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8話 お祖父様

私達は王城に着くと直ぐにお祖父様である国王陛下に御目通りが叶った。

謁見の間でひざまづき頭を下げていると緊張の為か、やたら汗が出て、目眩がする。


よく聞いてなかったが今から宝物庫に向かうらしい。重い体を動かしてアレクとお祖父様の後について行く何度もお祖父様が心配そうに私を見る。


「ここからが、王家の血を引く者しか入れない道だ!」


なるほどね、だから私が必要だったわけか。

ん?父上のお祖母様が王女だったから王家の血をアレクも引いてるハズだけど?…まさか、父上の子じゃない⁈

アレクを見たら、今まで見た事が無いような青ざめた顔をしている。

大当たりだな。

お祖父様の後に私が続いてその道に入ると一緒に通ろうとしたアレクが弾かれた。

お祖父様はアレクに駆け寄り助け起こす。


「体調が悪い時も通れぬから、また、別の日にしよう。ルークシード」


「はい、実は朝から体調が悪かったのですが、アレクが楽しみにしてたので無理して来たのです」


アレクの後ろにいるアスターが呆れている。ゴミを見るような目でアレクを見ている。


お祖父様はこちらに歩いて来たが物凄い形相をしている。


「……アレクシード、行くぞ!」


「はい」


しかし、着いた所は礼拝堂だった。

チェルキオ聖教の神像が祀ってあるから間違いない。

お祖父様は私を抱き上げて、祭壇に寝かせた。

枢機卿の肩掛けをした人が私を見て怒りに震える声で父上を非難した。


「グレイシードめ!こんな幼い子供に霊害が出るほどアンデット狩をさせたなどと許せる事ではない!」


「ちがうの!ちちうえにナイショできしがっこうにはいるおかねをためたくてやったわたしがわるいの!

ちちうえをばっしないで!」


するとお祖父様が優しい顔で治るまで寝るよう言った。直ぐに瞼が重くなり目を閉じた。


すうっと身体の奥に光が入って来て私の中の穢れが外に追い出されるのがわかった。

身体が軽くなって目を開いたらお祖父様の心配そうな顔と枢機卿の肩で息をする姿に無理をさせた事がわかって謝った。


「申し訳ありませんでした。お手を煩わせてしまったので決まったお金を喜捨します」


いつもの舌が回らない感じが無い!


「……私はナサニエルという。言語障害にまで発展してたので公用金貨200枚いただく」


スッと水晶の板を出されて戸惑っていると、お祖父様が教えてくれた。


「神官の虹証みたいな物だ。これにアレクシードの虹証を置いて魔力を流せばいい」


「はい!」


青証を出すとナサニエル枢機卿はまた怒り始めた。


「青証になるまで気が付かないとか、目が曇ってるんじゃないか!」


「……屋敷が霊害を受けて食べ物が全部ダメになったんです」


「それでこの大量の食料か!ただのお土産にしては多すぎると思ったわ!」


私の異空間蔵から全部外に出されていて、師匠の手紙を探したが無い!

青ざめてるとお祖父様が持っている。封が切られていた。


「懐かしい名前で表書きしてあったから、私にだとすぐわかったよ。よく、届けてくれたね。ありがとう」


お祖父様の手紙を持った手首を見て驚く。

私のプレゼントしてくれたんだ!


「私への贈り物まで、用意してくれて嬉しかったよ。

いや、箱が壊れて中身が出たものだから、勝手に開けてしまった。私には過去視と言う力があってな、アレクが私の為にこの贈り物を用意するのがわかった。

そなたの騎士にも礼をせねばな」


私が異空間蔵に全てしまうと私を抱き上げて礼拝堂から、宝物庫に連れて行ってくれた。

金ピカを想像してたら清浄な空気の漂う場所で整然と王冠やら錫杖が並んでいた。

その中からお祖父様は私に魔道具を下さった。

トルコ石のアンクレットだ。


「霊害を防ぐ効果がある魔道具だ。見つからないようにアンクレットにした。宝物は兄上がいる時に貰えることになったと言いなさい」


「ありがとうございます。お祖父様」



帰りの馬車の中ではどんな宝物があったか、本当にもらわなかったのか、お祖父様におかしなそぶりは無かったのか、しつこい程何度も聞かれた。

…ウンザリだ!!!屋敷に着くなりニッコリ笑って言ってやった。


「兄上の具合が良い時に宝物庫に宝物を取りに来るようにとお祖父様に言われたので、またご一緒してくださいね?楽しみにしてます!」


「……わかっているならいい!」


何回行っても入れないだろうがな!

