表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/115

82話 どうにかなりそう!(3)

夜中に仕入れ先廻りになり謝罪すると靴屋のニコルさんは、「大変でしたね」と何故か事情をご存知のご様子。

大通りは一軒一軒警邏隊が顔を出して今日は超警戒態勢だったらしい。


カラルフ商会のイフルさんは、またいろんな色の鞄をてんこ盛り用意して屋敷で待っていた。

私から愉しそうに事件の顛末を聞いて喜んでいる。

サクッと現金払いして、蒸留酒を袖の下に渡した。


「今度は女性が大荷物をしまって背負えるくらいのリュックをお願いしますね!男物も欲しいです!」


「どないなお人が使うんえ?」


「露店の出店者さん達狙いです」


「出店者さんからもお金取るんか。悪いお人やなぁ」


ダンがピクリと片方の眉を上げる。


「中が濡れないようにして欲しいんですが。アクセサリーとか、服が濡れないように」


「ん~。それは出来へんなぁ。もう、似たような物を輸出しとるんえ」


「あ、ラプナーが話してた既得権益の侵害に当たるのかな?すみません。取り下げます!」


「申し訳ないなぁ。アンタさんが買って配るんやったらえぇけど」


そうか!それも支援になるよね?

ダンが険しい顔で返事しようとした私に物申した。


「絶対、駄目です、何百人いると思ってるんですか!リュックで破産しますよ!」


「ふふ、なんだかんだゆうても、侍従の方が偉い商会なんえ?」


「イフル様は、ご存知無いから、そんな貴方にしか利がない取り引きをおっしゃるんです!

露店への出店者が困らないように作業台付きの宿舎が与えられ1日1食ですが、夕食が付いていて、出店者2組に1つの充分な大きさの天幕が支給されています!

抱える職人の数は120人に上り、更に何日かの出店者には宿舎が50部屋設けられていて夕食付きです!これを運営してるだけで、1週間に公用金貨1枚の赤字です!」


「宿代で儲けてはるんやろう?」


「いえ、職人さん育成の為にやってるんで、タダですよ」


イフルさんは口を開けて固まっている。


「……はあ、そりゃあ、何とも…侍従はんが、お口を出したくなるはずえ!何やいろんな事考えてたんが馬鹿馬鹿しくなったわぁ。何かそれでアンタさんにええ事あるの?」


「時々、腕のいい職人さんを引き抜けるくらいです」


「あきまへん!そんな効率の悪い事やるより、安う泊まれる宿に今すぐ変えるんえ!そうやなかったら、骨折り損のくたびれ儲けえ!」


「心配してくださってありがとうございます。引き抜きを掛けた職人さん以外は3ヵ月で入れ替わりですから。私も何も考えて無いわけじゃありませんよ」


「ウチやったら、祭り開いて腕を競わせて囲いますえ」


祭り!いいけどどうしよう?


イフルさんは眉を下げるとお金を要求した。


「公用金貨1000枚くれはったら、ヘキサゴナルのアンタさんの市場に行って助言しはってもええ」


「お願いします!」


「いつ帰るんえ?」


「明日の朝5時には帰ります」


「泊まらせてもらうえ?エルム!2~3日分のウチの荷物明日の朝5時に持って来るんえ!もちろん、アンタも行くんえ?」


「はい、旦那様」


護衛兼お付きのエルムさんはそれを聞くと転移で帰った。

ダンはイフルさんを案内してゲストルームのある2階へ連れて行った。

私は自分の部屋まで転移して着替えずに寝た。

部屋で待ってたハッシュに何とか4時に起こしてと言ってから眠ったのは英断だった。


翌朝、服を脱がされているのに気付いて起きるともう4時過ぎていて、焦った!


