表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/115

6話 アミュレットと庶民の服

朝4刻に起きると昨日買った服に身を包んだ私達は、中央広場の屋台をハシゴして買い食い。

何故か屋台のおじさん、おばさん達にオマケをたくさんもらえた。

噴水の縁に座って鶏の皮のタレ串焼きや、野菜と魔獣肉の包み煮、ピッサレーラという平たい切れ目がある白いパンにパウの実のジュースを楽しむ。

食べ方がわからないのでアスターの食べ方を真似して食べる。


ちなみに全部アスターの奢りだ。


まずは串焼きはピッサレーラに入れて串だけ抜く。

なるほど!具入りパン出来上がり!

あむ!ん、タレが濃い味だから小麦の味しかしないピッサレーラとよく合う!

私でもピッサレーラは2枚食べれた!

魔獣肉のシュウ包み煮は魔獣肉がふわふわ柔らかくて淡白な塩味のスープをスプーンですくって飲みながら食べたが半分も入らなかった!

美味しいが、お腹がパンパンだ!!!

でも、パウの実のジュースは飲める。

私の食べ残しはアスターが食べちゃった。

木の器とスプーンはそれぞれの屋台に戻すと器の代金が返ってくる仕組みだった。


「おいしかったです!オマケをたくさんありがとうございます!」


「よい一日を!」


広場から庶民の服屋さんへ転移。店に入って店員さんにアスターが話しかける。


「若君とお忍びで城下町で遊びたいんだけど、平民の食堂でこんな服は目立つでしょう?普通の服を7組分僕と若君の分を見繕ってくれないでしょうか?」


まだ、若い女の子はベテラン店員さんに助けを求める。

私の分は、直ぐに決まったが、アスターの分が決まらなかった。

良い男は何を着せても目立つのだ。

買い物が終わったがもう5刻半過ぎている。


工房地区のアミュレット屋さんに転移。

すると開いてない。

隣りの鍛治屋さんで聞くと6刻からだと言う。

近くの食堂を聞くと案内してくれたので、食事をご馳走した。

ピリ辛系の味付けだが、美味しかったのでアスターの分を1人前追加で頼んだら、アスターは辛いのがダメらしくて、水で流し込むように食べていた。

親切が迷惑になった。ごめんなさい!

聞くとアスターが遠慮するだろうと思い聞かなかった私のバカ!


「……ごめんなさい。アスター、つぎからはちゃんときくからしょうじきにこたえてね」


「はい。アレク様」


何故かまた、頭をナデナデされた。

アスターめっちゃ嬉しそう!


食堂で案内してくれた鍛治屋さんと別れてアミュレットのお店に今度こそ入った。


「ここは貴族(アンタ)達が来るような店じゃない!」


いきなり怒られた。


「おじいさまにためたおこづかいでおまもりをかってあげたいのです。ダメですか?」


ウルウルお目々で見つめるといかにも職人、といったオッさんが怯んだ。


「……わかった!どんなのが良いんだ⁉︎…待てよ、幾らくらいのお小遣いなんだ?」


「こうようきんか「わかった!奥から持って来る!」」


つるっ禿げのオッさんはガニ股でカウンターの奥に入って行った。

店内の商品は、細い革紐を編んだり組んだりして綺麗な色の魔石を上手く配置して繊細な仕上がりの商品にしている。

アスターが一つブルーレースのネックレスを手にして頬を染めている。


「こいびとににあうといいね」


「そ、そんなじゃ、ない、です!!!お、幼馴染に、お土産に、買う、だけです!」


ハハハ、真っ赤だ、アスター。

つるっ禿げのオッさんが戻って来た。手には青いビロードの仰々しい箱があってオッさんらしくないなと思いながらも中を覗き込む。

いろんな色の魔石や宝石がある。こっちは銀細工のアクセサリーだが、ピンと来ない。

綺麗なんだけども、なんか違う。


「かわひものがいい」


するとつるっ禿げのオッさんはニカッと笑いカウンターの中から木箱に詰めたいろんな色の革紐で作ったアミュレットを3箱出した。


「ネックレスと、ブレスレッドとアンクレットだ。

ウチまでアンデットの魔石が回って来なくてよう、

ここんとこ貴族さんらは回れ右して帰るんだよ」


「ふぅん、どれっくらいのおおきさのがほしいの?」


「そうだなぁ、アンデットの魔石は高いからウチの店だとこれっくらいだな」


父上の指輪の石くらいか。結構大きいな。


「かずは?」


「あるだけ買うに決まってるだろ!!!」


ほ〜、後悔するなよ!


「ところでへいかのめのいろってどれ?」


「トルコブルー何だが、それも人気があって品切れなんだよ」


「良かったら、コレをお使いください」


アスターが成人の印のトルコ石の襟留めをつるっ禿げのオッさんに差し出す。


「アスター、それはダメ!おとうさんなくよ?」


しかし、オッさんはオーバルカットの石を台座から取り外しさっさと細い焦げ茶の革紐で編み込み始めた。


「しばらくかかるから用があるなら済ませてこい、代わりにこの襟留めを使えよ!」


青瑪瑙の襟留めは平民用の成人の印だ。

アスターはニコニコしながらその襟留めを着けた。


「……ごめん、なさい!アスター、わたしのワガママで」


思わず涙が出たが、アスターにいきなり子供抱っこされて、びっくりして涙が止まった。


「お役に立てて嬉しいです。泣かないでください」


オッさんもうなづく。


「それが騎士ってもんよ!そのネックレスはやるよ。いいもん見れたしな!明日の朝までには出来てるからいつでもいいから取りに来いよ!」


「「ありがとうございます!」」


私はアスターに下ろしてもらって2人で貴族地区の検問所前に転移した。

虹証と身分証をそれぞれ提示して師匠からの手紙の宛先人が貴族地区に住んでるか聞くと1人は住んでるが、もう1人は王城住まいだと言う。

案内してくれるというので、お金でお礼しようとしたら、断られた。


「お菓子なら食べます!」


「ごじつおもちします」


ドルク様に美味しいお菓子のお店を聞こう!