父上、可哀想。

全部バレたら、もっと罪が重くなる。


「アレク様、参りましょう?」


「そうだね、アスター」


宿を引き払わなければならないし、ヨザック兄上にもクロスディア辺境領に一度帰ると伝えなきゃいけない。

私とアスターは宿に転移した。

受け付けで話をして料金の清算。金貨2枚が返ってきた。

採取組合に行き、カリナさんにヨザック兄上への伝言を頼む。


私とアスターは日が落ちるまでにロンデル川から出航する船に乗った。

王都とドゥルジー市国を分断するように流れてるロンデル川はヘキサゴナルのほぼ中央を横切り1番川下のクロスディア辺境領とペダル子爵領の間を通り抜けブラスト国と南東諸国連合国の間を走り海へと流れ出る。

船着き場は各領の川岸にあるのだが、もちろんクロスディア辺境領には船は留まらない。

川岸から古の森になってるからだ。

というわけで途中にある他領でお土産を買う。

内地で買うより少しだけ高いが、川岸にあるお土産屋さんのクオリティーは高いらしい。

全部明けの星亭の部屋付きメイド達のウワサ話だが、ウソでは無いだろう。

まず、ジョンキル子爵領に停泊して宿を取るのだが、自分の宿の旗を持った客引きがたくさんいる中、オッさん達に潰されて後ろに追いやられた少女がいた。

獣人のようだったので差別されてるのかもしれない。

私は尻もちをついているその少女を助け起こし宿に泊まらせてくれないか聞くと私とアスターの手を掴んで自分の宿の馬車まで連れて行き、私達を馬車に乗せる。馭者は少女が務め、川岸から馬車で10分の場所の銀細工工房の前に着いた。


「お母さん!!!カモが来たよ!」


アスターが馬車から降りてきた。少女の言葉にショックを隠せない私達。

銀細工工房デルフィから出て来ためっちゃ美人の純白の耳と豊かな尻尾を持った獣人の女将さんは少女を捕まえてコメカミをグリグリしながら私達に謝った。


「ごめんなさい、この子ったら口が悪くて!ようこそ!ジョンキル子爵領へ!

夕食の支度が出来てるから付いて来てください。宿は工房の後ろなの!」


工房と隣の店の間を小さな路地を通り抜けて、素朴な作りの木の宿に玄関から入る。

建てたばかりのようで、木の香りがする食堂は意外にも客で賑わっていて、私とアスターはカウンターの席に座って魚料理を頼んだ。

アンユの塩焼きが出て来た。私は大好きだ!

師匠にロンデル川のアンユを釣ってもらってよく塩焼きにしてもらったので食べ方は知っている。

まず塩焼きの背中とお腹を手で摘んで全身をマッサージして、頭を引っ張ると骨が内臓ごと抜ける。

ナオシチという果汁を絞りかけて食べたら美味しく完食出来る。

アスターが私を見様見真似で骨と内臓を取り、ナオシチをかけて食べている。


「……美味しいです!アレク様」


「うん!私も大好き」


つぎはハクナの野菜炒めが出てきた。

テンションが下がった。

ハクナはぼんやりした味の芯のある野菜で正直好きでは無い。煮炊きすると汁ばかり出て来て料理全体の味が薄くなって、美味しいとは思えない!


そうアスターにボヤくとアスターが私の分も食べてくれた。

それを聞いてた女将さんがハクナと豚肉の重ね蒸しを少しだけ出してナオシチをかけて私に食べて見ろという。

恐る恐る一口食べてみる。


「……あれ?美味しい!」


「フフ、ハクナも捨てたもんじゃないでしょう?塩胡椒をキツめにして水を入れずに蒸すのよ。今、王都で流行ってるケチャップをつけても美味しいわ」


ケチャップ、レシピ買わなきゃ!!!


「ケチャップってどんなもの何ですか?」


アスター、ナイスアシスト!


「……そうねー、ちょっと待ってて!」


出て来たのは棒状に切って調理したイモと赤い色のドロッとした液体。


「フライドポテトをこの赤いケチャップにつけて食べるの」


棒状のイモがフライドポテトというらしい。イモをつまみケチャップに少しだけつけて食べる。

甘い!


「「美味しい!」」


注文してたくさん食べたら、よく見てみると皆食べてる!

夕食は1人2000ステラとお安かった。

食後の運動にそこら辺の店を覗いて見ることにした、私達はどこに行っても店員さんに捕まり思っていたお土産とは別のものを買わされ続けた。

ああ、これが「カモ」か。

私もアスターもこれ以上手に持てないことをアピールする為、異空間蔵に入れずに両手で荷物を抱えて繁華街を歩いて銀細工工房デルフィに入った。


「ヤダ!あんた達ホントにカモね!でも、いいお店ばかり行ってるじゃない。まともなお土産買えてるわよ。ただ、マルカン公爵領の物も買ってるから、マルカン公爵領ではお土産買わない方がいいわ。