「お疲れのようですが、ヘキサゴナルに今日行けるのですか?」


「行けるんじゃないか、心配しなくて大丈夫」


「お帰りはいつに?」


「明日の夕方には帰るから、冒険者ギルドに幻蝶屋の警備員、Bランクを2名とハンナの家にも1名。依頼して来て、至急で!」


「わかりました。ハンナ様は、護衛ですか?」


「空き巣がカーメルさんが道場に行ってる間に入ってるみたいで、ハンナが心配だから外に立たせておいて」


「あの家に空き巣とは呆れますね」


「カーメルさんが何回か捕まえて警備隊に突き出したみたい。ありがとう、ダン」


ダンがテキパキ私の身支度を整えると4:50になった。


「玄関前にメリエレ様が商品を積んで参りました。持って行くようにとの事です」


「メリエレさんが起きたらハンナの売り上げ持って行ってあげてって言っといて。それから、イフルさんの件報告しておいて。あと、幻蝶屋に顔出して。とりあえず公用金貨2000枚おいて行くね。よろしくダン」


「私はここでお見送りします。行ってらっしゃいませ、若様」


「行って来るね!」


屋敷の玄関前に転移して止まっている2台の幌馬車の荷物をアイテムボックスに入れる。

玄関ホールでイフルさんを待っていると5:30になってからエルムさんと転移して来た。

今日は、イフルさんは一段といい服を着こなしている。


「許さはって!お風呂入っとったら、遅うなったんえ」


「ウチの使用人達が行き届かず申し訳ありませんでした。こちらこそお許し頂けますか?」


「うちが言ったんえ!お風呂入りとぉなったって!しばらくぶりに朝早う起きたからよう、起きれへんでなぁ。ごめんなぁ?」


「いえ、こちらの都合に付き合わせているのですから、全く構わないんです。一つお願いがあるんですが。私は市場のあるバフォア公爵領では、“ケイトス”と名乗ってますので、一切本名で呼ばないで下さい。呼んだ瞬間から命を狙われるでしょうから」


「……ああ、分かったえ!巻き添え喰らいとぉないし。逆恨みされて理不尽やなぁ」


全くね!


「私と手を繋いで下さい」


イフルさんは私とエルムさんと手を繫ぐ。

ヘキサゴナルのバフォア公爵領まで転移した。

屋根付き露店に行くとラプナーとサイナムとコリンズが待っていた。

イフルさんはエルムさんと商品の店出しを手伝ってくれたし、市場が開く日の出まであれこれアドバイスして遊びに行った。

入れ替わりにメイドさん達14人が手伝いに来た。

私は王都の屋敷に転移して獣人姉弟の様子を見舞う。リンディーが大丈夫だと食事に誘ってくれたが、イフルさん達にも食べさせなきゃだ。


「この子達のこと頼める?今日の夕方には帝都に帰るから、5日間頼むね!あ、虹証出して。再生魔法のお金を支払うから」


リンディーは懐から橙証を出した。金貨10億枚支払う。

リンディーは口を開いた。


「騎士学校に用があるから、5日後以降に帝都に行くときコリンズも連れて行って下さい」


「わかりました。お安い御用です」


「リックとシアンの事はお任せください」


「ありがとう!リンディー。それじゃあまた、5日後以降に」


転移して前庭市場のエルムさんの気配を探ると、なんとドラゴンフレーバーのラーメン屋に並んでいた。会計だけ済ませてあの人達だと伝えて布屋雑貨店に帰るともう、今日は、売り切れたらしい。

服飾品店は服も靴もアクセサリーも無い。


「今日は、もう終業です!」


イフルさん達はラーメンを食べている。

いいなぁ。

食べて来たいと思うんだけど、イフルさん達に用があるから、後で何か買い食いしよう。

露店を片付けて自宅倉庫に持って行く。

5日分の在庫を日付順に手前から並べた。


直ぐにラーメン屋まで転移したら、イフルさん達はもういなかった。


銀細工職人さんの露店を観ると割りといい感じだったので、何十点か買ってアイテムボックスに入れた。

他は興味ないので呼び込みをガン無視して食材の仕入れをして離宮の食堂の厨房に納品すると、米と鶏卵を買って来てくれとコックさん達にすがられた。

卵チャーハンが爆売れしてるらしくて、コック皆ポーションで腕の筋肉痛を治しながら頑張っているという。

想像して笑っていると皆にぶちギレられたので、大人しく仕入れて納品してついでに、モーニングメニューのおにぎりセットを食べさせてもらった。


「モーニングメニューは売れ行きどうですか?」


ムスカさんに聞くと眉をひそめられた。


「若様、言っちゃあ何だが、金持ちしか入って来ないから2000ステラ以下の品目は、売れないんだよ!ロトム様にもう少し考えて下さいって、伝えて下さいませんか?」


絶句した。


「何でお金持ちしか入って来ないんだろう?」


「「「「「「入りにくいです!普通の服じゃ入れません!」」」」」」


「そうなの?でも、幻想回廊の方には誰でも入ってるよ?」


「あそこは市場の監督舎もあるし、入り口開きっ放しだろうがよ!ケイトスさん」


スーシェフのツブラくんに言われて見れば、そうだ!

