どたばた
朝一番に起きて、ハッシュに着替えさせてもらって厨房によって籠盛りのパンをパチリ冒険者ギルドへ行く。
昨日、タグを預けたままだったのを思い出したのだ。
売り上げ表をもらい、指名依頼表に顔をゆがめる。
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【指名依頼書】
依頼者/王宮厨房
指名者/帝都カルトラ冒険者ギルド所属/Bランク/ケイトス
依頼内容/バースデートーチと魔蜜を採れるだけ採って来い!
○場所/幻惑森林
○日時/明後日まで
○依頼額/出来高制
評価※ふん、まあまあだな。金は出してやる。受け取れ!
◆魔蜜/B/15壺/公用金貨1500億枚
◆バースデートーチ/C/60000個/公用金貨60000枚
魔蜜はもう指名依頼が来ても出さなくて構いません!この値段はあり得ませんから!
また、バースデートーチの煮出し液が良いお金になりましたので、プラスさせていただきます。
◆バースデートーチ煮出し液/C/60000個分/公用金貨1億2千枚
【合計※公用金貨1501億62000枚】
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「魔蜜の値段バカにしてやがる!バースデートーチだって指名依頼なら色付けるもんだぜ!あんまりじゃねぇか!」
「魔蜜ってそんなに高いの?」
「そりゃ、幻のハチミツだからな。採るの難しいからな。幻惑森林入って4時間生きてられたら採れるけどな。メリエレ達もお前さんが一緒じゃないなら採らねえな!」
小瓶に入れた魔蜜を焼きたてのパンと一緒にアイテムボックスから出す。
「いつもお世話になっております。ほんの気持ちです!」
イエールさんの顔が強張る。
「冗談言うな!パンにつけて食べるようなものじゃない!しまえ!あ、そうか!オークションの書類渡してなかったからか!受け取れ!現実を見ろ!」
オークションはミストオークションの方だった。
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☆☆☆☆☆オークション☆☆☆☆☆
【魔獣名/ランク/出品数/換金額】
☆魔蜜/B/50本/公用金貨50億枚
☆光虫/C/652匹/公用金貨326枚
☆シャドースワン/B/4682羽/公用金貨1560枚大金貨7枚
☆ブラッディウルフ/A/6057頭/公用金貨60枚大金貨5枚銀貨7枚
【合計※公用金貨50億1947枚大金貨2枚銀貨7枚】
またのご出品をお待ちしております。
ミストオークションギルド
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「そこに書いてある50本はさっきケイトスが出したのと同じくらいの量で、1本で公用金貨1億枚するんだぞ?あの大きな両手で抱えるような一壷が、たった公用金貨100億枚なわけないだろう!」
なるほどね。
「もう王宮厨房からの依頼は受けない!」
「おいおい、ソレをやったらロトムと一緒の道を歩くことになる。魔蜜の依頼は上手いこと言っとくからヤケになるな」
「ロトム、何されたの?」
「あ、言っちまった!…まあ、ケイトスならいいか。奴は料理が上手すぎた。宮廷料理人になれって王宮厨房が強要してきてな、奴は皇帝に宮廷料理人にはならないって正面切って言っちまって、勇者達を連れてヘキサゴナルに逃げたんだよ!帝国民なら皆が知ってる有名な話さ」
「何で勇者が出てくるの?」
「帝国がなぁ、勇者達を異世界から召喚してなあ、そこまではよかったけどな。皆が皆、学生の料理人だったんだよ。ひでー話だ。1人も戦えないのに、喚ばれちまった異世界人達は言葉も違うし、送り返せないし、そりゃあ大問題になった。そこでロトムがそいつらが生きて行けるように【ドラゴンフレーバー】って商会を設立したんだよ」
りょうちゃん達は異世界から来たから言葉が通じ無いのか!
師匠に習った「ニホンゴ」なら通じるかな?
師匠も勇者でいきなりここに呼ばれたっていってたから通じるかも!
「ま、お前さんも二の舞にならないように、王家への言動には気を付けろ、って話だ。
おう!そういえば蝶々のお嬢様な、昨日の夜引き取りに来てたぞ。
プレゼントだっつったら、屋敷でパーティー開くから来てくれとさ!
日時は後で手紙書くって言ってたから何か冒険者らしい贈り物でも持ってけ!」
「ダンに預けて下さい。私がヘキサゴナルな行ってて身動きとれない日だったら誰を代わりに行かせるかが超難題ですけど」
「バラム様が行くから心配すんな!今日出発だろう?気を付けてな!」
「はい!何かお土産買って来ますね!」
「「「「「「「ベーコンを!」」」」」」」
解体師達が口を揃えるくらいだから、ベーコンはよほど美味しいのだろう。
「かしこまりました!」
チーズも買ってこよう!
屋敷に転移したら、メリエレさんが幌馬車2台分にエメリヒ工房の布地や、服をこれでもか!と詰めて前庭に置いてある。
「ケイトス!いいところに来た!もう一度工房から取って来るから、アイテムボックスにこれをしまってくれ!」
言われた通りにして、エメリヒ工房まで幌馬車2台ごと転移する。
また、ギルドの運び屋ジェラルドさんを都合してもらわなければ!
冒険者ギルドへ飛びジェラルドさんに指名依頼を出したら明日からじゃないと体が空いて無いらしい。それでもいい。3日間身柄を押さえて今度はマーズ魔法建築事務所に。
「坊主、早かったな。行くか」
「行くのは明日の朝一番にしますから、他の魔法建築師にも声掛けて集めるだけ集めてくれませんか?人数は20人まで、必ず1人につき公用金貨5億枚の支払いを約束します!
2つの村と20軒以上の店を短期間に構えなきゃいけないんです!」
「それなら、ナント市まで連れて行ってくれるか?弟子が魔法建築事務所を持っているが鳴かず飛ばずで困っているんじゃ。ナント市は永久凍土地帯の手前の町じゃ」
「では、道沿いに転移します。案内よろしくお願いします!」
ナント市は遠くはなかったが、夏でも肌寒いくらいだった。
意外と綺麗な町並みに感心してると、一番綺麗な建物が、それだった。
「ヒューイット!師匠が来てやったぞ!」
「あ、ホンモノだ!マーズ様待って下さいね。起こして参ります!」
新人らしき子が、慌ててカウンターの向こうに消えて10分後、髪に櫛も通してないボサボサの髪の青年が出て来てマーズさんに土下座をした。
「ようこそナントへ。師匠お久しぶりです!」
「魔法建築師、1人当たり公用金貨5億枚の大仕事じゃ!皆を連れて行くぞ!」
「い、いつからですか?!師匠」
「明日の朝一番からなんで、夕方までには旅行の支度を整えて下さい」
「お前誰?」
マーズさんに魔法の杖でぶっ飛ばされた哀れなヒューイットさんは、1時間膝詰めでお説教されたあと、やっと仕事の説明をしてもらい、大きな仕事だと理解して直ちに事務所所属の魔法建築師を全員集めた。
すると26人もいる。最初に連れて行くのは基礎を固める人と棟上げする人。4日後にまた帝国に帰ってくるので外壁や屋根をこしらえる人は、自力でカルトラの冒険者ギルドまで来てくれと言ってカルトラのマーズ建築事務所まで転移した。
マーズさん達5人のベテラン魔法建築師は、もう旅支度が出来てるからウチの屋敷に今夜は泊まるとはしゃいでいる。
建築学的にウチの屋敷は面白いんだそうな。ハイハイ。連れてきゃいいんでしょ?