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4話 お買い物

採取組合に爪の先ほどの魔石を大人の両手に山盛り3杯預けて、宿に戻って部屋で寝てたら激しいノックの音で起こされた。

もう朝なんだ?

下着だけだけど急ぎみたいだし、仕方ない。片手に木剣を持って戸を開けるとヨザック男爵だった。


「着替えろ!行くぞ!」


「……アスターさま、まだねてるし、わたしもねむい」


「いいから、行くんだよ!」


そう言うと寝ぼけている私に椅子の背もたれに掛けてた服を着せて私を小脇に抱えて宿のカウンターへ、アスターさんに今日は休むよう伝言したら、表に止めていた馬に乗って爆走した。

私はヨザック男爵の前に1刻座ってただけなのに、お尻が痛い。

馬がゆっくり歩き始めると周りを見る余裕も出来た。


「ブキのみせがあつまってるのですか?」


「アミュレットや、宝飾品の工房もある。見るなら後でな」


「コラ!小僧っ子がワシの工房以外に行くんじゃねーよ!」


ものスゴイ形相の小さなおじいちゃんが馬の前に立ちはだかって拳を振り上げ私達に怒鳴っている。


「ドルク!探してた!」


ドルク⁉︎慌てて異空間蔵から手紙を出す。

確か師匠から渡された手紙の中にそんな名前の人がいたはず……あー!慌ててるから師匠の手紙を全部地面に落としちゃった!


「おいおい、何してんだ?ちょっとそこにいろ」


ヨザック男爵が馬から降りてドルクさんと手紙を拾ってくれた。


「……なんじゃ!ワシ宛か!そうか、そうか!ちょっと待っとれ!茶菓子を買ってくる。今日はこの工房に世話になっとる。中に入って待っとれ!」


ドルクさんは長いあごひげをたなびかせて身体強化して通りを東へと走って行った。

ヨザック男爵は無表情で私に4通の手紙の内3通を返し、残りの1通の封を切った。

師匠の子孫宛の手紙だ。


「あー!!!それいちばんだいじなやつなのに!!!バカァアアア!!!」


「……いいんだよ。俺宛の手紙なんだから!ちょっと黙ってろ!」


へ?師匠の子孫なの⁉︎ヨザック男爵。

そういえば、魔法以外は全部相殺してたな。


長い手紙を全部読み終わるとポツリと呟いた。


「……あと2年か、お前さん公用金貨500枚俺に払えるか?」


「いいよー!おくさん、むずかしいびょうきなんでしょ?なおるといいね!」


師匠が言ってた。代々の当主を生んだ母親は衰弱して死ぬと。高い金を払って治癒魔法をかけてもらわなきゃいけないと。出来れば助けてやって欲しいと。


「……ありがとうな。2年間はウチに住み込め。お前と同い年の弟子が1人いる。後はむさ苦しい大人ばかりだが、お前さんが教えるにはちょうどいいだろう」


何???私が教える???


頭の中が混乱してる私を馬から降ろし、頭をぐちゃぐちゃに撫でて茶化すようにこう言った。


「頼むぜ!師範代!!!馬も今日買うぞ!あと、服な、そんなヒラヒラ、キンキラキンの服じゃダメだな。庶民の服を買うぞ!靴は、まあ、いいか!」


「……わたしはだれがおしえてくれるのですか!」


「ウチの弟子達から盗めよ!体術だけだろ?頑張れや!」


師匠と同じくのびのび育て!って奴か!


「……わかりました!なんとおよびすればよろしいでしょうか?」


「兄上と呼べば良い。よろしくな、アレク」


「はい!あにうえ!」


「……フハハ!何か嬉しいなぁ!俺、末っ子だったから!ん、悪くない!」


「何じゃ!!!まだ工房に入っとらんのか!」


ドルクさんが後ろから私達を怒鳴りつけた。

この人も気配ないなぁ。驚くよ!


「また、そんなに菓子買って!体が腐る病にかかるぞ?」


「こ、これは、アレクシードの分じゃ!!!」


「えっ?わたしは、おかしたべませんよ?」


するとヨザック兄上が泣きそうな顔で、私の頭を撫でる。


「食ってみろ!美味しいから!」


ドルクさんが私達の背中を押して目の前のめちゃくちゃ高そうな武器が並ぶ店に入った。

また、個室に連れて行かれてドルクさんに採寸された。


「……ほお、なかなか、鍛えておるのう」


テレるなぁ!


「ちと、左が細いの!均等に鍛えるのじゃぞ!」


ゔ、師匠と同じこと言ってる。


「……はい!」


「フォフォフォ!良い子じゃ!ワシに剣を打って欲しいと言うお願いじゃったが、ちと、手元に金が無いから、稼ごうと思ってたら、あっという間に600件の依頼になってのぅ。どのくらい金を出せるかで順番を決めておる。アレクはいくら出せるのじゃ?」


ここにも貧乏な人がいた!


「いちばんさいごでいいです!」


「何故じゃ⁈辺境伯家じゃろ!」


ここで結界を張って、エメラダ親子の散財ぶりをヨザック兄上がドルクさんに告げた。

私は羞恥で死ねるかもしれない!


「金貨500枚、か。1番最後じゃな。騎士になった頃に打ってやれる。自分で貯めた金で買うとはあっぱれじゃ!さ、金を出せ!」


「俺にもな」


2人は自分の虹証を出して私の虹証を重ねるよう言ったのだが2人の虹証は紫に虹がかかって見える綺麗なものだった。

ジッと見ていると2人はやっぱり止めるかと誤解したので直ぐに虹証を重ねた。


「重ねたら、金を払う側が魔力を流すと金銭のやり取りができる」


へー!不思議。


2人への支払いが終わった。


残高を確認するとちゃんと金貨1000枚分減ってる。

オフッ!あと2089枚!

