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32話 お披露目

宿で朝食をとり、カルトラの冒険者ギルド内に転移するとやや、冒険者達で混雑していた。

私はルメリーさんを探したがいない。

夜勤なんだろうか?

窓口へと続く行列の一つに並んでると後ろにいた青年が大銅貨2枚くれたら髪をきちんとしてくれるというので任せて見た。

綺麗な編み込みにしてくれたので大銅貨3枚渡した。

列が進まないのでマオルというソロの斥候の青年とカルトラの近くにあるAランクの魔獣ばかりの薬草樹海についての情報を銀貨5枚と引き換えにもらった。

Aランクの魔獣はオマケで薬草が貴重な物が沢山ある樹海らしい。

方向感覚がおかしくなるので案内人が必ず必要。

案内人に薬草の場所を教えてもらって採取も任せる時は別料金が必要。

薬草の採取専門のエキスパートもいるが、めちゃくちゃ依頼料が高い上に珍しい薬草だった場合にはタダで譲らないといけないらしい。


「……ハア、やっぱり私は幻惑森林で稼ぎます」


「はあ???」


長距離の転移も出来るようになったし。

あそこは人が来ない。

ソロで稼げるし、一番いいよねー!


なんて思ってる内に窓口に到着した。

マオルさんが抱っこしてカウンターに顔が見えるようにしてくれた。

ギルドタグを提出すると、窓口のおじさんが事務員さんを呼んだ。


「ケイトス様がいらしたから、案内して差し上げなさい!」


マオルが私を床に下ろした。


「ありがとうございます!マオルさん」


「ギルドからなんか大金使った物でも買ったのか?」


「うん!家買ったの!」


「……良いなぁ!オレもいつかは家買うぜ!またな!ケイトス」


「はい!ありがとうございました!」


私は事務員のお兄さんロウロさんとギルドの馬車に乗って貴族街の検問所を横目に見てどんどん下町の方へと進む。

すると【紳士・淑女の嗜み教えます。1レッスン大銅貨3枚から】という大きな木の看板が目に入って来た。ムム、商売敵がここにいる!

馬車は看板の下で止まった。


「着きましたよー!さー、降りて下さい。ケイトスくん」


まさかの展開。私のお家だった!

そしてルメリーさんがお父様とお母様とご近所の方たちを呼び立食形式のイベントを開いているらしい事が分かって、ロウロさんにお願いしてクロスディア魔石直売店に馬車で向かって貰った。


私が店に顔を出すと店員さんがアスターを呼びに行きアスターが出て来て私は店の奥に連れて行かれた。


「お帰りなさいませ。アレク様」


ぎゅーっと抱きしめられて私はアスターの背中を叩いて離して貰った。


「魔石、父上から預かって来たんだけど、どこに置く?」


「隠し部屋に置きますから、ここに全部出して下さい」


出す側からアスターがアイテムボックスに入れていく。


「ごめんね、今日はお父様達手伝わないといけないから、また、明日来るね!」


「申し訳ありません。明日から1週間私は出張でいないのです。今、顔を見知っているのは私とバランだけなので、1週間後にこちらから、お伺いします」


ルメリーに最初に会った時に書いてもらった住所を渡すとアスターの顔が険しくなった。


「下町ではないですか!何故こんな場所にお住みになられたのです!」


「ラムズ公爵家の財産全部、家名も含めて没収されたの借金のカタとして」


アスターの呆然とした顔が面白い。


「何故そうなる前に頼って下さらなかったのです!」


「1週間以内に公用金貨6万枚だったの。ハンナの店高かったよね?貯金なかったでしょう?だから、私も頑張ってみたんだけど馬が3頭買えるだけのお金しか貯まらなかったの」


