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35話 準備いろいろ

怒っているルメリーさんをザトー子爵がなだめた。


「繁華街の土地では力になれないが、他に候補地があるなら、私が扱ってる土地を安く融通するよ?」


ルメリーさんと私はエイリーン兄上の事情から説明したら、ザトー子爵は直ぐに物件を紹介してくれたのだが、土地だけだった。


「つまり、お店を建てろと?」


「……ここは騎士団の宿舎に近いし他に店も無いから絶対!流行るよ!」


「……ザトー子爵様幾らで店が建ちますか?」


「簡単な造りならそれこそ公用金貨500枚かからないよ?魔法建築士が3人居れば1週間で店が建つ。私の知り合いがいるから声かけてあげよう「「お願いします!」」…わかった!明日、またここに来ておくれ」


「土地を購入します!幾らですか?」


「勉強して公用金貨1000枚だね」


良かった!支払える。

公用金貨500枚入りの絹袋を2つ置くとザトー子爵が無属性の生活魔法「計数」でお金を確認して土地の権利書を私に渡した。

ルメリーさんは私が署名してる間に着替えて来た。


「さあ、行くよ!宮廷騎士学校の支度に!」


それを聞いたザトー子爵が初めて笑顔を見せた。


「ケイトスもか!うちの子も通っているから友達になってくれないか?飛び級で2年生になったら、でいいから。ワガママでなまじ才能があるから他人の意見を聞かないし、私の言う事もあまり聞いてくれないんだ。おかげで1人も友達がいない。ケイトスは剣は得意か?」


「……まあまあです」


「……そうか、出来ればうちの子にガツンとお仕置きしてやってくれていいから、何とか性格を叩き直してくれ」


それはお願いと言うか、依頼に近いような…


「おお、そうだ!ケイトス、服はいらないか?うちの子は1度着た服は着ないからたくさんあるんだ。よかったら持って帰らないか?報酬の代わりに」


ありがたい!


「はい!報酬の変更を受け入れます!!!」


ザトー子爵がお子さんの服を取りに行ってる間にお針子さんたちからザトー子爵のお子さんの情報収集。


金髪に空色の目の大変綺麗な顔立ちの子で、メンフィールドと言う名前で、メフィーが愛称らしい。

エトレ流剣術の当代剣聖の推薦で宮廷騎士学校に入学したら、取り巻きはたくさんいるのだが、友人と言える者がいないらしくて、学校では素行が良いが家にいると理不尽なワガママを使用人や両親、果ては祖父母にまで振るうらしい。


「……まるで、この工房でも王子殿下気取りなの!だから、めちゃくちゃ上等な服を着て学校に行ってるのよ!!!自分の着る服がどれほど高価なのか教えてあげたいわ!」


マズい!そんな、高い服だと思ってなかった!気軽に貰うとか言ったよ⁉︎


工房の男性職人と抱えて来た木箱5つにはぎっしり服が詰まっていてグレードは公爵家の仕立て屋さんレベルの物だった。


「こんな良い服受け取れません!」


ザトー子爵は私の身体に服を当てながら、言った。


「1度しか着られなくて可哀想な服だよ。着てやってくれ」


「報酬より高いからお金を支払います!!!」


「本当にいいんだ!そろそろ捨てる予定だったからもらってくれると嬉しい」


「……でも!1着で公用金貨6枚するような品をタダ同然でもらえません!!!」


「「「「「価値がわかる貴方にもらって欲しいです!」」」」」


工房の職人さんたちがもらえと言っている。


「……では、30着ほどいただきます。タンスもそんなに大きくないですし、あまり頂いても毎日違う服で登校するなんて勇気がいる事は出来ません!」


「では、君の嫌いな色はあるか?」


「赤はちょっと…」


エメラダ親子を思い出してしまうから、避けた。


「君は何色でも似合うから着せ甲斐があるな。綺麗な髪だね。地毛かい?」


「はい」


白髪になってから容姿を褒められるようになった。

父上の髪の色と似てるし、ちょっとだけ嬉しい。


「箱もあげるから4つ持って帰るといい。こっちの赤いのは捨てる」


うっ!もったいない!


