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40話 シマリスのお家

ロベルトは私を睨んで言う。


「リンディーと約束しただろ?何でもするって!!!」


お父様が生暖かい目で私を見る。


「アレク、自分で何とかなさい?自分の騎士だろう?お父さん、用が出来たから今から帰る」


「お父様、コレを忘れてますよ!」


私の財布に大金貨5枚入れて渡すとお父様が泣きだすのかと思って焦った!


「忘れていた。ありがとうアレク」


先生たちと飲みに行くのは良いけど、奢っちゃダメだからね?

私とお父様はそれでお別れして、ロベルトと私の教室に入った。

この部屋は外側に窓がないから灯りが無いと真っ暗な部屋なのだ。

ロベルトが灯火を使ってくれた。


「リンディーと俺とコリンズは母親が一緒なんだ」


なるほど!異父兄弟か。


「その母親が次から次へと父親を変える物だから母親の家はあっても、俺たちの家は無い訳!!!家とまでは言わない!部屋をくれ!…あと、出来れば」


モジモジしてるその様子から推察するに…


「婚約者⁈」


「ば、バカ言うなよ!お、お、お小遣い、欲しい!」


「……それは自分で頑張れ!冒険者ギルドの登録には付き合うから」


「何だそれ⁉︎冒険者の真似事をしろって言うのか!」


ニタ〜ッと笑って、その耳元で囁く。


「……私は1度の稼ぎで、公用金貨5枚は確実に稼げますよ」


ロベルトはそれを聞いて叫ぶ。


「死体の後始末より10倍稼げるじゃないかぁあああああああ!…いつ行く⁉︎」


ロベルトの食いつきに思わず苦笑する。


「何でそんなにお金がいるの?」


「……俺たち入学金分割払いなんだ」


1年で公用金貨1枚の利子がつくけど貧乏な学生は家庭教師系のアルバイトをして結構稼いでるらしい。


しかし、そのアルバイトが順調になった頃になると決まってその屋敷の奥様からクビにされることが続き とうとう、雇われる所が無くなった時に母親がアルバイト先の旦那様達と必要以上に仲良くなった所為だとわかり、母親の行方を探した。


何と後宮に入っていると人伝てに聞き、保身に走った父親たちに3人とも捨てられ家もないから学校の救護室で寝起きして、学校の下働きをして授業料を稼いでいて、今日の「騎士の試練」とやらもアルバイトの一環で、毎年半年分の授業料を稼いでたらしい。


「じゃ、半年分の授業料を払うよ。幾ら?」


「公用金貨5枚お願いします!」


「3人とも?」


「あの2人は死体の処理で今頃儲けてるから心配ない!」


後でそれぞれに聞くか。


公用金貨5枚をロベルトにあげるとロベルトは早速支払ってきたと、嬉しそうだ。


3人の荷物は赤毛のお兄さんが預かっているので救護室で待ってると20時ぐらいに2人が大激怒して来た。


「お前の家の事を探って来いとよ!出来ないなら入学金を全部払えって言いやがった!!!クソ理事長め!」


「フゥン!いつまでに?」


「明日の夕方までが期限だとさ!」


「……別にお話しても構わないよ!じゃあ、お家に帰ろうね〜!」


今夜はフェアリーウイング狩るぞ!!!

