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69話 家族会議~友人を添えて

夕食には家族全員と、アスター、ラプナー、ダン、ヨザック兄上の残した成人前の弟子達。お父様とエイリーン兄上。

市場と、店と宿の立ち上げ、道場開きの事を話すとお父様とエイリーン兄上が「エトレ流は?」と聞いてくる。


「クロスディア領でお願いします!」


「ホロイは、仲間思いだったと聞くから、庭師や傭兵達がまだ、屋敷を守っているかもしれない。その時の対応はどうするのです?ルークシード」


「荒くれ者じゃなかったら、雇います」


「その点は大丈夫でしょうが、ルークシードに従わないかもしれないんですよ」


「話し合ってみます。ただ、お金の補償が問題ですけどね。それと、私が逆恨みされて無いといいのですが」


旧マルカン公爵関係者が捕まったり、殺されたり、と罰せられたのはクロスディア辺境領に領兵を挙げて攻め入ったからで、私のせいでは無いのだが、逆恨みする人もいるだろう。

そう言うとお父様が一言。


「血祭りに上げてくれるわ!」


「わー、わー、わー!帝国みたいな真似してたら鉱山送りになります!本気で止めて下さい!」


「あちらが剣を抜けば、こちらも抜いて良かろう?」


「ダメです!警備兵を呼んで下さい!」


「それでは殺されるではないか!」


「とりあえず逃げましょうか?」


「はい、はい、どっちも間違いだから!正解は多少の手傷を与えて捕縛する。です!その後領兵に引き渡すの!逃げたり、殺したりしたら、いろんな意味で人生終わるよ!」


ルティーナ様に怒られた私とランドルフお父様はへこんでしばらく無言で食事を取った。

久しぶりのリョウちゃんの親子丼はとても美味しい!

2杯目をお代わりして食べていると皆が私を見ていた。

父上が食事の後、リョウちゃんを呼び出しチップを渡していた。


「ルークシードがたくさん食べている。ありがとう。私たちも美味しかったよ。少ないけど感謝の気持ちだ」


リョウちゃんは、微笑みカーテシーすると食堂から出て行った。


「リョウちゃんは、チェルキオ語はわかるけど、話せないんです。怒らないで欲しい」


「見るからに異国の子供にそこまで求めてませんから心配しなくていいですよ。ルークシード」


「それは失礼しました」


ここからが本題だ。

リョウちゃんにロトムと連絡を取って貰ったら夕食後に来るとの事だったのでその前に決めてなければいけない事がある。


「私は売り子さんを連れてバフォア公爵領で暮らすつもりですが、この屋敷はどうしましょう?」


「俺たちは?」


パルミの心細い声に慌てて答える。


「全員連れて行くから、大丈夫!ヨザック兄上にも報せておくから!」


リトワージュ剣術の門下生達は張り切って荷作りをするようで、食堂から走り出て行った。


「そうだな、工房もあるし残して置きなさい。使用人を何人か、住まわせてたら大丈夫だろう。私も爵位をどこまで落とされるか、わからないから当分はこの屋敷でルティーナといるよ」


「助かります。父上。私は明日にでも、ホロイ邸に行って参ります!エイリーン兄上も一緒に行っていただいてよろしいでしょうか?」


「いいとも!私が働く場所だからね」


「お願いします」


メイド頭のアメリアさんが食堂にロトムと、そのお供を連れてやって来た。総勢7名。

ロトム以外は全員大人だ。


「遅くなって済まない!ルーク。大変だったな。おめでとう。これ茶菓子にしてくれ」


木製の籠を渡されて、受け取ると美味しそうな香りがする。木箱に収められてる茶菓子を紅茶と一緒に出すようアメリアさんに言って籠を持って行かせた。


ロトム達がテーブルを挟んで向かい側の席に座るとロトムから話が始まった。


「ルメリー姉ちゃんに言われた通りバフォア公爵領で橙証になったけど屋根付きの露店に入れるって、ホントか?ルーク」


「良かったらテーブルと椅子をプレゼントさせてくれるかな?」


「いいのか?」


「いいの。苦労かけたね」


「うん、スゲー大変だった。逃げなかった俺たちを褒めて欲しい!警備兵ありがとうな!姉ちゃんから聞いた時には皆がホッと一安心したよ」


ナニソレ?!聞いてないよ!ルメリーさん!!


