84話 ダンジョン巡り
朝から雨が降る。
皆が雨除けに大ガエルの皮のフード付きマントを着ている。
全員で26名の大所帯になった。
ここにいるほとんどの人間がBランク以上Aランクの化け物達だ。
例外はクロウさんだけ。
薬草樹海の入り口でギルドタグを冒険者ギルドの職員達が、常駐してる小屋で出してダンジョンから出る予定の日を告げて行き、帰らなかったら捜索隊が出されるのが普通のダンジョンらしい。
クロウさんは、私が護衛する。
「何で幻惑森林には小屋が無いの?」
「大人の事情でなかったんだが、そろそろ誰かが行くだろ」
「そう、ならいいか」
メリエレさんが木から私たち目指して落ちて来た可愛らしいピンクの毒蛇を切って捨て私がメリエレさんの背後から襲って来たフォレストベアの4メートル超えの首をウインドスラッシュを纏わせた双剣で挟んで切り落とした。
【樹王】討伐の経験が私を強くしていた。
「おうわ?!悪い!助かった!ケイトス」
「こちらこそ。サクサク進みましょう!」
ピンクのヘビは、サンゴヘビというらしく今から採取に行く珊瑚石が主食のタチが悪いヘビで、頭上から人間めがけて降って来て噛み付いたらターゲットが死ぬまで離さない丈夫なアゴを持つという。
クロウさんは大はしゃぎしてフォレストベアの首をスケッチしている。
グロ耐性あるな!クロウさん!
メリエレさんがサンゴヘビを瓶に大切そうに詰めてニヤニヤしてる。
ファインさん達も飛んで来るサンゴヘビを空中でキャッチしてガラス瓶に入れてニヤニヤしてる。
……きっと売ったら高いんだ。
しばらくすると桃色の珊瑚石が生えてる透明な湖に着いた。
湖の中は静かでサンゴヘビが珊瑚石を食べている様子もない。
メリエレさんが服を脱ぎ、下着姿で湖の中に飛び込んだ。ファインさん達採取班もそれに続く。
すると、ガサガサ茂みが揺れて大蛇が顔を出す。
先手必勝!
私はヒュージ流体術の百来を使って大蛇の前に到達し、大蛇が襲って来たときには仕事を終えていた。
ゴトンと、頭が落ちると空樽を出して血抜きする。
樽にはフタをして大蛇ごとアイテムボックスに収納して何もなかったフリをした。
ラリーさんが突っ込んだ。
「ケイトス、お前……めっちゃ強くないか?」
「いえ、まだまだです!」
「クロウさん、ここじゃコーラルサーペントしかいないんで、ケイトスの近くに必ず居て下さいね!」
「お、おお!いるぞ!大丈夫だ、ラリーさん」
ただいま絶賛スケッチ中のクロウさんの頭上からコーラルサーペントの幼体が降って来た!
ウインドシールドでクロウさんを覆い隠す。ラリーさんが剣で斬撃を飛ばして始末してガラス瓶に詰める。
やはりニヤニヤしてる。
「高いの?それ」
「滋養強壮の薬になるんだよ。俺らは持ち帰って酒に漬けて2週間くらいしたら、売りに行くんだよ!それだけで1日の稼ぎになる」
「へえ、そうなんだ!ガッツリ稼いでね」
「おう!」
クロウさんは幼体のコーラルサーペントを見つけてはスケッチしてるので、メリエレさんが湖から上がって来たことに気付かなかった!
「クロウさん、つぎの場所に行きますよ?ケイトス、主討伐してくれてありがとう!」
「ウワーッ!いっぱい採ったね?アイテムボックスに入れておこうか?メリエレさん」
メリエレさんは小麦粉が入ってただろう麻袋に珊瑚石をたくさん入れてご満悦の表情。
「もっとウジャウジャいるかと思ったら、拍子抜けだね」
「親玉殺されなかったら出てきたただろうがな。どっかの誰かさんが雑草でもかるように狩っちまったからなあ」
「楽しくしてあげても良いよ!」
「馬鹿たれ!次の場所に行くぞ!」
「「「「「「「「はい!メリエレさん!」」」」」」」」」
メリエレさんの後ろに居れば大丈夫!
メリエレさんはバーサーカーだから魔獣達にストライクしていく。それをスケッチするクロウさんにも慣れた頃、近くから血の匂いがする。
メリエレさんとラリーさんが走って行ってしまったので、仕方なく待ってるとラリーさんが、戻って来てクロウさんと私の手を引いてまた、駆け出す。
私とクロウさんは身体強化してラリーさんと並んで走る。横からフォレストベアが襲って来たので成敗してアイテムボックスに入れて走る。
血臭がすごくて鼻がおかしくなりそうな血で泥濘む道には負傷した冒険者達が大層深い傷を負って仲間に応急処置されている。
「うわっ、何で白王子がいるんだよ!」
「ポーション置いてく!受け取って!」
治癒魔法の使い手にポーションを袋ごと渡してラリーさんの後に追いすがる。
段々負傷者の数が増えて、それはメリエレさんを咀嚼していた。
「サーベルタイガーだぞ!子供を連れてくるな!」
百来で距離を縮めて手加減無しの斬撃を首に叩き込む。硬っ、切れたのちょっとかよ!