狩れなかった時には仕方ないから預金の引き出しをするか。


お家に転移して帰ると、3人とも口を開いてフリーズしている。


「私のお金で買った家だから、お屋敷とかじゃなくてごめんなさい。入って!」


3人は平民の家が珍しいのかあちこちいろいろ探検して楽しそうだ。


3人部屋あるんだけどもお母様と相談しないといけないんだよね〜。


お母様のお部屋に行きご相談。


「お母様、私、弟が欲しいのです!」


「……実はまだ内緒にしてたけど、出来たみたいなの赤ちゃんが」


「うわあ!嬉しい!いつ生まれるの!!!」


困った。今更お父様と同じ部屋に住んで欲しいとか言えないな。


「まだわからないから、ランドルフには内緒にしてくれる?それに、後ろから見てるお友達はいつ紹介してくれるの?」


「皆、新しく私の騎士になったお兄さん達です」


「まぁ!ステキな人達ね〜!!!…あら、部屋が足りないわね。良いわ!私はランドルフと一緒で!」


「…お母様、しばらくお金を貯めて騎士寮を作るのでそれまで少しだけ待っていてください!」


「良いのよ!シマリスのお家みたいに皆で温めあってるのが楽しいの!キャス!部屋を1階に変えるわよー!」


「では、アレク様。お願いします!」


お母様の部屋の引越し自体は直ぐに終わったのだ。


まず、3人分のベッドと布団とタンス。

勉強机は大きな机が1つあれば良いと言われたが、皆僕の部屋より大きい3つの部屋に別れているから、その要望は無視して1人に1つ平民価格のテーブルセットを購入。

ベッドを買う時には、一番体格のいい赤毛のお兄さんコリンズを連れて行って普通のベッドに寝かせたら足首から先が出ていたので3人の分は大きめにして購入した。


服屋さんは流石に平民の物を着せるわけにはいかないから、既製服を売ってる貴族向けのお店に3人を転移で連れて行き購入するつもりだった!


ロベルトが侯爵家の5男だと知り、慌てて店を変更。

赤毛のお兄さんコリンズは子爵家出身だし、リンディーに至っては、自分自身が法衣男爵らしい!

ローザ工房に転移してザトー子爵にすがったら、あるわあるわ、出てくるわ!

とりあえず1週間分と騎士服を2揃えづつ見繕ってもらって、ルメリーさん御用達の貴族向けの雑貨屋さんで、革靴とブーツを1足づつそれぞれの身分に合わせて鞄と文具も買い貯金が底をついてしまった。


残ったお金で自分用に特殊な手袋と、ガラス瓶をいくつか買ってまず、家に転移して、3人の部屋に家具を置いて服や雑貨を置く。


ヨランに3人分の食事と明日のお昼のお弁当を頼むと任せておけと胸を張って安請け合いしてくれる。

ヨラン、できる男は違うね!


私は1時間寝て、幻惑森林へと転移した。

入り口からブラッディウルフの猛攻に会い思わず剣で返り討ちにして、落ち込む。


「魔法使わなきゃダメじゃないですか!」


アイテムボックスに放り込み後ろから襲って来た幻惑リスも剣で討伐してまた、落ち込む。


結局夜明けまで剣2本で戦い朝になってから、魔法を使ってパフュームバタフライとポイズンバタフライを大量にゲット!

フェアリーウイングを討伐出来なかったからポイズンバタフライに期待がかかる。


登校するギリギリの時間にカルトラに戻り冒険者ギルドで買取査定して貰ったら、頼みの綱のポイズンバタフライはオークションじゃないと値段が付かないと言われたが、お金が今すぐにいるからとカルトラの冒険者ギルドのギルドマスター、バラムさんに土下座でお願いしたら「ああ!もう!!!」と言って解体場に私とバラムさんを転移した。

バラムさんも転移が出来るようだ。片足をなくしていて松葉杖をつき器用に歩いている。


「バラム様⁉︎珍しい!どうなさったのですか!」


「イエール、待ち屋はまだか⁉︎」


「……アンタ、本物のバラム様かい⁉︎」


「私だって好きで言ってる訳じゃない!いいか!こんな小さな子供が、お金が直ぐに必要だからって土下座するんだぞ!!!何とかしてやりたいだろうが!!!」


「……オッ⁉︎ミラージュバタフライの子じゃないか?また捕ってきたのか!おいちゃんが買ってやるよ!」


今、外から入って来たのか私の頭を撫でる手が冷たい。この人が待ち屋さん。

思ったより若くて頭がモジャモジャだ。

四角い顔でアゴが真ん中で割れている。

バラムさんはその手を捻り上げて足を引っ掛けて転がした。


「何でアンタがいるんだよ⁉︎イテテ痛いって!」


「ポイズンバタフライを購入するなら幾ら出せる?」


「ポ、ポイズンバタフライィイ⁉︎まて!直ぐに金持ってくるから他の待ち屋に売るなよぉおおお!!!」


キャラの濃い待ち屋のおじさんを見送るとイエールさんがバラムさんに耳打ちする。


「……それが下限だな。後は任せた。取り引きが終わったら、直ぐに取りに来るから呼べ」


私はまたバラムさんに転移してもらってギルドマスターの部屋のソファの上に座っていた。


リーンゴーン♪リーンゴーン♪


大きな鐘の音がすると直ぐ秘書のお姉さんがワゴンに食事を乗せて運んで来た。


大きなお肉のステーキとハンバーグに似てるけどスープで煮てある。

2種類の食事を見せられてどっちにするか悩んでると、バラムさんにステーキを取られた。


「柔らかい方がいいだろう?食え」


「はい!ありがとうございます!」


食べたらやっぱりハンバーグだった!