「……わかりました!今から行きます!連れて行って下さい!」


「店の人に言ってからにしたら?待ってるから」


アスターは転移して顔を見知っているリトワージュ流剣術の弟子を連れて来て表に出て「出かけてくる」と一言だけ言って私の手を握った。


下町の家に転移した。


ルメリーさんとお父様とお母様が頑張って行列のお客様をさばいている。

アスターを連れて参戦すると子供たちにお菓子を一つづつ渡す役目を仰せつかった。

アスターはお父様の横でエトレ流剣術の契約書と月謝を預かる役目を振られて表面上は笑顔で、時々私を睨みながら見事な采配を振るった。


「いやあ、助かったよ!アスターくん」


もう夕方だ。

アスターはうなづきながらスゴイ食欲を見せている。

何でも、調理を手伝っていた弟子を連れて来たらウデが悪くてかろうじて食べれる物しか作れないらしい。


「ランドルフ様にお願いがあります!」


「私に出来る事なら何でも叶えてあげるよ!」


イヤ〜〜な予感がする。


「私をこの家に住ませて下さい!」


あーあ、やらかしたよ!アスター。


「……何故か聞いてもいいかい?」


「この方が私の剣を捧げた主。アレクシード=クロスディア様だからです」


「……お父様、お母様、言えなくてごめんなさい!私はヘキサゴナルの貴族の子です!!!」


「知ってたよ。アレク」


お父様は困った顔で打ち明けてくれた。


「特別な石の産出地なんて限られてるからね。学校には届け出ておいたから、普通に通えるよ。大丈夫。ケイトスがアレクに変わっても君は私達の自慢の息子だよ。帝国にいる間だけでも一緒に暮らしておくれ」


「……おどうざま!」


私の事を知っていても、お金の為にアスター達に引き渡さなかったお父様。

私は思わず号泣した。

アスターは躾けられた犬みたいに座ってる。


お父様は私達の後ろに来てアスターと私の肩に手をおき、厳かに言った。


「アスターくんはアレクの騎士だ。一緒に居たいのはよくわかっているが、部屋がないんだよ!」


「では、アレク様と同じ部屋でもいいです!!!」


なんてメンタルが強いんだ、アスター!

でも、それは私がイヤだなあ。


「アレクの部屋は子供サイズの屋根裏部屋でね、狭くて大人はとても入れないよ。子供用のベッドを置くのでさえも難儀したんだ!」


「……わ、わかりました。諦めます」


「すまないね、いつでも遊びに来ていいからね」


「はい!ありがとうございます!では、アレク様また、会いに来ますね!」


「楽しみにしてるね、アスター」


アスターは玄関から出て行った。

転移したのだろう。

アスターの気配が消えるとお父様は私を部屋に案内した。


2階の階段を上がってすぐの手前の部屋にある私の部屋は屋根裏部屋でも、狭くも無かった。

ベッドも大人サイズだし、他にも部屋があるのに、どうしてお父様はアスターを追い返したんだろう?


お父様は部屋の真ん中にあるテーブルの向こうに座った。

私はベッド側の椅子に座る。

お父様は私の考えを見抜いたかのように、話しかけてきた。


「アスターくんは、死にたい騎士だ。主人の為に死ぬ事を躊躇わない騎士だ。しかも、すごく弱い。そしてそんな騎士を庇うだろう君も、つられて死んでしまう。……ろくでもない死に方だと思わないか?

だから、断った!」


「……お父様ありがとうございます」


生々しく想像してウツになる。

私を逃がすためにオトリになるはずが瀕死のケガを負うアスター。やっぱりアスターが心配で逃げなかった私。アスターと一緒に死…いやいや、死なない!


「それにアレクは殺気が無いと反応出来ないんだろう?それでは、剣聖と名乗るには値しない」


ゔっ!お父様今日はピリッと辛口ですね。


「強くなりなさい!心も身体も!それからアスターくんのような盲目に自分を信仰するような騎士はこれ以上作らない事!私から騎士学校在学中に成し遂げなければならない宿題をあげよう」


「ハイ!いただきたいです!」


「よろしい。

自分と対等な存在の騎士を最低でも2人平伏させなさい!君の武力と心を持って全身全霊で捕まえてクロスディア辺境領まで持って行きなさい!以上!」


それってスゲ〜難題じゃないですか?

しかも2人以上⁉︎


ため息を堪えて部屋を出て行くお父様に叫ぶ。


「やります!!!」


お父様は微笑んでドアを閉めた。

私はまず、自分の騎士にする条件を決めた。

それはクロスディア辺境領で必要で、私には無いもの。


「聖魔法を使える事!もしくは治癒魔法を使える事!」


そして、どちらも私と同じくらい剣を使える事!!!

幸いにして、聖魔法を使える騎士は帝国には普通にゴロゴロいる。

そんな奴らに声を大にして言いたい!


クロスディア辺境領に来い!金はある!



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