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66話 断罪

各地方にいる枢機卿が一堂に集まる年に一度のお祭りだ。

ドゥルジー市国では、教皇様のスピーチと枢機卿達を載せた荷馬車でのパレードがある。

建物の中から見る分には良いが、広場で観てたら圧死するの間違いない!

ルティーナ様と復活したアスターとお父様達と王都の街に繰り出す。

ドラゴンフレーバーのドーナツ屋さんと焼き鳥屋さんは長蛇の行列だ。

仕方なく他の露店を冷やかすと、ニカレ工房が売りに来て居たので、アンデッドの魔石のアミュレットを人数分+1買う。ハンナにお土産だ。

エイリーン兄上とランドルフお父様はスリに反撃して痛い目に合わせている。

体術使えなくても捕縛術とか言うのを習うらしく簡単にスリをひねりあげていた。

やがてパレードの列が大通りに入って来た。

皆が、枢機卿の黒いローブに赤の肩掛けをして沿道に並ぶ人達に手を振っている。

エイリーン兄上が肩車してくれたので父上達がよく見えた。

ブランクロス様と目が合った。

父上の肩を叩いて私たちの方を指差すブランクロス様。


「父上ぇえーーー!」


ブンブン手を振ると父上が大きく手を振ってくれた。

ふふ、プライスレス!幸せです!

パレードが行ってしまうとアスターが、私たち全員を屋敷に転移させた。


「何で!?アスター、これからだよ!」


アスターは問答無用で私とお父様をお風呂に入れた。私にはアスター、お父様にはダンが付きっきりで、風呂から出て身支度がきちんと出来るまで逃がしてくれなかった。

イヤだと言うのに赤の正装を着せられて、髪は香油で結われてガチガチに。


「何処行くの?」


「王城です。ルティーナ様の味方が必要ですから、着いて行きましょうね?」


「剣は提げて行きますか?」


「アイテムボックスに入れていく。アスターずるいよ!そんな言い方されたら、行かない訳には行かないじゃない!」


「ご家族は必ず出席するよう言われております。ラフネ男爵もご出席ですよ?」


「で、お父様も私の子守りに行くの?」


ランドルフお父様は笑って告げた。


「クロスディア辺境領の代官になる事になってな。メイドが居ないと聞いたので半分は置いていくから好きに使いなさい。服飾に詳しい者達を置いて行く。頑張りなさい。私も頑張る!」


「お父様が代官なら、父上も安心だね!兄上は?」


「お前のところで護衛しながら、騎士を目指す。武芸大会で優勝したら良いのだろう?私の息子ならそのくらいやらねばな!」


エイリーン兄上の笑顔が引きつってます。

親の期待って重いよね!

ルティーナ様が支度を整えて玄関ホールに降りてきた。


深い緑のベルベットのドレスは確かに似合うが、ちょっと地味だ。


「この間の水色のドレスが似合うのに!これも良いけど地味過ぎるよ!」


「あのドレスは良すぎるのです。アレク様。それにエメラダ様より目立ったら面倒です!」


「私もそう思うからこの衣装変えない?」


アレクシードより目立ったら面倒臭い事になる。


「「「「「良く似合っているから問題無い!」」」」」


話の内容をごまかされた。


そして、王城のダンスホールの入り口に転移して父上達を見つけて歩いて行くと今日は非常識にも全身黒い服を着ているアレクシードに呆れる。

父上の枢機卿のローブとのお揃いを目指して見たのかな?

完全な喪服で周りから非難囂々何だけど?

アレクシードも空気が読める様になったらしい。

私を見るなり近寄って来て衣装の交換を求めた。


「アレク、父上と同じ色の服を着せてあげる」


「兄上、それ、喪服でしょう?私が持ってる服に着替えて下さい」


シャンパンゴールドの正装を出すと今、私が着ている赤の正装がどうしてもいいらしい。

面倒臭いが着替えて渡すと腹周りが入らないらしくて上着だけ着替えて行った。

その上着もパンパンだ。

私は自分が痩せてる自覚はあったが、これだけ体格に差があると思ってなかった。


私は持ってる正装の中で一番大人しい青の正装に着替えて父上達のテーブルに付いた。


「ルークが迷惑をかける。アレクすまない」


父上が謝らなくていいし。


「やっぱり赤はルーク兄上の色ですよね。お似合いです」


「ルークシード、太りすぎではないか?みっともない!」


父上の冷たい視線にアレクシードが動揺する。


「父上!アレクが痩せてるだけです!私は太ってなどいません!」


「まあ、そうだろうな。お前たちが贅沢な生活を楽しむせいで私たちはサラダと具の無いスープを飲むような生活だったのだからな」


ルティーナ様のエメラダ親子への視線が冷たくなる。

エメラダが甲高い声を立てる。


「んまあ!貴方達には魔石があるでしょう!押し付けがましい苦労話など聞きたくもありませんわ!私より若いだけが取り柄の平民の女を妾にしたからと言ってあんまり大口を叩くようならお父様に一言言ってもらうようにしようかしら?フフフ」


