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39話 茶番劇

残酷な表現があります。

お父様は殺気を抑えることなく、理事長室に押し入った。

理事長はグレーの髪の紳士だった。

その手元には私の書いた反省文があって、今読んでる最中のようだ。


「……これはこれは、元公爵閣下!息子さんが反省房に入れられたくらいでいらして下さるとは親バカなのではないですか?」


「この学校ではいつから魔法枷を5歳の子に着けるようになったのだ?」


「……それで怒ってらっしゃると?魔法枷はやり過ぎですね。ナルキス女史には処分を下して置きます」


「私の息子は魔法枷を付けられて2週間大人でも死んでしまうような拷問を受けた。それから魔法枷を掛けようとされたら逃げるようになったが、そんな息子に魔法枷を掛けようとしたナルキス女史とやらを私は許せん!決闘を申し込む!!!」


すると理事長は叫ぶ女教師を呼び出した。


「反省房から勝手に出た挙句、親に言いつけて連れて来るなんて!甘えた子供ですこと!さあ、クロスディア!!!反省房に戻ってもう一度反省文を書き直しなさい!」


私は転移してナルキス女史から距離を取った。


「……逃げるなんて、貴方は騎士ではなくて愚か者ですわ!!!早くここに来なさい!」


「……ナルキス女史、君はこの学校からいなくなるのと、命が無くなるのはどっちがいい?」


「まぁ!理事長、何の冗談ですの?私にこの平民達に謝罪しろと?」


「君は魔法枷を掛けようとしたそうだね?私も調査不足を今痛感しているのだが、クロスディアくんは魔法枷を付けられて2週間も拷問されてたそうだ。それから、魔法枷が嫌いになったようだが、君は理由も聞かずクロスディアくんを反省房に戻そうとした。1年間の謹慎処分と謝罪で済まそうとしたが、ランベルトさんが君に決闘を申し込むそうだ。ちなみに、言っておくが元公爵閣下は帝国内で5本の指に入る騎士だよ。幸運を祈る」


お父様やっぱり強いんだ!

お父様を尊敬の目で見るとお父様は私の肩を抱き寄せた。


「そんな、2週間の拷問なんてウソに決まってますわ!理事長ともあろう方がそんなウソに騙されたなんて!宮廷騎士学校の恥ですわ!」


「……私の知っているアレクシード=クロスディアくんの情報は、栗色の髪にヒスイの目の5歳児という平凡な容姿だったが、ここにいるクロスディアくんは白髪に、紫色の目という目立つ容姿をしている」


「この生徒はクロスディアではなくて別人なのですか⁈何と罪深い!他国の貴族を名乗るなんて真似をするなんて何処まで「ちょっと黙ってくれないか?ナルキス女史」……わ、わかりましたわ」


理事長は私とお父様に頭を下げて謝罪した。


「別人では無い事は魔力で確認した。では、どうして目の色が違うのか?

「復活」と「再生」の魔法をかけられた者の中に目が紫色になった者がいる。白髪は、その魔法をかけなければ生きてない様な壮絶な経験をしたから、そうなったのだろう」


「……目はガラスを入れればいいだけですし、髪の色は脱色してしまえば、そう装えますわ!理事長、騙されてはいけません!」


この人、拷問された事も、した事もないんだろうな。


「では、私と同じ目にあってからもう一度聞きますね。理事長、今からこの人の爪と指の間に縫い針を指して針が刺さる所が無くなったら、爪を1枚づつ剥がして指をペンチで1本づつ抜いて、食事には死なない程度の毒を入れられてそれで排泄した物を口に飲み込むまで入れられて、少しずつ身体の肉を削がれ、食べさせられて、虚ろになって来たら歯をペンチで抜いて…」


「やめなさい!!!聞き苦しいにも程があるのよ⁈何かの本に書いてあったんでしょうけどね!理事長の優しい心につけ込んでそんなデタラメを言ったって私は信じません!決闘?息子さんの誇大妄想を信じたい父親の言い分でしょう?」