「……結局たくさんいただき、ありがとうございます!」


「騎士服も上着が赤ならあるが着ないか?」


「……着ます!」


騎士服は消耗品だから何色でも構わない!すると、色味が違う様々な赤い上着の騎士服が10着も追加された。


「あの子は赤が好きなんだが一度しか着ないからたくさんあるんだ。持って帰ってくれ!」


「いただきます!また、サレタ村にお出かけする時は送迎しますよ!もちろんタダで!」


「……それはいいから、メンフィールドと友達になってくれ」


仕方ない。こんなにもらって知らんぷりとか出来ないし。やっつけていいんだよな?


「私に出来る範囲で頑張ります」


心行くまでボコボコにしてやる。


「ありがとう!ケイトス」


もらった服を収納して、ルメリーさんとローザ工房を後にする。

夜間営業の雑貨屋さんで文房具、筆入れ、ノート、カバン、靴、ブーツを買ったら公用金貨10枚がすぐ無くなった!

ルメリーさんを冒険者ギルドに送って帰宅すると、お母様が待っていた。

アルバイト代の公用金貨10枚を渡しながらドレス風ワンピースを褒めちぎったら、お母様はそれだけで踊り出しそうなくらいご機嫌になった。

ついでにお願いをする。


「午後から3時間でいいのでキャサリンを借りてもいいですか?」


お母様の目はキラキラと輝く。


「今度は何をするの⁈」


「居酒屋さんを作るんですけど、お店が無い土地から来てるんで給仕の仕方を教えて欲しいんです」


「……居酒屋さんってどんなお店なの?」


この人、元王女様だった!


「お酒も飲める食堂ですよ。食堂…えーっと、そうだ!平民も使うレストランみたいなお店です!ワンピースで入れるような、気軽な感じのお店です。食事の値段も安いんです!」


「まぁ!出来たら行ってみたいわ!」


お昼に連れて行けばいいでしょう。


「わかりました!楽しみになさって下さいね。キャサリンは貸してくださいますか?」


「もちろんよ!協力するわ!」


「では、明日からお願いします。キャサリンはお昼が終わったら迎えに来ます」


「それなら、生徒さんをこっちに連れて来なさい。昼なら道場が空いてるからそこで給仕の練習をしたらいいわ!」


お母様、見たいんですね?


「わかりました!助かります。さすがお母様です!」


「ウフフ!もう遅いから休みなさい!」


「良い夢を」


「アレク、貴方もね!」


さてと、ヨランに相談!


1階のヨランの部屋に入って灯りを灯して無理矢理ヨランを起こす!


「ヨラン!!!明日から1週間アルバイトしない⁉︎」


ヨランを揺するとヨランは何やらボヤいていたが、一応起きてくれた。


「……アレク様、朝早いから、手短に説明してください」


「居酒屋さんで出す料理のレシピを全部考えてくれたら、公用金貨10枚あげる!」


するとヨランは真面目に話を聞いてくれる気になったらしく、下着姿だったのがあったかい部屋着を着てベッドに胡座をかいて座った。私もベッドに腰掛けた。


「えっとね、昼は食堂にしたいのです!女の人が通う感じのオシャレなお店?夜は騎士さん達が騒ぎながらお酒を飲む感じの居酒屋さんみたいにしたいのです!」


「ほう、ほう。価格帯は?」


「お酒はそれなりになるけど、お料理は安くて、ついつい注文する品数が増えるような美味しいお酒のおつまみを作ってください!一品小銅貨5枚くらいまでで作れない?」


「……開発費をください!大金貨3枚。今すぐ!」


アイテムボックスからお金を出してる間にコートと靴を履いて出かける格好になったヨランが出した手のひらに大金貨3枚を置く。

ヨランは急いで出かけた。


隣りの部屋からキャサリンが顔だけ出している。


「……いいなぁ。皆、稼げて」


「キャサリンもアルバイトしませんか?公用金貨10枚で」


「します!!!やります!!!頑張ります!!!…でも、私が出来る事ですか?」


14人の大人たちに給仕の仕方を1週間で叩き込んで欲しいと言うと喜んで引き受けてくれた。


ようやく眠れる。

寝る前に剣の手入れをしたら、もう眠くて限界だった!


ベッドの上で布団を掛けずに寝てたのを朝早くお父様に起こされた。


「早く着替えて道場に来るように」


「……はい、お父様」


自分にクリーンを掛けて騎士服に着替えて道場に入ると目がやっと覚めて来た。

基本の型から丁寧にさらって、お父様に今朝もボコボコにされた。


…何で皆、手加減してくれないんだろう?