「最期だから言っておく。私はお前たち親子が大嫌いだったよ」


エメラダが更に激高する。


「私たちから、逃れられると思っているの?!大きな間違いですわ!使用人達全員を手に掛けたのをお父様が見たのを忘れたの!!黙っていて欲しかったら、大人しく貴族の生活をさせなさいよ!」


「父上。ずっと聞きたかったのです。父上が理由無くそんな非道を行うとは思えません!本当は何があったのですか?」


「私が屋敷に帰ったら…屋敷にいた者達全員がアンデッドになってたんだ。執事のテオが毒を盛られて死んだがアンデッドになったのでお導きをして下さいと言った後すぐに、私に襲いかかって来て、私は屋敷にいた使用人達全員を葬ったのだ。アレクシード、いや、ルークシード。お前を裏切った私を信じて慕ってくれたそなたが聞いたらいつでも真実を話すつもりだった。この度神の御業により真実だと確認されたので、ようやく、エメラダ親子を弾劾出来る!」


周り中の貴族達が、父上を見ている。

近衛兵達が、ラスター伯爵一族を連れて行く。

エメラダ親子も拘束されて、連れて行かれる。


「父上!私は知らなかったんです!助けて下さい!」


「アレクシード。お前は全部知った上で、エメラダと一緒に私を脅迫し続けていた。私と血が繋がって無い事を知った時の私の気持ちがお前にわかるか?潔く死ね」


「そんなぁ…ウソでしょう!父上!父上!父上ぇ!」


連れて行かれたアレクシードを冷たい目で見つめる父上の手を握る。


「ルークシード、ありがとう。私を信じてくれて。これで、私は罰を受けられる」


「私も受けます!」


「そなたは被害者だ。罰を受ける必要は無い!」


「父上!何と言われようが、陛下を謀ったのは私も同じ。罰を受けます!」


[グレンシード=クロスディア辺境伯、ルークシード=クロスディア、謁見の間に来なさい]


謁見の間は物見高い貴族達が囲いを作っていた。私たちが行くと道が出来た。

父上を罵倒する貴族達を睨みつけながら、陛下の前にひざまずく。

ラスター伯爵が縄をかけられたまま、近衛兵達に連れて来られた。


「陛下、私も被害者なのです!まさか、この男が、アレクシードをルークシードと謀るとは、思わなかったのです!この男は、クロスディア辺境伯爵家がお取り潰しになる事を恐れて真実を知る者を皆、手に掛けた上で、私たち親子を脅したのです!」


「バセット、あの者を連れて来い」


陛下は近衛兵に誰か連れて来させた。

いかにもずる賢そうな、上目遣いのその男を見るなりラスター伯爵は、顔色が悪くなった。


「陛下を誑かしたのか!ドラン!陛下こやつは金次第で白を黒という奴です!信じてはなりません!」


「そうか。良く知ってる者のようだな。ドランとやら、真実を話すが良い」


「はい、3年程前の炎の月のある日、旦那様、いえ、ラスター伯爵は金と権力が手に入ったと上機嫌でお帰りになるなり高いお酒を浴びるように飲みました。

翌日の昼にあまり、感心しない悪いことに手を染めたのだとわかりました。

【竜の逆鱗】というクランの代表者がラスター伯爵に金を払うように大人数で、屋敷に押しかけて来たからです。

ラスター伯爵は関わってはいけないと言っていた悪党一味の塊のクランに酒を振る舞い食事をさせ、…毒殺してしまったのです」


「陛下にデタラメを教えるな!」


「私には、真実を知るスキルがある。今の話に嘘は無い。そなたは少し黙る事だな」


「そんなスキルがあるとは、聞いた事がございません!」


「そなたに認めて貰わずとも良い。ドランよ、続けよ」


「はい。それをラスター伯爵領の騎士達に金を掴ませて処分させて、金に困ったらアレク様の事を持ち出して、クロスディア辺境伯爵に金を無心するようになったのです。クロスディア辺境伯爵はお金に困ってるようで、アンデッドの魔石で支払うようになりました。それが間違いだったのです。アンデッドの魔石は他国では、驚く程高価で輸出が禁じられているブラストへラスター伯爵は売って自分たちの財貨にしたのです!その数20億個に上り、ブラストがアミュレットを着けて古戦場を超えて攻めて来たらどうするのかと私が聞いたら口封じに毒殺されそうになったので陛下に保護を求めたのです」