騎士様は馬で移動して私達は転移して、追いかける。追いかけっこは半刻続いた。

蔦まみれのその屋敷は人が住んでるのかどうか、怪しい物だったが、凄い勢いで玄関が開いて美魔女が出て来た。ドレスの上からでもわかるダイナマイトボディに年齢不詳の妖艶な美貌の女性は私の前にスタスタと早歩きでやって来ると手を出した。


「紹介状!」


「あ、はい!」


異空間蔵からモリアーティナ様宛の師匠の手紙を出すと屋敷に入って行き直ぐに駆け戻って来た。


「1年ちょうだい!って伝えて下さるかしら?あと、先払いで公用金貨500枚ちょうだい」


紫証に虹が掛かってる虹証を出されて青証を重ねて魔力を流した。

さようなら金貨500枚。


「青証なのね、体の調子が悪いならちゃんとした人に診て貰いなさい!1年後にまた来なさい」


「……えっ?」


アスターが心配気に私の顔を覗き込む。


「……そういえば、顔色が良くないですね?気が付かず申し訳ありません!」


「いやいや、そんなことないよ!はだだけはきぞくっぽくしろいから!」


「いや、君、【霊害】を受けてるっぽいよ?かなり長期間に渡ってアンデットと戦ったりしなかった?」


案内した騎士が心配そうに尋ねた。

思いっきり戦ったよ!


「……しました、ね」


「明日の謁見が終わったら、教会に行きましょう!アレク様」


「ただ、教会は高いからクロスディア辺境伯に治してもらった方が良いよ?」


父上、疲れてるだろうから、教会に行こう!

お金はまた、稼げばいいんだよ。

アスターにそう言うと渋々うなづいた。

案内役さんにお礼を言ってその場で別れてアミュレット屋の前に転移した。

待ち構えていたオッさんに捕まって最後の仕上げをさせてやると言われて店の奥にある工房に連れて行かれた。

魔法陣が描いてある羊皮紙の上にトルコ石のお洒落な編み上げブレスレットが置かれていた。


「風魔法使えるか?」


「はい!」


「人差し指の先にウインドシールドを発動する時の感じでやって見ろ!」


「……きぼはどのくらいで?」


「1人守れるくらいだな。この石だとあんまり大きな魔法は入らない」


なるほど!付与させてくれるんだ!

頑張るぞ!

人差し指を石に当てウインドシールドを発動する要領で指先に魔力を集める。見る見る内に魔力が吸い込まれる。


「そこまでだ!!!」


「……あんまりはいらないですね」


ブレスレットを持ち上げて、ジッとトルコ石を見るオッさん。


「うわ、どんだけ魔力持ってんだ。一回発動したら確実に割れるな」


「おじいさまがそれでまもれるならいい!」


「いい子だなぁ、お前。で、支払いな?金貨2枚な」


「やすいよ!」


「だから、オレの店は貴族向けじゃねーって、言ってるだろう!イヤなら商品置いてけ!」


「……はらう」


すると紫証に赤いラインが1本入った虹証を出されてマジマジ見つめていると、おでこを叩かれた。


私の青証を出すとオッさんは面白い顔をした。


「ドラゴンでも狩ったのか?」


「ん?ナイショ!」


「いいじゃねーか、言えよ〜!」


「こんど、そざいもってきてあげる!」


「何だ!お仲間か!いいの回してくれよ」


「うん!」


アスターが口元を手で隠して笑ってる。

誤解をそのままにして布張りの木箱に入れて大切に梱包されたプレゼントを異空間蔵に入れる。


ドルク様を訪ねて工房へ行くとちょうど店内にいた。手招きをすると出て来た。


「まだ、剣帯は解放されてないようじゃが?」


「おうとでいちばんおいしいおかしやさんって、どこ?」


「ドラゴンフレーバーじゃ!!!あそこしか無い!」


なんでも、油で揚げた「ドーナツ」というお菓子がメチャクチャおいしいらしい。


今度来るときは買って来てあげよう。

中央広場に転移して買い物しながら「ドラゴンフレーバー」の場所を聞くと近くだったので食べ歩きしながら店に行く。8列に並んでる行列に加わる。

甘い香りがふんわりして来てお菓子は食べたことが無いけど、こんなに美味しそうな匂いがするなら食べたいかも。

でも、この行列はイヤだ。ドルク様の分も今買おう!

4半刻待ってたくさん買って貴族地区の検問所にお礼の差し入れ。

ドルク様のいるお店にも差し入れしたらドルク様以下レンダルク工房の皆さんに見送られて、宿に転移して部屋でお風呂に入る。


明日は謁見。

考えるだけで疲れる。

ふかふかのベッドでぐっすり眠った。


お読みくださりありがとうございます!

いいね、感想などの応援お願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