師匠も遊びと言いつつズタボロにしてくれたし、何で私あんなのが楽しかったのかな?

自分じゃわからないけど私はヤバい人なのかもしれない。


ちょっとしたショックを感じながら着替えて朝食の席に座る。

じゃがいものチーズ焼きや小魚のムニエル。青菜とベーコンの炒め物にチーズのコロッケ、他にもいっぱい細々とあったけど皆でワイワイ食べるとあっという間になくなった。


「……なるほど、ね」


壁際で食事風景を観察してたヨランは、そう呟くと台所に戻っていく。


「では、お昼過ぎには生徒たちを連れて来ますね!キャサリン!」


「はい!かしこまりました!アレク様、お気をつけて」


転移でローザ工房へ。


もう、魔法建築士の3人は来ていて随分待たせたみたいだ。3つ子なのか皆、同じ顔をして、同じようなグレーのローブと杖を持っている。


「お待たせして申し訳ございません!アレクシード=クロスディアと申します。お店を建てて頂きたいのですがお願い出来ますでしょうか?」


「「「先払いが条件だ!公用金貨100枚出せ!」」」


「わかりました!」


それぞれに公用金貨100枚づつ袋に入れて手渡すと、材料費に公用金貨200枚を追加で求められて、合計公用金貨500枚渡すと、整然とローザ工房を出て行った。


「すまない。悪い奴らじゃないんだけど愛想が無いのが欠点なんだ。今回の仕事を心から喜んでる!許してやってくれ」


ザトー子爵にそう言われてホッとした。


「いえ、皆さんが喜んでるなら良かったです。

お骨折り下さってありがとうございます」


「いやいや、こちらこそ服を仕立ててもらったり、土地を購入してもらったり、私をカルトラまで連れて来てもらったりしてるから、ほんのお礼だよ。騎士学校に行く前に服を合わせた方がいい。

ちょっと手直しするだけで君のサイズになるだろう。ウチで引き受けると高い仕事料になるから、メイドにやってもらいなさい」


「お気遣いありがとうございます。早速帰ってメイドに頼みます。では、失礼します」


下町の家に転移したらキャサリンが私を待ってた。


「人数分のトレーとお皿やコップが必要です!アレク様、この際です!!!店の食器類を購入しましょう!」


「わ、わかりました?」


キャサリンの熱い購入欲に押されてキャサリンの指示する方向に刻んで転移を繰り返し、卸し売り専門街に到着した。

入り口でギルドタグを照会して、一定額以上の稼ぎだとフリーパスが貰えるらしい。

私達は普通の小売店が買い物出来る通りへと案内された。

キャサリンの「可愛い」もしくは「綺麗」だと思われる食器類がどんどん買い物されていく。1種類50皿づつアレもコレも、と買い物されて鍋やフライパンなどの調理器具も追加されて大人が両手で抱える大きさの木箱20箱分買ってようやくキャサリンが満足した。

ビールを飲む木のジョッキを追加で購入すると、キャサリンは食品の卸し売り専門街に私を連れて行き酒類を樽で40個程購入し、やっと家に帰ろうと言った。

気が付けば公用金貨10枚が無くなっていた。

食器コワイ!


久しぶりに家での昼食。

食堂みたいなワンプレートメニューが出て来た!

お母様はササミのサラダと大きなオムライス。

お父様は分厚いブラッディウルフのラディおろしのポン酢掛けステーキにオニオングラタンスープとライス。私はポットパイというカフェ・オ・レボウルにパイでフタをしてる奇妙なメニューにオニオンドレッシングのサラダとカゴ盛りのパン。


「「「今日の糧を与えてくれた皆に感謝を」」」


早速試食。

ポットパイにナイフを入れたら中はシチューだった!

いつもより熱くて楽しい上に美味しかった!