でも、離宮は入って直ぐに食堂だから、それが出来ないのだ。

フェイさんに開けたままだと落ち葉が入って絨毯に絡むから、止めた方が良いと釘を刺されたけど、何か策は無いかな?困った……。


「表を大きな窓に出来ませんか?」


「それしたら、強盗が来て割られたんだよねぇ。防犯対策として絶対しない!」


皆の顔が引きつった。


「ハー、中世感極まるって、感じだな。こっちって防犯ガラス無いのかなぁ?ロトムに聞いてみるか…」


ツブラくんがボソボソ言ってるが、無視する。

もう、強盗はいい!


「また、5日後以降に来ます。美味しかったありがとう!」


転移して幻想回廊の事務所に行くとイフルさんとエルムさんが、ナジムさんとお話し中。

幻想庭園の周辺地図を開いて盛り上がってる。


「ごめんなさい!遅くなって」


「ほんまやわぁ。どこ行ってはったんえ?」


「離宮の食堂で食事してました」


「へえ、そないなとこもあるんおすか?祭りの開催決まりましたえ」


「早っ!」


ナジムさんが北門の近くを指差す。


「ここに職人村を作るのでまた、マーズさん達を連れて来て下さい。それから宿場町の宿が足りないと不満が出ていますし、飲食店が欲しいとか、途中にある地区から歩いて来る強者もいますから、ちゃんとした店を誰かに開いて貰わないとでしょう」


「アー!またお金がかかる!」


「最初は仕方ないえ?ウチ、ケイトスはんの資産聞いて驚いたわぁ!幻惑森林って、儲けはるんやなぁ!」


「おかげ様で。冒険者達の死体の山も処理するハメになってますからウカツな事は言わないのが身のためですよ?もし、どうしても行きたいなら遺言状を書いて親しい仲間達にお別れの挨拶をしてから、精神魔法と毒に対する万全の準備をして、午前中に行って魔法を使わずにエサに飢えた何百匹の魔獣達と渡り合える人数で、行くようにアドバイスして下さい。……多分死ぬでしょうけど!ナジムさん、私の資産とか余計な事言わないで下さい!この借金虫が!」


「……ひょっとして幻惑森林って、危ないのですか?」


「Aランクの冒険者達が1つが金貨1枚の木の芽を採るために金貨100枚もするポーションを飲んで大勢で挑み2時間でタイムアウトになり、生きててよかったな!って言いながら出て来るダンジョンです」


大げさだけどホントだし。


「知らへんかったわぁ…危なく知人に言うとこやった。やっぱりお金には苦労が付いて来る物なんやわぁ。でも、ケイトスはんはBランクえ?なんや秘密がありそうやわぁ」


「私は魔力が人の10倍以上あるし、幻覚や精神魔法がほとんど効かないんで、普通のダンジョン行ってるのとそうは、変わらないんだけど木の芽だけは、ヤツだけは、出来れば採りたくない!それに、夜は行きたくないです。他の冒険者のせいで死にかけたんで!」


「でも、その木の芽、良いお金になるのに、何で採らないの?」


「樹液で服が溶けて全裸になるのが、解ってても気が付かずに堂々と人前に出るハメになって気が付いた時には……お婿さんに行けないって死ぬほど落ち込むんですけど、それが無いと死んじゃう人達がいるから、1ヵ月に1度は採りに行くんです」


事務所にいた皆が笑死してる。


「旦那様!私が採って参ります!」


エルムさんに釘を刺す。


「あのね、話を聞く分には面白いけど、魔法を使ったら、Bランク以上の魔獣達が群れで四方八方から襲って来るダンジョンで、魔法で焼かないと採れない木の芽だから、Cランクの素材に指定されてるし、今は欲にとち狂った冒険者達のせいで魔獣達が何にもしなくても襲って来て…私でも昼に木の芽採りに行くのは団体で行きたいくらい、危険だからね?」


「お伴させて下さい!」


「……ランクは何?」


「こう見えてAランクの魔法使いです!火魔法が得意です!」


「剣は?最低身が守れ無いと死んじゃうよ?」


「ヒュージ流の師範代をしてます」


「へえ…。誰に習った?」


「ヒュージ剣聖に習いました!」


弱いな。じゃあCランクくらい、か?