頑張れ私!魔石で稼げ!!!


店に出て行ったドルクさんを見送ると、ヨザック兄上はまた結界を張って私に話しかけてきた。


「勝手に剣の値段を決めてすまん!でも、ドルクに頼むなら、あれが最低価格なんだ」


ハハ!いいのに、そんな事。


「そうばがわからないので、たすかりました!ありがとうございます!わたしがみてたのは、ムラサキしょうにニジがかかってたからです!」


「何だ!!!それか!虹証は1番上の紫証まで来ると条件の限られた大きな依頼を成功させるごとに赤から1本づつ紫までのラインがかかるんだよ。

紫まで行くと法衣貴族に叙爵されるんだ!ま、俺ん家は代々貴族だけどな!」


「……なんで、へんきょうはくじゃないの?」


「初代のグリエルダル様一代限りの大出世だったんだよ。グリエルダル様は第1回ヘキサゴナル武闘大会で、ぶっちぎりで優勝した平民だったから、今も武闘大会で名を挙げようとする奴らがいるけど今は戦もないから優勝しても騎士爵止まりだな。

騎士学校に通えない庶民が頑張る大会だから、アレクは出場しちゃダメだぞ?」


ちょっと面白いかもしれないとか思ってました!ごめんなさい!


「……んと、ほかのリュウハとのコウリュウジアイはやらないんですか?シショウがヘンキョウハクだったときはやってたみたいでしたけども」


ヨザック兄上は鼻で笑った。


「200年戦争で後継者が失われてから門外不出に こだわるあまり闇堕ちした奴らの事か?その内あっちから挨拶(あんさつ)に来るから1人残さず息の音を止めてやれ」


ヨザック兄上の濃密な殺気に当てられた私はオシッコ漏らしちゃった…。

ヨザック兄上が慌てて浄化魔法をかけてくれたからドルクさんにはバレなかった!ホッ。


ドルクさんは3つの剣を私に選ばせた。

私は重さと一振りしたときの感覚で1番武骨な剣を選んだ。

ドルクさんは2〜3回うなづくと虹証を出した。


「金貨50枚じゃ!」


私も虹証をそれに重ねて支払った。


「……ハイハイ!ありがとうございます!」


「ワシの1番弟子の修行中に打った内の一つじゃが、見た目ほどは悪くないぞ?ワシにわざわざくれたからな!フォフォフォ」


「ドルク、それってタダだよなあ?」


「ぶぁかもん!!!材料費だけもらったのじゃ!追い剥ぎみたいな真似はしとらん!ああ!剣帯をオマケしてやろう!」


まるで馬具のような素朴な剣帯にちょっとだけガッカリしながら剣を鞘ごと収めると短剣くらい小さくなった。


「歩いてみよ!」


軽くて、ジャマにならない!

剣を抜くとちゃんとロングソードになる!

嬉しくなって何回も剣を鞘に入れたり出したりしてると、ドルクが苦笑して教えてくれた。


「素はアレクの魔力をもらっとるから、あんまり出し入れし過ぎると倒れるぞ」


ビビった!

虹証を確認すると魔力が100減っていた。今も1づつ減っている。


虹証をボレロの内ポケットにしまってドルクを見ると2人は結界の中でケンカ中。

本気のどつき合いに思わず声援を送る。


「そこだよ!いけ!いいパンチもってんじゃねーか!ジジイ!!!アニキ!それっくらいでしずむのかよ⁈ホンキってヤツをジジイにみせてやれ!」


2人はバチバチにやりあって私の実況中継は4半刻で、終わった。


「「アレク、お前は口が悪い!」」


えー?辺境伯騎士団の訓練場では、これっくらい普通だったけどなあ?

皆、結構盛り上がって次の日は何故か、パンパンに腫れてアザだらけの顔で訓練場に来てやたらと丁寧な言葉使いになってたけど、何か関係あるのかなぁ?


私の言葉使いの訳をひと通り聴いてうなづく2人に、この不思議な剣帯の事を聞くと、ドルクが悪ノリして作った貴族への意趣返しの魔道具(しな)らしい。


貴族(あやつら)ときたら、金を出してやったんだぞと、言わんばかりの態度で更に次の剣を注文してやったぞ、と意気揚々と帰ろうとする。ワシは自分で言うのも何じゃが腕がいい!

つまり、仕事が詰まっておるんじゃ!

そこで、その剣帯の出番じゃ!


『貴方がこの剣帯を10日間使えたら、貴方が望む通りの剣をタダで打ちましょう』と。


その剣帯は自分の主人と認めるまで幾らでも魔力を吸う。気に入ったら、2〜3日で止めて本当の姿に戻る。悪い奴じゃないんじゃ。アレクの魔力量なら大丈夫じゃ!」


「……なんか、いきてるみたいにいうんだね?」


「……何じゃ!知らずに来たのか!ワシの剣は魔剣なのじゃ!意思があるし、心通った相手には危険を知らせたり、威力が上がったりするオマケ付きじゃ!


ま、ただの金持ち貴族の配下にはならんがな!


手遊びに作った剣帯までそうなってしまったがのぅ。そうじゃ!どんな魔剣にしたいのか、騎士になるまでに考えておくんじゃぞ」


魔剣かぁ!危なそうだけどワクワクする!


ちゃんと正式な礼をしてヨザック兄上に肩車されて、工房を後にした。



お読みくださりありがとうございます!

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