ジョンキル子爵領より高いし、ね」


「……教えてくれてありがとう」


私達は異空間蔵に全て入れて、工房内の銀細工を一つ一つ見た。

銀細工のちゃんとしたのは魔除けの力を持つ魔道具になる。

この工房の銀細工は良い波動を放っている。

父上達のお土産にしたいし、アスターの分も買うか。


「ねえ、君」


「マリスよ。なぁに?」


獣人の少女マリスにサイズの調整機能を付けられるか聞くと、この店のは全てついてるらしい。


「前は付けてなかったんだけど、婚約者の指輪がぶかぶかで振られたってマヌケがいたから高くなるけど調整機能を付けたらバカ売れし過ぎて、同業者のウラミ買っちゃって宿に泊まり客が来たの半年振りよ」


「……また泊まりに来るよ」


「そうしてちょうだい!」


父上の指輪は父上の浄眼の深い青のサファイアの石に魔除けの魔法陣が台座の中に刻まれた美しい物だったが金貨10枚と安かった!

それの簡易版をシュガル様達騎士団のお土産にする。

いろんなのを集めて50個買ったらマリスにおでこにキスされた!

びっくりして固まってたらアスターが笑ってる。


「さ、在庫出して来よう!」


マリスが出して来た目玉商品がアンデットの魔石で作った聖魔法が付与された指輪だった。

ほんの小さな魔石なのに何とお値段金貨100枚!!!

店頭に出した途端に売れたからアスターと私は顔を見合わせた。


「マリス」


「何よ!話があるなら工房に一緒に来てくれる!」


「わかった!」


マリスの後について行くと工房には2人のおじさん職人がいて、魔石や宝石に魔法を付与する人と研磨する人に分かれている。

そして銀細工職人はマリスらしく手慣れた手順で成型し、魔法陣を彫り込んでいる。


しばらく見学して、魔法の付与をいくつかさせてもらったらブルーレースの指輪をもらったのでアスターに渡した。

まだ、心の準備が出来てないとか言ってたがもらえたのは嬉しかったらしい。

プレゼント包装してもらっていた。


2刻して、作業がひと段落つくとマリスが薬草茶を入れてくれたのでドラゴンフレーバーで買った余りのドーナツを異空間蔵から出して食べる。


「「「うまぁあああい!!!」」」


気に入ってくれたようだ。


「で?話があるんでしょ!」


「アンデットの魔石があったら買う?」


ガタン!!!


3人の職人が椅子から立ち上がった。その身体からは闘気がもれている。


「「「出しなさい!!!」」」


「今は持って無いよ!」


焦って言うと、ガッカリした顔で3人は椅子に座り再びドーナツを食べ始めた。


「アンタ何でそんな事聞くの?」


「売れるなら売りたいから。今から取りに行くし」


「……ハア〜。子供ねえ。今、大霊害が起こってるから立ち入り禁止になってるし、アンタ聖魔法の属性無いでしょ?アンデットに食べられて終わりよ!」


「アスター、立ち入り禁止になってるの知ってた?」


「聖魔法、光魔法を持つ者以外の関係者以外立ち入り禁止になってます」


「関係者だから、立ち入り出来るね」


「アレク様なら大丈夫ですよ」


「……アレク?あー!!!アンタがアレクシード=クロスディア⁉︎5000個もアンデットの魔石、バカ正直に採取組合に持って行ったのよねぇええ!!!」


「……いけなかった?」


「今度はちゃんとウチに回しなさい!もっと高く買ってあげるから!」


「……わかりました。氷月の前に来ます」


「バリーさん、契約書、作って!ユンさんどれくらいの大きさなら付与しやすい?アレクに教えてあげて!」


魔法付与師はユンさんというらしい。

大人の爪くらいの大きさの魔石がいいらしい。

…それってクズ石じゃないか。

ひょっとしてものすごく損したんじゃないかな?


アスターが契約書を読んでおかしな所が無いか確認してくれてる。


「10年間の契約ですか?」


「大霊害じゃ無くてもアンデットは湧きますよ?私は1年間で5600個の魔石を手に入れたので」


「ああああ!何で、その時持って来てくれなかったのよ!」


「だってアンデットの魔石がそんなにお金になるなんて思ってなかったもの」


「辺境伯は知ってたんでしょう⁉︎」


「……父上、採取組合にしか持って行ったことないから知らないと思う」


職人さんたちは暗い目で呟いた。


「これだから、神官様達はよう!」


「……採取組合めぇ」


1カ月200個の納品で、1年10カ月で2000個納品。

金額は、えっと、見間違えかなあ?


「マリス、ここ、金額合ってる?」


「ちょっとアンタ、幾らで売ったの⁉︎これでも安い方よ!!!」


金貨2000枚。クズ石がこんな値段なんて!!!

もう採取組合に持って行かない!

契約書に即サインした。

お読みくださりありがとうございます!

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