メリエレさん部隊にお世話になるか。


「付いて来てもいいけど魔法は木の芽採りにしか使わないのを約束して下さい!」


「はい!約束します!」


エルムさんは自信たっぷりだが、さて、どうしようかな?


「イフルさんは取り引きのある商会にご挨拶回りしますか?王都までなら送って行きますよ?」


イフルさんはソファから立ち上がり私の手とエルムさんの手を繋いで頷く!


王都の私の屋敷に転移して明日の夕方までにここに来るよう念押しした。


「明日の夕方までにここに来なかったら私ひとりで帝都に行きます!」


「なんや、約束あるんおすか?」


「はい、銀細工職人さんに魔獣を見せる予定なのです」


「へえ、職人さんには偉い親切丁寧なんどすなぁ?」


「藍証の狩人だから、特別に、です!戦えない者はさすがに連れて行きません!」


「それなら納得え!宿は?」


「明の星亭をカラルフ商会の名で取っておきます。中央広場近くで聞いたら皆が識ってる宿です」


「おおきに!」


2人は早速転移して消えた。

私は明の星亭に転移して商談用の部屋が付いている3人部屋を取り2倍のお金を支払い、食事代も予算からはみ出たら法衣貴族地区のクロスディア家が明日の夜払いに来るからと念押しして再びバフォア公爵領の幻想回廊の事務所に行き応接セットでナジムさんと職人村の事を詳しく聞いた。


「ここの職人村の宿舎には、バフォア公爵領の橙証からの職人たちが入れる。黄証になれば、自分の工房を立ち上げて、赤証の弟子、あるいはかつての仲間達が雇えるようになるから、大きなメゾネットを与えて作品を最低でも1週間に50点は収めてもらう契約をする。契約は10年契約で、それから先は自由にする。いかがですか?」


「実はね、デルフィ工房のマリスに黄証までしか、商品卸せないって言われたんだよね。それなのに私ってマヌケだよね。アンデッドの魔石売る契約10年の結んじゃって……バカみたい」


最後は泣きそうになった。

ナジムさんが私の隣に引っ越してきて私を抱きしめ背中をトントン手のひらでやさしく叩く。


「心配しなくて大丈夫です。若様。それなら何とかなりますから、普通はそんな恩知らず居ませんからね」


優しい言葉にうっかり涙すると、事務員さん達が焼き菓子と香草茶を用意してくれた。


「ありがどう゛みんな、だいずぎぃ」


私を落ち着かせると話の続きに入った。


「果蜜酒の屋台ですが、無茶苦茶儲けてます!」


「何処にあるの?」


前庭市場の入った直ぐに飲み物と食べ物の屋台が並んでるんですが、安い果物をくり抜いた器に入れて売ったら器も食べられるし、お酒も飲みやすいしで、火が付いて今は市場の中に9ヵ所ありますよ!」


「……知らなかった。どこみてたんだろ私」


「まぁ、若様には売りませんよ、10才以下ですからね。売ってるメイドさん達は若様をあちこちで目撃してるようですよ。若様、目立ちますからね」


恥!


「バフォア公爵から晩餐会に招かれてますが、いかがなさいますか?」


「お断りして。命を狙われてるからって書いといて」


「実は今、離宮ホテル内にいらっしゃるんです。お会いしたいそうです。私も参りますから、運んで下さい」


「一人で来てるんですか?まさか」


「まさか、そうです。エイリーンさんとサイナムさんが護衛してます」


「エイリーン兄上いつ来たの?」


「今朝、バフォア公爵と馬で来て市場を見て遊んで昼前に自首して来ました!」


何してんの!?二人とも!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