「治安悪いの?」


「「「「「「「最悪だよ!」」」」」」」


「そうか…警備兵を状況次第で増やすからそこら辺は安心してくれる?あと、お願いが2つあって、1つは青証以上のコックさんを1人と即戦力のシェフを補佐する料理人を4~6人欲しいのと、賄い付きの露店主達の宿舎にリョウちゃんみたいなコックさんを3人欲しい」


「青証かぁ。何日待てる?」


「10日ぐらいで店が開くようにしたい。でも、建物の修繕工事しなきゃいけなかったら、最悪1カ月はかかるかもしれないけど、明日様子を観てくるから明日の夜また、会ってくれる?ロトム」


「ごめん!俺、明日はパーティーが入ってるから、誰かここに来てくれないか?」


するとロトムに付いて来てた大人の中から黒髪に黒い目の小柄な中年男性が挙手した。


「俺がイコウ。俺も働く場所の確認をシタイ。見学にイッショに行っても?」


「良いですよ。お願いします。朝早いですから、今日はこの屋敷にお泊まり下さい。私、ルークシード=クロスディアと申します。よろしくお願い致します」


相手から手が差し伸べられて指先で握手を交わす。


「ゲンシンだ。ルークシードさん、よろしくタノム!」


「ルークでいいですよ。私が年下ですから呼び捨てで構いません」


ロトムが挙手したのでそちらを見る。


「一応教えとく。俺らの屋台は肉まんと、ラーメンと焼き鳥とドーナツ屋だから。屋根付きで4枠は取ってくれ」


「了解!」


フフ、食べられる物ばかりだ!嬉しいな!


紅茶とお菓子が出てきたのでティーブレイクする。

ロトムが書類を持って私の隣の席に引っ越して来た。

書類を広げると図面だった。


「これがラーメン屋の机の配置図。ここの長い机はカウンターな!肉まんと、焼き鳥とドーナツは持ち帰りで。受け渡しのカウンターだけあったらいい感じ。食堂はどんな感じの建物なんだ?」


「一年中花の咲く広い庭があるオシャレな建物みたい。大きさはそこそこあるんじゃないかな。何でも持ってた豪商ホロイが愛した女性達の為に作った建物らしいから」


「「「「「「「ハーレムかよっ!」」」」」」」」


「まあ、何だか知らないけど宿にするって言ったら登録申請料が金貨5億枚要ったから、広いんだと思う」


皆が吞みかけていた紅茶を吹き出した。

私付きのメイドのイライザがテーブルを拭き上げる。

私はロトムにデコピンされた。


「だと思うぅうう?!スゲー広いに決まってるだろうが!このおマヌケさんめ!食堂は余ったからやるのか?ああ~ん?!」


「組合長にやるように進められたんです。ごめんなさい」


ロトムはすねている。


「ロトム、ごめんなさいってば!怒ってる?勝手に決めて」


「いや、スマン。自転車操業状態だから、うらやましくてなぁ…。物件さえあればどんな場所でも何とかなるのに!」


私は空き家になる隣の屋敷を売るつもりだったが、ロトム達にあげる事にした。


「じゃあ、始末に困ってる屋敷があるんだけど、いるなら、あげる」


「何処にある屋敷なんだ?」


「右隣の屋敷。1週間以内にバフォア公爵領に引っ越すから、どうしようと思ってたの。絨毯やカーテンくらいしか無いけど家具も付けてあげようか?ルメリーさんにはいつもお世話になってるからそのくらい鼻クソでも無いよ!」