「ドラゴンフレーバーのレシピ、ヘキサゴナルから買ってるんですか?」


すると、秘書のお姉さんがボヤいた。


「ルメリーは、ドラゴンフレーバーのオーナーのロトムの姉で帝国でのドラゴンフレーバーの代表を務めているのよ!まだ、言ってなかったのね、あの子」


全然似てないからわからなかった!

じゃあヨランもドラゴンフレーバーのコックさん⁉︎


「ロトムとは友達なんです!」


「「絶対、言うな⁉︎厄介事に巻き込まれるぞ!」」


ハハ、ロトム、君、貴族に何されたの?

うなづくと2人は身体の中の空気を全部出すような息をした。

僕が食べたのは煮込みハンバーグと言う料理らしい。

パンとコンソメスープもついて大満足の朝食だった。


壁掛け時計を見るともう登校時間を過ぎてる。

立派な机で仕事し始めたバラムさんが私に言う。


「ここに来てるから遅くなるって宮廷騎士学校には連絡したから大丈夫だ」


えー?それってヤバくないですか?


「お前の懐事情は理解出来てるから、なんか、昨日実技のテストがあったんだって?剣術の授業には2年は出なくてもいいから、その分授業料を稼がせろとさ。世知辛い世の中だよなあ」


ん???入学金と授業料を一括して払ったよ?


「……幾らだ?」


「公用金貨150枚です!」


「それは幼稚舎の分と入学金だけだな。小等科に入ったらやっぱり入学金と授業料がいるし、中等科も同じような感じだ。高等科は入学金が免除されてる優秀な生徒だけしか通えないような入学金になってるしな。ま、お前の稼ぎなら10日分くらいで高等科にも入学出来るだろうがな」


しまったーー!!!

そんな仕組みとは知らずにいたから「いつ」の「どの科」の入学金か聞いてない!!!

コリンズは絶対、高等科だよね⁉︎

リンディーはどっちかなぁ?お願い!中等科でいて!

ロベルトはまだ、中等科の1年だって言ってたもんな。


「……バラムさん、半年で公用金貨5枚の授業料って」


「特待生だな。間違いなく。何科だ?」


「中等科の1年生」


「……中等科で、その程度の授業料ならその生徒は学年で成績と実技がトップだな。あと、貧乏で住む所に困っているんだろう?そう言う生徒には学校から指名依頼が出て自分でも知らない内に冒険者なんだぞ?」


「決闘の死体の後片付けも指名依頼ですか?」


バラムさんに秘書のお姉さんが視線を送るとバラムさんはうなづく。


「……そりゃ、授業料も安いわけだ。…まあ、その生徒の事情が、そういう汚れ仕事も引き受けざるを得ないくらいに困窮してるって事だろうから見て見ないふりをしろ。ケイトスはどうしてそんなにお金が急に必要なんだ?」


「……その、汚れ仕事してる3人の生徒を"私の騎士"にしたら、理事長から私の情報を洗いざらい話さないと、入学金の即時入金を求めるって言われたらしくて…ハ、ハ、ハァ……」


バラムさんの殺気がこの部屋の中に見えない圧をかけていて、私はそれ以上話すことも出来ずソファに身体を沈めた。


バラムさんは窓を開けて上空で何かを爆発させた。

そうすると起き上がることができるようになって続きを話した。


「それが今日の夜までなんですけど、3人にまともな貴族の格好と生活させるのに掛り切りになっちゃって高等科か中等科かも他の2人から聞いてないんです」


「……お前はお宝も呼び込むがトラブルの渦中に知らずに飛び込んでる。3人の名前を言え!」


「中等科で1年生のロベルト=ドロント、中等科か高等科のリンディー=サーキュラス、同じくコリンズ=アーベルンです」


「リンディー=サーキュラス男爵は確か今年高等科に入学したばかりだな。コリンズ=アーベルンはガッシュ=アーベルン子爵の婚外子だ。確か、16歳、だな?今日の予定は変更する。薬草樹海に行くぞ!ケイトス何をボーッとしてる⁉︎お前の事だろうが!気合いを入れろ!」


「え?でもその身体で⁉︎」


「……私は戦闘は以前のようには出来ないが、薬草樹海のガイド兼薬草採取が出来る最強のガイドだ!高く付くが必ず一山当てさせてやる!」


つまり、そのくらいのお金が足りないということか。


「よろしくお願いします!バラムさん」

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