何故かナルキス女史はクスリと笑った。


「……それに、平民が貴族に決闘なんて申し込めないのよ!帰りなさい!愚民。2度とココへ足を向けない事ね!」


ナルキス女史が開いた扉の向こうには大勢の先生と生徒たち。


「帰るのは君だよ!ナルキス女史」


「……いつも、高位の貴族ばかり優遇しやがって!!!俺たちは愚民扱いか!よぉ〜く、わかったぜ!あんたの言い分がヨォ!!!」


「い、いえ!貴方達のことを言ってたわけじゃないのよ?この没落した貴族の行き過ぎた家族愛のことを話してただけなんだから!!!ね?」


そこに投げ込まれる沢山の白い手袋。


一緒にいる先生たちからだった。


「元は平民ですが、私達は、今は、貴族ですから、決闘を申し込むのに何の異存もありませんよね⁈」


「「「「「「「「「「「さあ、どれからでも選ぶが良い!」」」」」」」」」」


ナルキス女史は扉を閉め、理事長に抗議する。


「放送なさってたのですね⁉︎何故、貴方も本物の貴族なのに、私を平民に売る様な真似をなさったのですか!!!」


「宮廷騎士学校は才能ある若者たちの為に作られた身分差など関係ない施設なのだが、最近では、一部の職員があからさまに身分差を広げる愚かな真似をしていてね、とても私は不愉快な思いを帝王陛下の前でする羽目になったのだよ」


「……え?て、帝王陛下が、ご存じだと?いえ、あー⁉︎では、この親子に謝ったらいいのでしょう!!!」


ナルキス女史がそう言った横っ面に理事長が何かを投げた。ナルキス女史は咄嗟に受け取った。


それは「白い手袋」だった!


「受け取ったね?じゃあ始めようか」


「きゃあああああ!!!誰か!!!助け」


理事長の手から黒い球体がナルキス女史に向かって放たれた。

ナルキス女史が扉を開けて、大勢の生徒達の前で黒い球体に取り込まれて消えた。


(ギャアアアアア!!!やべで!だずげで!じにだぐない、アアアアアアアアーー!!!おねがい、やめで!だずげで!イヤァアアア!)


突然黒い球体が消えたと思ったら、その床には、惨殺されたナルキス女史の遺体があった。苦悶の表情から決して楽ではない死に方をしたのだろうと思われた。

生徒たちはあまりに凄惨な遺体の様子に吐いたり、床に座り込んだり、気分が悪くなった者が続出した。


「……この様な始末しか出来ない事をお詫び申し上げます!」


理事長は深々とお父様にお辞儀してしばらく動かなかった。

お父様は、理事長にひざまづいてお礼を述べた。


「無礼な話し合いを持ち込んで申し訳ありませんでした。私とアレクの誇りを守ってくださってありがとうございます」


「理事長先生、今日はもう帰ります。いいですよね?」


理事長は何を考えてるかわからない笑みで私達親子を見送った。


私は廊下にいた手近な教師に私が最後に戦った赤毛のお兄さんのことを聞くともうすぐココへこの死体を片付けに来るという。


お父様も教師達とお話をしている。

主に現理事長の評判だった。

お父様と私がダシにされた事にお父様も気付いていたようだ。


「……以前よりずっといい学校になってる!フォンダ理事長のおかげだ!!!あなた方も良かったな!」


「自分の手で討つことが出来なかったのが、悔やまれます!」


そう、理事長は私達の誇り云々と講釈を垂れてたけど、やったのはタダの人殺し。

物凄い茶番劇だ。

あの訳が解らない黒い球体の魔法と言い、ちょっと気をつけないとあっと言う間に追い込まれて死にそうだからなぁ。


片付けの赤毛のお兄さんと、私の騎士になったリンディーとロベルトも一緒だ。

リンディーが魔法でナルキス女史の遺体を集めると赤毛のお兄さんがアイテムボックスに入れてリンディーと去っていく。

ロベルトが汚物や血の処理をしてたので、クリーンで綺麗にしてやったら、私の前にひざまづいて礼を言うのでやめさせた。


「あのね!私は隷属して欲しいんじゃないから一々ひざまづいていろいろ言わなくてもいいのです!私はどちらかと言うと自分の騎士とは尊敬し合う友達になりたいの!」


ハッ!ぼっちな事を晒してしまった!

恥ずかしくなってると、ロベルトは立ち上がって私に手を出した。

握手だな?手を取ると握手してお父様に挨拶した。


「今夜からお世話になるロベルト=ドロントと申します。よろしくお願いします」


「「今夜からってどういうこと?」」


お父様と私はハモってしまった。





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