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54話 カルトラ離宮

朝まで私はなんちゃって私部屋で眠って朝早く起きて部屋の大きさに驚いた。

私の実家の部屋が3つ入る!

床に敷いた絨毯がミニマットみたいだ!

灯りを点け、エトレ流剣術の基礎の型を復習う。

随分形になってきた。

手足をただひたすら無心に動かして愚直な程繰り返す。

汗が目に入ってようやく止めた。

アスターからお腹に渡された懐中時計を確かめるともう9時だ!

木剣をタンスの上に置くと、いつから居たのか侍従の青年が、うやうやしくタオルを両手に捧げ持って待っている。


「ありがとう、楽にして」


すると帝国人の青年侍従は私の部屋着をテキパキと脱がし暖かい湯の入った桶で絞ったタオルで私を拭き新しい服を3つ揃えで着せた。


「引っ越しだから、この服はもったいないよ」


「まさか、お手伝いなさるつもりですか!」


「だって私、アイテムボックス持ちだし、転移も出来るし」


「とんでもない!若様は命じて下さればよろしいのです!」


「良い主人とは自ら働いて見本になるものだとおそわったのですが…」


「では、覚え直して下さいませ!良い主人とは使用人の仕事を取らない主人です!」


負けた…。

負けてはいけない戦いだったのに!


「名前を聞こう!」


「ダンと申します。若様付きの侍従の1人です」


敵将の名を聞いたつもりだったのに

ものすごく嬉しそうに名乗られた。

それに侍従の一人だとぉ?!


「侍従はダンだけでいい。必要なら侍従見習い2~3人に仕事を割り振るように」


「かしこまりました!若様の家令として励みます!」


ヤバい!敵に塩を送ってしまった!

ダンは若いし、これから何十年もの死闘になるだろう事を思って臍をかむ思いがする。

‥師匠に「臍」の意味、聞いておけばよかった!

しょうもない事で力んでいた私を抱っこして石造りの屋敷の廊下を爆走するダンに言いたいことがある。


「私の意志は?」


「皆さまをお待たせしているのです!プライドは二の次です!」


部屋を左右に見ながら階段へと突入した。

螺旋状になった階段を2階分下りて高そうな扉のついた部屋を2~3過ぎるとここは帝都の正門かと思うような仰々しい白に金の装飾の大きな扉の前に着いた。

左右には侍従が付いていて扉の開け閉めをしてくれる。

そこにはどこかの国の王族の食卓ですか?とききたくなるような大きな長ーーーーーい派手な大理石で出来たテーブルがあり、お誕生日席の左右にアスターとバランが疲労困憊した様子で席に座っていた。

私はアスターの隣の席に座り二人に謝った。


「遅くなってごめんなさい!」


「いや、よろしいのです。食事にしましょう」


「二人だけ?アミル達は?」


「今朝、引っ越ししないか打診したのですが、堅苦しいのはイヤだそうです。申し訳ありませんでした」


あんなに恐ろしい味付けの料理を選ぶぐらいイヤなんだ。

わからなくもない。


「コックを一人派遣してあげて下さい。バラン、費用は私が負担しますから」


「かしこまりました。パウエル、道場に一人コックを派遣するように整えてくれ」


するとバランに給仕していた中年侍従が骨を咥えた犬の如く喜んで立礼すると席を外した。

皆さん仕事を愛してらっしゃる。

命じられるのが喜びとか特殊なモノを心に飼ってませんよね?

少々余計な心配をしながら前菜の生ハムとオラジェとルッコラのサラダを食べる。

…美味しいんだけど、これいくら?

アスターは3皿目のメインのお魚料理まで食べ進んでいる。

バランを見ると静かに怒っているご様子。

やっぱり、この食材 帝国では高いんだ。

クロスディア辺境領と同じくらいの食料事情と考えた方が良さそうだね。


2皿目は氷河エビのビスク。

バランはもう、爆発寸前の顔をしている。

わー、誰が怒られるんだろ?ん、このスープイケる!

次に出てきた3皿目の「断崖のピカタ」でバランの怒りは爆発した。


「アレを呼べ!今、ここに、だ!」


「しかし、バラン様が先ほど命じられた事を采配なさっているのでは?」


アレ、はパウエルさん(推定40才)の事みたいだ。


「アレはそんな雑用はとっくの昔に片付けているから、使用人の食堂から連れてこい!」


ふーん。怒っててもバランが認めるくらい有能なんだ。

うわ、このピカタ白身魚の身がふわっとしてて海の香りがする。ん、美味しゅうございます!

卵の優しい甘みと薄い塩味のお出汁の効いたピカタ上等!

