再びの最初から
昼に屋敷に戻ってヨランに40名程のお客様をもてなして欲しいと頼むと張り切っていた。
ヨランがお客様好きなコックさんでよかった。
シロッコさんとクロウさん家族をシルーランホテルから屋敷に移して、お土産を買いたければ付き合うと言うと美術館がもう一度見たいというリクエストにメリエレさんが幌馬車を出した。魔法建築じいさんズも行くらしい。
私は顔色が悪いから部屋で休んでろとメリエレさんに言われて夕方までぐったり眠った。
ナント市へ夕方に転移したら、何故か26人全員が支度している。
「ええっと、護衛費払えないとか?」
「グタグタ言わずにいいから連れて行けよ!」
まあ、いいか。さっきまで寝てたから魔力回復してるしな。
ヒューイットさんは他人の言うことをあまり聞かないタイプらしい。やな感じ。
じいさんズに指導させればいいか。
事務所を施錠したのを確認してカルトラの屋敷に転移したら、着くと同時に気絶したらしい。
目が覚めたら心配した父上が魔力を注いでくれていた。
ヒューイット達は魔法建築じいさんズに目から火が出るほど怒られていた。
「普通の転移魔法使いは26人もあんな距離運べん!それなのに面倒臭いから一度に運ばせただぁああ?!痴れ者めらが!」
「だって、銀冠山脈越えてく化け物なんだから、そのぐらい平気かなって思ったんです!」
「じゃあお前は使い潰されても仕方ないな。というか、行くの辞めたらどうだ?勝手な自分の常識で他人を引き回すならお前は行くな!」
「行かないならここで公用金貨5億枚下さい!約束しましたよね?」
「……ヒューイットさんは連れて行きますよ。私のことで揉めないで下さい。そろそろ夕食です。食堂へ行きましょう!マーズさん達もご機嫌直して下さい。今夜はシェフの自慢の料理です。お楽しみに!」
ヤツは魔力切れになるまで毎日苛酷な労働をさせる事に決めた!言っても聞かなきゃ思い知らせる他無いよね?
その日の夕食のメニューは類を見ない美味しさのフルコースだった。1人を除き。
そう、ここはヤツに取って敵陣真っ只中、使用人達がツメを研いで待ってる。
明日の朝まで生きてるかなぁ?
風呂入って寝よう!
翌朝一番に父上が魔力譲渡に来たから断った。再生や復活が使えない司祭様では困るのだ。着替えて玄関ホールに行くと皆集まってるから、悪いけどヒューイット魔法建築事務所の15人は4日後の朝一番の出発にしてもらったら、ヒューイットが文句を言い始めた。
「何で転移魔法使いが2人いて、全員連れて行けないんだよ!」
これにはバーガーを食べていたジェラルドさんがぶちギレた。
「俺達は荷物もアイテムボックスいっぱい運んでるんだ!これだけ運べって言うなら、銀冠山脈の上で空から落ちて潰れても文句言えないぞ!」
「はあ~ん?結局出来ないんだな?早く公用金貨5億枚出せよ!」
「このバカを運ばなきゃいけないのか?ケイトス」
「うん、大事な役目を担った方なんだ。私が直接お世話して差し上げたいのです」
「わかってんじゃねぇの!おい、ケイトス!早く連れて行けよ!」
「じゃ、皆さん固まって手をつないで下さい」
ジェラルドさんが目を剥いた。
「大丈夫か?!ケイトス。無理すんなよ!」
「シロッコさんちまでは大丈夫ですが、それから先が保障出来ません。よかったら、シロッコさんちで夕方まで休ませて下さい」
「そのぐらい良いけど、そんなにムリしなくても」
「良いのです。きっと、ヒューイットさんは仕事で返して下さる方です!先払いと思えばこれしきのこと。耐えて見せます!」
「あー、ちょっと待て!確かに俺は仕事で返して見せるが、魔力枯渇になるまで働かされるのはイヤだから15人置いていってもいいぞ」
「何と気高く優しいお方!そうですね、無理はやめます!15人の方は4日後の朝まで屋敷を自由に使って下さい!それでは、転移します」
まず、銀冠山脈越え。クウ~ッ!キツい!シロッコさんちに着いた時には片膝付いていた。
「「「「「「「大丈夫か?!」」」」」」」
「クロウさん家族だけを連れて行きますから、シロッコさんすみませんが、預かって下さい!すぐ帰ってきます」
クロウさんちに転移、やっぱり2~3人だと楽だ。
「また、帝国に遊びに来て下さい」
「ありがとう!ケイトスくん。あのバカタレからムリを言われたら大人を頼りなさい」
「ブフ!はあい!じゃあまた!商品作ってて下さいね!」
3人とさよならして、シロッコさんちに行ったらカフェの中でジェラルドさんとヤツが睨み合ってる。
「お待たせしました!さあ、行きましょう!シロッコさん何週間後に来ればいいですか?」
「ラプナーさんに言ってあるから、彼から聞いてくれ」
今話したくないと?わかった!