「グレンシード、本当か?」


「最初から魔石で支払うように脅されて仕方なくクズ石と呼ばれている物を支払っていたのです。

ルークシードにクズ石では、無いと言われるまで騙されていた事に気付きませんでした。

気付いてからは自領の商売の為にしか、使ってません。まさか、ブラストへ密輸してるなどとは…」


「もう、終わったことを言っても仕方ない!だが、ラスター伯爵よ、そなたに聞きたい事がある。全部“はい”と答えよ。嘘かどうかは私が判断する」


「それでは、冤罪が生まれます!私がいかなる質問にも素直に答えてみせます!」


陛下の眼差しが厳しくなった。


「そうか。今から聞く質問は個人的な事だからな、あまり、時間をかけたくなかったのだが仕方ない。ラスター伯爵よ、お前はルークシードを暗殺しようとしたな?」


シンと、静まり返る謁見の間。

ラスター伯爵が答えに窮している。


「ハァー、度しがたい事だな。それは誰が指示をした?なぁに、私も娘や孫を持つ身、全ての罪をそなたが負うのも理解は出来る」


「私が、やりました!如何様にも罰して下さい!」


「理解は出来るが、納得は出来ぬ。お前たち親子、いや、本当のアレクシードにもルークシードに行われた拷問を全て、受けてもらう。その上で生きていたなら、ルークシードと同じ手順で治療してブラストに国外追放して許してやる」


「ありがとうございます!」


「…ヤケに嬉しそうだな?ラスター伯爵。ルークシードを拷問した男は、半分もやらない内に殺してくれと言って泣いたし、拷問をそなたから請け負った男は、痛みに耐えきれずに舌を抜く前に舌を噛んで勝手に死におった!

エディック=ラスター。そなたの一族郎党は借金奴隷とする!ラスター領は借財の質としてクロスディア辺境領に合併する!エディック=ラスター、エメラダ=クロスディア、アレクシード=クロスディアは、4度のルークシードの暗殺未遂、ブラストへの魔石の密輸、度重なるクロスディア辺境伯爵への脅迫、それにまつわる大量毒殺実行犯として、拷問の上、ブラストへの追放とする!」


「クロスディア辺境伯爵には、処分が無いのですか?!納得いきません!」


どこのどいつが言ったのかと視線をやれば、そこら辺にいる貴族達が「そうだ、そうだ!」と騒ぎ立てる。


「私が妻を持つよう強要した。それにクロスディア辺境領を治める事自体が罰のような、物なのだ。グレンシード以外の枢機卿達にクロスディア辺境領を治めるように言ったら、皆が、拒否した。

クロスディア辺境領を治める気概溢れる聖魔法使いがいたら、名乗り出よ!」


「では、わたくしめが、拝領させていただきます!」


「私も聖魔法使いですぞ!」


「父上よかったね。解放されて。大丈夫!父上とルティーナ様は私が養ってあげる!」


「そうか。私も冒険者になるか。色々教えてくれますか?ルークシード」


陛下が空咳の後、宣言する。


「諸侯達まずは、1カ月程度の試練を乗り越えたら、認めよう!ただし、旧ラスター領は、グレンシードに贈られる物とする!旧クロスディア辺境領が欲しいならば実力を示せ!ナサニエル枢機卿よ。見届け人を頼む」


ナサニエル枢機卿はイヤなのを隠しもせずひざまずくとウンザリした声で「拝命致します」と言って父上の所に来た。


「グレンシード、私の代わりに王家の礼拝堂を頼む」


「わかった。すまないな」


「本当にな!今度、飲みに行こうぜ!」


ナサニエル枢機卿の陽気な一言に父上も微笑むのだった。


「それから、ルークシードに罰をと言う事だったが、お前は十分罰を受けている。

飛行艇からの魔法を封じられて捨てられたのに始まり死んでもおかしくない拷問をされた。

それで生きてるのだから、生きよと、神がおっしゃっられているのだ。

もう、狙われる事は無い。

存分に遊んで存分に学び、いつかまた、騎士としてのそなたを見る日を楽しみにしておる。

下がって良い」


「陛下の寛大なる処置に感謝申し上げます」


「陛下、紹介したい者がいるのですが」


「聞こう」


父上の後ろで控えていたランドルフお父様を陛下に紹介する。


「私の領地の代官のランドルフです。今までキスカ帝国のラムズ領を治めておりました」


「話に聞いている。ここ3カ月程で大変な苦労をしたな。我が国へようこそ。貴方を歓迎する」


「それから、私の転勤が決まったので、陛下にお別れを」


ナニソレ?!聞いて無いよ!


「まだ、半年先であろう?その時に言えば良い」


「いえ、辺境領を託せる事がわかったら、もう決定なのです。キスカ帝国領のチェルキオ教会の司祭になります。旧ラスター領をルークシードが継ぐまではランドルフに一任しますので、皆さんご協力お願い申し上げます」


父上、殺気が漏れてるよ。

なーんだ!父上と一緒に居られるんだ!嬉しい!

浮かれていると、父上に子供抱っこされて、謁見の間から下がることに。


ルティーナ様とアスターと合流して私の屋敷へ転移したら、今まで稼いだ魔石を取りに行きたいと父上が言うのでクロスディア辺境領まで、転移した。

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