バランも美味しいのかカトラリーで食べるのが早い。

アスターは、食後のお茶を飲んでいる。

…アスター、早食いは太るよ?

後ろに控えているダンを呼ぶとダンは早歩きで近寄って来た。


「私もう、お腹いっぱいだから、アスターにあげて」


「アスター様もメインを2皿づつ召し上がって満足だそうです。もし、ご不快でなかったらわたくしに下げ渡して下さいませんか?ヨランの料理を食べてみたいのです!」


「ヨラン来ちゃったの?!」


「はい」


お父様達の食事が心配だ。


「ダンが食べていいよ。ヨランの食事は美味しいよ!」


「ありがとうございます!食事をしている間はハッシュにお言いつけ下さい。ハッシュこちらに」


帝国人には珍しい金髪に黒い目の15才くらいの少年は躾けられた牧羊犬みたいにダンに従っている。


「ハッシュと申します。ダン様が侍従に取り立てて下さいました。よろしくお願い致します」


「こちらこそ、よろしくお願いします。もの知らずで迷惑かけるかも知れないけど頼みます。ハッシュ」


ハッシュは深々と一礼して私の後ろに下がり、ダンはお肉のメインを片手に持つと大食堂を出て行った。

紅茶がサーヴされ、私がそれを楽しんでると、青年侍従に捕まえられたパウエルさんが大食堂に入って来た。


「この豪華な食事は何事だ?」


キレちゃってるバランの威圧感たるもの普通の人だったら漏らしてる。

それに笑顔で答えるパウエルさん。


「腕だめしです」


「お前が食べたかっただけだろうが?!この1食で何日分の食費がかかると思っている!」


「1週間分ですかな?」


「…私は言ったはずだよな?“無駄遣いは許さない”と!クビだ!」


「…まあまあ、バラン。パウエルさんもヨランがどんな料理人か知りたかったんだろうし、許してあげて」


「チェルキオの情けも3度までと申します!贅沢な調度品は仕方なく許しましたが、毎日3度の食費が上がりっぱなしでは困るんです!」


しかし、パウエルさんは強かった。


「バラン様も悪うございます!公用金貨10億枚が鼻クソだとおっしゃる方に公用金貨100億枚の予算も切り出せない上に第2夫人の話まで内緒でございます」


ルメリーさんめ、怨むよ!鼻クソ発言、本気にされたら大変だから自分でフォローに回る。


「10億枚はまだ、何とかなるとして!100億枚は私の手持ちの半分近くです。任せるのはいいでしょう。でも、1年も持たないような暮らしをされたら幻惑森林でパウエルさんの家族全員をヘブンズマンティスの餌にします。ヘブンズマンティスは生きてるまま齧るのがお好きだそうです。あ、その場合パウエルさんは一番最後に食べさせますから」


アスターが笑うのを堪えている。

バランはニヤリと笑うと真面目な顔をしてパウエルさんに去就を聞いた。


「どうする?パウエル」


パウエルさんは契約書を自ら書いて私に渡し公用金貨100億枚を屋敷の運営費用、使用人の給与等に使うことを誓った。


「で、第2夫人って何?」


まさか、私のでは無いよね?

バランを見た。バランはアスターを見た。私がアスターをジッと見つめるとアスターは視線を泳がせた。


「アスター、言って下さい」


アスターは話したくなさそうに重い口を開けた。


「実はグレンシード様がつい先日3人目の奥方様をめとりました」


父上が?!


「見てくる!」


「お待ち下さいませ!アレクシード様。出来ればこの屋敷開きのパーティーに旦那様と奥方様をお連れ下さいませ!2~3日滞在して下さるようお願いしていただけませんか?!」


「どうして?」


パウエルさんは続けて言った。

この屋敷を買ったのは名義上、父上になっていてご近所さん達はそれを知ってパーティーが行われるのを心待ちにしていること。

そのパーティーに父上が必要なこと。

出来れば奥方様も一緒に出席していただけたら、父上の負担が減ること。


「わかった!交渉してくるから。パーティーいつ?」


「5月1日を予定しております」


「1週間分早くするか遅くするか出来ない?!チェルキオ聖教のお祭りとブッキングしたら父上来られない!」


「ああ、そう言えばそんな祭りがしましたね。後ろにずらす事はもってのほかです!今週の土曜日23日にしましょう!」


それを聞いた私は、アスターにサレタ村まで転移させサレタ村で待機するように村に1件しかない宿に放り込んだ。

ヘキサゴナル王都に転移してどっさりの食料品と初めて会う第2夫人に父上の目の色の宝石の付いたブレスレットを贈り物に選んだんで、クロスディア辺境領へと転移した。

携帯変えました!文字が打ちやすくなってよかったです。

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