「またね!シロッコさん」
「おう!またな!」
言わずとも手をつないで待ってる魔法建築師とメリエレさん達。メリエレさんとマーズさんの間にお邪魔して幻想庭園に転移した。
嘔吐いていたら、メリエレさんに倉庫に運ばれた。私は急いでアイテムボックスの中味を全部出してから、ブラックアウトした。
翌朝一番ラプナーに熱を計られて一日お休みする事に。
ラプナーは忙しいらしく私はほったらかしになった。
ベッドの上で大人しくしてたのは2~3時間で部屋の中にある書類を見つけて読んでいたら、大変な物を見てしまった。
デルフィ工房の追い出し計画とシロッコさんの工房のお引っ越し計画。
ちなみにシロッコさんとは契約書が交わされていて、デルフィ工房が出て行ったらすぐにシロッコさんがやって来る事になっている。ちなみにシロッコさんは王都では紫証に黄色のラインが入ったバリバリの紫証の職人さんらしい。
素直に喜んでもいいのだろうか?
「悪い子ですね」
ラプナーに見つかった。書類を取り上げられて元の引き出しに入れて鍵を掛けられた。
「ラプナー、どこまで話が進んでるの?」
「もう、デルフィ工房に勧告したんで、出て行くのを待ってます」
「マリス達は何か言ってた?」
「恩知らずの愚か者の寝言など聞いてはいけません。バカなのか、貴方と話せば何とかなると思ったみたいで、2日前にここまで来てましたが、ナジム様に追い払われて採取組合長の前で恨み節を披露して採取組合長と話し込んでいましたが、最終的に組合長も呆れてた。
「何でそれだけ良い条件だったのに、契約を交わしてなかったのです?それでは貴女の言葉一つで追い出されても文句言えません!今まで援助していただきありがとうございましたと言うべきです!」
って、本当に幻想庭園から放り出しましたね」
「恨んでるんだね」
「いえ、ルーク様は恨んでませんよ。ただ、何を勘違いしてるのか、貴方に謝ったらやり直せると信じてるんです。あれだけヒドいことを貴方に言った口で!」
ああ、舐められてるんだな。思わず私は鼻で笑う。
「いいよ。計画通りに追い出して。クリスさんには話したの?」
「表面上は穏やかに合意しましたが、マリスを折檻したようです。毎日工房を探してますけど王都で店を構えるのが、どれだけ大変か、体感してるでしょう」
「店を作ってそっちに早く移そうよ。売ったのが私達ってバレないようにしてからね」
「ルーク様は甘いです!もっと思い知らせてやるべきです!」
「だから、今までの稼ぎを使い果たしてもらうよ。ちょっとばかり、私も頭にきてるんだよね。私が舐められ過ぎじゃない?」
「ルーク様……わかりました!出来るだけ良い物件を魔法建築師に直させましょう!」