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33話 剣とお酒

お父様から、剣を買ってくるように言われた。

帝都カルトラでは、夜になって開店する武器屋、防具屋、魔道具屋が多いらしい。

逆に昼間から開いてる店は観光客向けに外貨を稼ぐことを目的にしているあまり腕に自信が無い職人が営業してる店だとお父様は言い切った。


そう言うわけで夜開く武器屋をギルドで聴き込みして、乗り合いクマ車で移動する。

皆、疲れた顔をしているが今日も生き残った喜びに溢れている。


「……おい、ガキ。びびって漏らすなよ!」


皆がゲラゲラと笑う。

乗り合いクマ車がいっぱいで、この中で一番強い人のヒザを借りたのだ。

それは正解だった。

この人は私が強い振動で放り出されないように左手でベルトしてくれるくらい優しくて、ただちょっぴり口が悪い。

さっきから私を話しの肴にしてる他の冒険者達にエサを付けて放り込んだのだ。

名前をメリエレさんと言う。


「メリエレさん、一緒に今から一杯どうですか!」


「……用が出来た。また今度な」


「そんなガキほっときゃ良いんですよ!」


え⁉︎何で私の話になる?


「そう言う訳にも行くか。親も見当たらねえし、翌朝裸に剥かれて死んでたら俺のせいにされる」


「違いねぇ!!!メリエレさんはツラだけは凶悪犯みてぇだからなぁ!」


「……ファイン一回死んどくか?」


うん!メリエレさん顔が傷だらけで怖いよね。治癒して貰えないのかな?

…メリエレさんにお酒奢ってあげよう!

でも、その前に。


「……メリエレさん、私、1人で大丈夫だよ?」


メリエレさんと周りからのため息。


「いいから、ついて来い!」


いつの間にかクマは止まっていて、メリエレさんに手を引かれて、乗り合いクマ車に乗ってたほとんどの人がメリエレさんと私の跡を付いて来る。


「あ⁉︎今の店寄ります!」


「やめとけ。大人の武器しか売ってない。お前のはこっちだ!」


食べ物屋さんが多い明るい通りにテレンス武器店はあった。


「お前らは先にタリスの店に行っとけ。後で行く」


「「「「「「「「わかりやしたー!」」」」」」」」


中に入って行くとか細いおじいちゃんが店番をしている。


「メリエレ、またカモを連れて来たか!」


途端にイキイキするおじいちゃん。


「剣帯と剣を2本。ロングソードみたいなのを下さい!予算は公用金貨25枚までで」


「……貴族か?」


メリエレさんの口調が冷んやりする。


「私が討伐して稼いだお金です!いけませんか?」


「……それならいい。オヤジさん選んでくれ」


「ホホーッ!!!久々の大金の稼ぎ!コレを持って構えてくれるか?」


何故か1つしか渡されない剣。仕方なく1本でのリトワージュ流剣術の構えをするとメリエレさんもおじいちゃんも大きく目を見張った。


「……何歳からしてる?」


「3歳から2年」


「……構えに隙が無い。ちょっと型をさらってみろ」


「ダメです。剣圧で店がぐちゃぐちゃになります」


「……表でやるか」


何故かメリエレさんが腰につけていたバスタードソードを抜いて構えた。


「……本気でかかって来い!」


「行きます!」


メリエレさんが私の一閃を受けてバトルモードにスイッチが入り激しい剣戟へと発展。

こんなに強い人と戦った事がなかったから興が乗ってついつい私もマジに。

30分くらい続いた戦いも佳境に入る。2人とも疲れたのだ。

メリエレさんが最後の一撃を叩き込む。私は受け流しメリエレさんの首に剣を当てた。


ドオッという歓声と拍手、周りには結構な人垣が出来ていた。

メリエレさんは凶悪犯真っ青の睨みを利かせた顔を私にしていて、途轍もなく悔しそうだった。


「お前の名前は?」


「Cランクのケイラスです。名乗らず失礼しました!」


「お前か!!!幻惑森林で魔法無双してた馬鹿は!!!剣もメチャクチャ強えぇえだろうが!!!」


あー、知られちゃってる。


「……だって、剣買うお金持ってなかったし」


「店に入るぞ!!!俺は見世物にはならない!」


だって!かかって来いって言ったよね⁉︎


テレンス武器店に入るとおじいちゃんが剣帯を持ってきて私の腰に合うよう調節してくれた。

剣は子供用のロングソードと、刃が黒い金属で作られた同じ大きさの剣を買わせて貰えた。


「この黒いの何ですか?」


ちょっとだけ普通の剣より重い。

おじいちゃんはご機嫌で答えた。


「魔鉄鋼って言う金属だ。魔法を通して使ってもいいし、そのままでも斬れ味はバツグンだ。公用金貨20枚する」


「……あと、いくら払えばいいですか?」


「普通のは、公用金貨5枚でいいし、剣帯は長らく売れなかった双剣用だから、オマケに付けてやるわい!よし!出来た!金を出せ!」


ひと昔前の強盗みたいにおじいちゃんに言われて公用金貨25枚と、大金貨1枚そえる。


「美味しい食事でも、どうぞ!ありがとうございます」


「またな!ケイトスくん」


店を出るとメリエレさんの後ろからついて行く。

メリエレさんは私を無視して裏通りに入ると外壁に生花が飾ってある店に入る。私も入った。

メリエレさんがカウンター席に座る。隣りの席に登る。そこには普通の顔のお姉さんがいた。


「メリエレ!どこ行ってたのよ!…あら、久しぶりに小さい子連れて来たのね!何か食べたいものある?」


「美味しいならパンだけでもいいです!」


「ふふ、フライドポテトは好き?」


「好きです!飲み物はミルクでお願いします!」


「……あるか!そんなもの。ポンカのジュースな!タリス」


メリエレさんにツッコミを入れられて飲んだポンカのジュースは粒々果汁入りで甘酸っぱくて美味しかった!