初めてお米を食べるお父様達を心配してたが完食していた。

ヨランがやって来て私達に感想を聞き、また台所に戻っていく。


お昼が終わると今度はキャサリンの出番だ。

道場にテーブルを7つ並べ椅子を2つづつセットしたら後は生徒たちを連れて来るだけだ。

従業員用の宿に転移するとたった4人しかいない。

他の奴らはどうしてるのか聞くと何故か誰も答えない。

仕方なくその4人だけの講義になった。


「これから1週間給仕の練習をします!かならず昼からの3時間は参加するように!」


4人の内の目鼻立ちが整った青年が、キャサリンに不躾な事を聞いた。


「これって給料出る?」


「……そうか、そうだね、3時間だから大銅貨5枚出すよ」


私は仕事だと言う意識はあったのだが、食費に大銅貨1枚出してるのでそれで充分だろうという甘えがあったのだ。

そう提示すると茶髪のイケメンはとんでもない事を言った。


「これで金が無い奴らも来られる!」


「どう言う事ですか?食費として大金貨1枚渡しましたよね?」


4人の見習い給仕達はヤバいという顔をした。

キャサリンが地を這うような声で4人を叱りつけた。


「大金貨1枚ももらった上に、まだ給料の要求するなんて、アンタ達 何してんのよ?ハキハキ話しなさい!!!」


「……実は、もらった翌日にお金全部使っちゃって、無いんです。皆」


私は呆れた。


「……私が一生懸命、魔獣討伐して稼いだお金何ですけどね?」


「……その、皆、田舎から出て来たばかりで服とかも持ってないし、大金貨なんて大金初めてもらったから、気が大きくなっちゃって…気が付いたら大銅貨が何枚か残ってるだけだったんで、商業ギルドで別の仕事を見つけてそっちで働いてる奴も何人かいます」


私は片手で額を押さえて俯きそうになる顔を押し上げた。

要するに、私が舐められてるんですよね?


「その人達は訴えます。私は私の店の従業員への待機期間中の食費として渡したのであって、ただのお小遣いのような使われ方をした上に契約違反?私が子供だとしても許せません!」


更にイケメンは言う。


「それなんだけど、ちゃんと書面で契約したわけじゃ無いし、貴族が親からもらったお小遣いでやってるママゴトなんだからウチの方が儲けられるからって、女の子達は粗方その商人が連れて行って、この3人しか女の子居ないんだよ」


その商人を見つけ次第、骸に変えてくれるワ!


話を聞いていたお父様が4人分の契約書を書いて来てくれた。


「お父様、ありがとうございます」


「何、これしきの事問題ない。分からない事が多いだろうから、私も相談に乗るからいつでも話してくれ」


お母様が有無を言わさない笑顔で4人に契約書にサインさせていた。


イケメンくんはディニという名前らしい。


「男の人達は何人残ってる?ディニ」


「全部残ってる。日払いにしてくれる?」


「……店が開くまでの1週間はここで昼と夜の食事をするように!私も安易にお金を渡しすぎたから明日からそうします」


男が5人。女の子がたった3人。6人も補充しないといけない。


ツンツン二の腕を突かれてそちらを見るとお母様だった。


「元下働きの子達を雇わない?」


「あんまり年齢の高い方はちょっと、困ります」


「……実はね、王都の屋敷で使ってた子達がロクにお給料も出ないし、進言したら蹴られたりして、酷い事されてるから、私の所へ逃げて来るって、アレク達が出かけてる間に「伝達」があってね、その、引き受けたの!!!ごめんなさい!」


「キャサリン、授業して。お母様、家で話しましょう」


「さあ!やりましょう!自分の誇りの為に!」


キャサリンの元気のいい掛け声を背中で聞いて私とお母様、お父様は道場からドア一枚で隔てられているダイニングへと移動した。


ヨランに食事を食べる人数が増えると言うと、嬉しそうに返事をしてくれた。


「50人以上もどうするつもりだったんだ!!!私達はアレクに養われてる立場なんだぞ⁉︎エイベル」


台所にまでお父様の怒号が聞こえてきた。

ダイニングに行こうとした私の手首をヨランが引いて止めた。


「……エイベル様にちょっと現実を受け入れさせた方がいいから、もう少しだけ出て行くなよ?アレク様」


「職を見つける間なら道場で寝泊まりさせたらいいし、私、アルバイトして公用金貨10枚あるから、しばらくは食べさせられるわ!」


「……エイベル、その公用金貨10枚だってアレクがお前の為に理由をつけてくれた小遣いだ!今の私達に施しが出来るほど余裕は無い!!!エイリーンの小遣いの公用金貨10枚だってアレクが用立ててくれたらしいぞ!私達が出来るのは平民として、暮らすことだ!嫌なら実家に帰って贅沢になってから施しでも、なんでもしろ!いつでも離縁してやる!」


「ランドルフ!ヒドイわ!わぁああああああっ」


これは出て行かない方がいいな。

私はカルトラの冒険者ギルドに転移した。

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