「「「「「「「お願いします!!」」」」」」」


「はいはい」


ロトムに右隣の屋敷をどうしたいか聞くと、レストランにしたいらしい。ついでに住居にもしたい、事務所にもしたいようだ。

ロトム達を連れて右隣の屋敷を案内する。アスターとラプナーも付いて来た。

主にラプナーが案内役を務める。


「引退した子爵様のお屋敷ですからこじんまりしてますよ。アスター、ロビーにシャンデリアを1つ」


「はい。ラプナー」


使用人達だけだから付けて無かった物も片っ端からラプナーがチェックしてアスターがメモする。

困~った顔をしてるロトムの脇腹を指先でつついた。


「どうしたの?ロトム」


「トイレが足りないかも、…いや、はっきり言う!足りない!」


「私ね、騙されて便器いっぱい買ったから持って来るね!いくつ要る?」


ロトムが思わずといった風に吹き出した。

これには、私がすねた。

ロトムは必死に私の機嫌をとるのだが、私はしばらく無視してやった。


「もう、悪かった、って!焼き鳥50本食べさせるから許してくれ!!」


ゴクリ


「許す」


食い意地に負けた…。らんら~ん♪焼き鳥50本~♬

1階2階は全部見学して、終わったので名義変更と店舗登録申請を済ませようと採取組合の紫証の受付窓口に転移して行くと、ものすごく疲れた顔のイキニシア組合長がいた。


「組合長、今良いですか?」


「ああ、ロトム様。…ルーク様とお知り合いで?」


「はい、友達なんです」


「では、王都に実店舗を!?」


「はい、法衣貴族街ですがルークに屋敷を貰ったんです」


「おめでとうございます!!では、権利証の譲渡と店舗登録申請をしましょう!」


今さっきまでの疲れがウソみたいに精力的に事務を片付けるイキニシア組合長は働いてないと落ち着かない人みたいだ。

店の規模から1カ月の売り上げ予測まで計算してロトムと話している。


「最初の仕入れが出来れば何とかなるんですが、ゴロゴ子爵様が、パーティー代金を支払う気配も無いんです!」


「踏み倒すつもりなら、こちらも気合い入れて、回収させていただきますよ!」


大人2人で盛り上がってるところ悪いが、私にも用があるので、ロトムの紫証に私の橙証を重ねて魔力を流した。

持ってけ!金貨1億枚。


ロトムに紫証を返すと残高を確認して倒れた。


「すみません、私ももう1軒酒店の登録申請がしたいのですが」


「それは、ロトム様にご協力いただくしかないですね。ロトム様!ご恩返しの時ですよ!起きなさい!」


イキニシア組合長は容赦なく往復ビンタでロトムを起こした。


「ヘキサゴナルでは、成人前の酒類の販売は法律で禁じられてるんです。だから、ロトム様がお店で売って差し上げなさい!」


ロトムは頬を撫でながら「どんなのか出して」と言ったので、アイテムボックスに入れてた果蜜酒を炭酸水で割って出したら一口飲んでうなずくと、炭酸水と果蜜酒の割合を変えてイキニシア組合長にサーヴした。

薄いんじゃないかと心配していたら、イキニシア組合長は一口飲んでうなずく。


「「売れます!」」


「露店で、グラス1杯幾らかで売り出したいのですけど、私はお酒の値段にうとくて。帝国では、グラスの縁にカットした果物を添えて大銅貨1枚で提供してます。果物が高いから何ですけど」


「1000ステラは高過ぎます。高くても600ステラくらいですね」


「そうだなぁ…700ステラくらいかな?牛乳で割っても美味しそうな感じがする。果物はバフォア公爵領ではめちゃくちゃ安いから、グラスに引っ掛けるのいいと思う!」


「ミルク持って無い!」


「後で試してみるから、封切った奴くれ。ルーク」


「送って行く時あげるよロトム」


「では、お酒を買ってからの仕入れは全部ロトム様が受け持つという契約でよろしいでしょうか?」


「「お願いします」」


「輸送は私が運ぶから、心配しなくていいからね。無くなる3日前に教えてくれると助かります!」


「これなんて名前のお酒?」


「果物の果にハチミツの蜜にお酒で“果蜜酒”です」


「他の果蜜酒は無いのかよ?」


「これが売れたら作ってくれるかも!」


「開発には時間がかかるから、先に言っとけよ?酒は年単位だぞ?」


開発費も出してあげないといけないね。

やることが多すぎて頭が弾けそうです!

店でお酒を扱うのにも登録申請がいるので“酒類販売”の料金を支払う金貨500枚。もちろん赤証からのスタートだ。


「店の入り口で売ったら店でも買って出せるし良いよね?」


「確かに露店ですし、間違ってはいませんね…」


「ルーク、お前ってずる賢いな」


「ロトムは、お金の大切さがわかってないから、そういう意地悪言えるんだよね?ずる賢いってほめ言葉じゃないからね!」


私たちはこの時、まさか、果蜜酒が販売の露店が何十店舗も出来るなんて、ちっとも考えて無かったのだ。


一連の手続きを終えて私とロトムは帰途に着いた。

ロトムが宿にしてたのは、かろうじて橙証の民宿で安全面の不安があった。


「明日からウチの屋敷に来ない?」


「もう1週間分先払いしてるからな!ありがとう。あ、まて!!」


待たないよ。ややこしそうだから。

屋敷の自分の部屋に転移して帰って寝た。

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