パンはなかったけどふわふわの平たいパン生地にチーズを置いて焼いたペッサンって言う料理がメチャクチャ美味しかったから、お代わりしたら半分メリエレさんに食べられて腹が立ったのでポカポカ二の腕を叩いた。


「ケイトスくんの取っちゃダメでしょ!」


そう言うとフライドポテトを出してくれたのでメリエレさんと奪い合いながら食べた。

メリエレさんは気が済んだのか、ファインさん達とお酒を飲み始めた。私は公用金貨1枚をタリスさんに渡すとタリスさんは大きく目を見張って口を覆った。


「メリエレさん達と私の食事代です。今日はお世話になりましたから。精算まで内緒にしておいて下さいね。食事美味しかったです」


店内から下町の家に転移すると私の部屋でエイリーン兄上が待ってる間に寝たのだろう。

ベッドに大の字に寝ている。

兄上の上にダイブするとさすがに起きた。


「アレク、優しく起こしてください。って、寝てるんですか?」


「フフフフ、見て見て兄上!剣買ったの!!!」


2つの剣を剣帯から外してエイリーン兄上に見せると兄上は一つづつ抜いて剣身を確認した。


「……魔鉄鋼じゃないか⁉︎良く売ってくれたね?」


「うん!代金内だったから売ってもらっちゃった!」


「気軽に他人に見せてはいけないよ?取られるならまだしも殺されたりするから使う時は1人の時にしなさい!」


「わかりました!…ところで兄上はどんな御用?」


兄上は床にひざまづき私に頭を下げて言った。


「お金を給料日まで貸してください!」


私は兄上をベッドの端に座らせて、話を聞いた。

親睦会と称した飲み会が1週間に3回はあるらしく、今まではアーベルン子爵が特任団の分を全部出してくれてたのだが、妻君に無駄遣いを怒られてしまったらしい。

そこで困ったエイリーン兄上は休みをとって私に会いに来た。

なるほど!


「特任団のお給料っていくら?」


「……それが、途轍もなく安いんだ!」


エイリーン兄上がなかなか吐かないので、悪魔のささやきをしてみた。


「今なら公用金貨1枚が付いて来るよ」


「たった大金貨6枚なんだ!週3で飲み会なんかしてたら、すっかり無くなっちゃうよ!」


「そんなに高い店で飲んでるの?」


口を濁していたが、綺麗なお姉さん達が注文した食べ物を食べてしまうお店らしい。

お酒も勝手に飲まれちゃうらしい。


「わかった!綺麗なお姉さんが働いてるお酒を出すお店を作るね!そこに食べに来て!特任団の人は何人いるの?」


「34人だよ。でもお金がかかるだろう?」


「父上に、アンデットの魔石売ったお金でやりくりしていいって言われてるから、クロスディア家の事業として進めるよ!兄上には、お小遣いあげるから騎士として最低限の身だしなみを整えようね?」


兄上に公用金貨10枚を渡したら大事に革袋に入れてた。

後はどこら辺に店を出せばいいか、その綺麗なお姉さん達はどんな格好なのか事細かにエイリーン兄上に事情聴取して、今度は剣を外して部屋着に着替えお母様の所へ行く。


お母様は退屈なさっていて、話し相手が来た事を喜んだ。


「お母様、絵は描けますか?」


「ウフフ!得意よ!何描くのかしら?」


「お母様、これは私からの正式な仕事の依頼なのです。報酬は公用金貨10枚です」


お母様はたおやかな笑みで紙とペンを持って来た。


「お母様がお父様にしか着て見せたくないようなドレスを描いてみて下さい!」


「……ま、まあ!」


お母様は絶句していたが「公用金貨10枚の為ですもの!」とつぶやいて私を部屋から追い出した。


お金の力ってすごいな。

もう一度外出着に着替えて、カルトラの冒険者ギルド本部内に転移する。


窓口でルメリーさんが居るか聞くといるらしい。

この前のゴージャスな応接間に通された。


「ケイトスくん!家は気に入った?」


「はい、快適です。今日は依頼があって来ました」


ルメリーさんはテーブルの上に身を乗り出して来た。


「何⁉︎」


「色っぽいドレスと言うかワンピースの生地でそういう物を安く引き受けてくれる仕立て屋さんを探しています。全部で20着。同じ型のドレスでいろんな色で作って欲しいんです」


「……何するのそれ?」


ルメリーさんの目が座っていた。




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