見せるよ!」
ナーテさんは私を捕まえて号泣した。
「資金があったら、ちゃんとした宝石が買えるでしょう?これを元手に頑張って!」
虹証を交わして部屋を出たら、職人さんに囲まれた!何と会話が筒抜けだったという。ベーコンとチーズ買って来たいから1時間後に来るのを約束して、チャトン伯爵領の市場に転移した。今日は雨でお客さんがあまりなかったらしく、全部買いすると安くしてくれた。
幻想庭園に戻ってヤコフさんを訪ねるとブルーチーズを買って欲しいと懇願された。
迷わず仕入れたが、普通のチーズの倍した。びっくり!厨房に幾つか差し入れるとロックとセームが小躍りしてた。
夜の食事が楽しみだ。