でも、ヘイトは稼げた。
メリエレさんを放り出してサーベルタイガーは吠えた。
その瞬間に口から双剣を入れてウインドスラッシュをお見舞いすると効いたようだ。魔鉄鋼の剣を口に突き刺してファイアーボールで内側から炙ると七転八倒している。
気が付けばサーベルタイガーは死んでいたが皆さん急いでこの場所から離れようとしている。
「口裂けが来るぞ!逃げろってば!」
皆さんを薬草樹海の外の冒険者ギルドの受付に転移させた。アイテムボックスに中身が黒焦げになったサーベルタイガーを入れて特殊個体さんを迎え討つ。
口裂けさんは、デカかった!
体長が15メートルくらいある。
ここに来るまでに何人が犠牲者が出たようだ。牙に引っ掛かっていた服の残骸をペッと吐き出し威嚇して来たが怒りで私の頭はすっきりしていた。
ゴォーっと風を切る音がしたので転移で口裂けさんの後ろに移動して身体強化で跳躍してお尻の穴にグサリと剣をくれてやるとウインドスラッシュを最大化してお尻の穴を広げた。
ガァアアアアーーーッ!!
痛がってる、痛がってる!
口裂けさんは尻裂けさんにもなったね!
口を開けて、私を飲み込もうとしたので口の中にお邪魔して上に向かって最大級のウインドスラッシュをお見舞いした。脳にダメージが与えられたようだ。
ついでなので、追いウインドスラッシュで頭を吹き飛ばす。
口裂けさんはまともに向かってくる冒険者達と何度となく戦い、自分の力に慢心してたのだろう。
終わりは呆気なかった。
「ケイトス!!大丈夫か?!降りられるならそこから飛べよ!」
「ファインさんいいのに、でも降りるけど、私の剣を回収してからね!」
身体強化でお尻の穴まで行って剣を回収しようとしたが肉に食い込んで取れない!
仕方ない冒険者ギルドでイエールさんに取り出して貰おう。絶対イジられると思うけどさ!
転移でファインさんの前に行き頭を下げた。
「メリエレさんが脇腹食べられた。私が来るの遅かったから」
「あ、大丈夫!大丈夫!良くあることだから、メリエレさんもそういうポーション持ってるから平気だ!」
震えてるよ、ファインさん。
私は、ファインさんしか、残ってないのか、聞くとファインさんが無理やり微笑んでそうだと言ったので口裂けさんもアイテムボックスに収納して転移。
薬草樹海の入り口に出たらメリエレさんは何と父上が「再生」で直してくれたらしい。
父上は祭司の服で来ており、カッコよかった!
「父上!いつこちらにいらっしゃったのですか!」
「今朝だ。タイミングが良かった。冒険者ギルドに司祭就任の挨拶をしてる時に「再生」を使えるか?って聞かれてうなずくとここに連れて来られたがメリエレさんが虫の息だったから、まあ、文句は言えないけどね」
「父上ありがとうございます!父上がいて、ホントによかった!」
「では、屋敷に帰ってからね?」
「はい!」
そういうと父上は他の負傷者も治癒していた。
私がメリエレさんに触れて屋敷に転移するとメイド達が、おしゃべりに興じていた。
「あ~ん!この際、日陰の身でも良いから、お側に居させて下さらないかしら!」
「誰の事、話してるの?」
「「「「「キャアアアーーーッ!!」」」」」
メイド達はクモの子を散らしたようにメリエレさんの部屋から出て行った。
メリエレさんは起きていた。
「メリエレさん寝てた方がいいよ?再生魔法の反動が来るでしょ?力入らなくて辛いでしょう」
「すまないな。助けてくれてありがとう。今度ばかりは死ぬかと思った。何か飲み物と食べ物が欲しい」
「わかった!着替え一人で出来る?」
「ぼちぼちやるから、メイド達を遠ざけてくれ」
「了解!」
メリエレさんがソファに座り込んで動けなくなったのを確認してメリエレさんの部屋から出たらダンとハッシュが廊下を爆走して来た。
「お帰りなさいませ!若様!」
「メリエレさん着替えさせてあげて。再生魔法でだるくなってるから、力入らないと思うんだ」
「わかりました!お任せ下さい!」
「私は食事を持って来るから」
「そのようなことは、私たちがしますから、冒険者ギルドに顔出しした方がいいのではないですか?」
しまった!クロウさん連れて来るの忘れてた!
慌てて薬草樹海の入り口に戻るとクロウさんが冒険者達に何か交渉している。
「クロウさん、すみません!」
ファインさんが、振り向く。
「ケイトス、初心者森林に行きたいって言うんだけど連れて行けるか?」
「いいの?ファインさん達は」
「問題ないぜ。行こうや!」
チーム・メリエレに集まって貰って初心者森林に転移した。
初心者森林は、本当に初心者向けの魔獣しか、出てこなくて思わず苦笑したが、見物には持ってこい、だったらしい。クロウさんのスケッチでみると魅力的な魔獣にみえるから不思議だ。
夕方まで精一杯クロウさんに付き合ったら、1日で満足したらしい。
ファインさん以下チーム・メリエレはホッと一息ついていた。
「じゃ、明日~明後日は幻惑森林で!よろしくお願いします!」
遅くなり申し訳ありません!
次の更新は1ヵ月後になります。
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