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31話 父の思い

お腹が鳴る音で目が覚めたら、お父様もお母様もぐっすり寝ていて起きない。

朝食を3つ分持って来て貰うといい香りで目が覚めたらしい2人はシワクチャのドレスと騎士服で、食卓についた。

クリーンを掛けて全身の汚れと服のシワも伸ばすと、さあ、朝食だ!

素朴な感じのパンが美味しい。

バターを塗って食べると一層美味しい。


「お父様とお母様にダンスホールのついた屋敷を買うつもりでいたのですが、貴族からは笑い者になり、ラムズ領の領民には私達を金で売ったくせに自分達は屋敷を構える金を隠してたんだなどと中傷されたくないので普通の家にしました。

お父様、これでお母様と昼食をなさってください。それから、自分達が下流貴族の子供達に安い値段で教えてあげる技能がお二人にあれば、この紙に全部書いて下さい」


大金貨3枚を渡すとお父様は額に押しいただき私に、ありがとうと言って早速お母様と一緒に出掛けた。

あの二人はおかずだけ全部食べてパンが山盛り残っている。私はお腹いっぱいになるまで食べて食べられなかった分はアイテムボックスの中に入れた。

食器を下げに来た給仕について厨房に行きアイテムボックスに入れていた狩の残りのホロホロ鳥を6羽とホーンラビットを3羽コックさん達に差し出した。


「私の母がおかずがもっと食べたいみたいなので、どれかを使って、美味しいものを食べさせて下さい。

この宿の料理は口に合うようでたくさん召し上がられるのです。いつもの料理に一つ料理を足して下さい!お願いします!」


「お、おう!残ってる分は買い取ろうか?」


「手間賃になるのでしたら、他のお客さんにも使って下さい!代金はいりません!夕食にお願いします」


私は宿を出ると冒険者ギルドの中へと転移した。

来る時間が遅かったのか誰もいないホールでうろちょろしてると、スゴく訛りのある帝国語で呼び止められた。

帝国語の本を指差していい歳のカッコいいおじさんが泣きそうな顔で何か言ってるが、サッパリわからない。日焼けした肌から南東諸国連合国かと思って色々な言語で話しかけて見たが出て来たのはチェルキオ語だった。


『フローズンフロッグの説明を読んでくれないか?礼はする!』


フローズンフロッグはキスカ帝国にしか住んでない魔獣だ。


『確か、討伐するには帝国の許可が必要で、薬として国外に持ち出すつもりなら法外な税金がかかるよ?』


『チクショー!騙された!そんな話聞いてないぞ!あー!どうする⁉︎どうすればいい⁉︎」


一応調べたら何と、帝国の人でも宮廷魔道士しか立ち入り出来ない永久凍土地帯で氷に覆われて、仮死状態のまま生を終えるらしい。詳しくは書かれてなかった。


『誰かに依頼出来ないか⁉︎』


心当たり…は、無くもないか。


『聞いて見るね。お金いくらぐらい出せる?』


『公用金貨500枚が限度だ!!!』


『まあ、無茶振りして見るけど、受けてくれなくて当たり前だからね?』


『助かった!ありがとう!俺はエコーズ=クラスプ。ヘキサゴナルの貴族で男爵をしている。自領の村人たちが伝染病にかかって、それの治療にフローズンフロッグの血が必要なんだ!俺は王都に出張してて、罹患を免れたが、医者の私の娘が伝染病にかかって、もう、1カ月もつかどうかだと、俺に遺言状を送って来たんだ!』


あー!聞いちゃいけない事聞いたね?

クラスプ男爵領は確か、食用の火ガエルの養殖してたら、鳥系の魔獣が食い荒らしに来るようになって、今では渡り魔獣の討伐地として潤ってる村だよね。


指名依頼書を書いて数十分後、アスコット男爵がギルド内に転移して来た。

フローズンフロッグをガラス瓶に詰めて。

私達全員でラムズ領のサレル村の薬剤師さんの店へ転移して、薬を作ってもらったら私の出番!

ヘキサゴナル王都の工房地区まで転移した。

ものすごい倦怠感を堪えてクラスプ男爵領まで刻んで転移すると閑散とした村には治癒魔法使い達が派遣されていて私はホッとして身体の力を抜いた。


それから3日間私は寝たきりだったようだ。

何故かよく見たことがある天井に私は起き上がる。


「……何で、クロスディアに?」


紛れもなく私の部屋だ!

ノックと共にアスコット男爵が3日前と同じ服で昼食を持って来た。


「起きた?ごめんなさい!不粋な真似した奴がいてね、貴方が帝国で散々探されてるアレクシード=クロスディア様だってわかって大騒ぎになって私がクロスディア辺境領まで転移したのブラスト側から」


「だ、大丈夫でしたか!!!アスコット男爵様」


「クロスディア辺境伯様が、貴方だってすぐわかってこの屋敷まで道を作って3人で転移して帰って来たの。私もさっきまで倒れてたのよ。はい、食べなさい!」


「……ありがとうございます。アスコット男爵」


「いいのよ!私もいい物たくさん、もらえたし!」


アスコット男爵の瞳が公用金貨に見える。

アスコット男爵が私の太ももの上に食事の載ったトレーを置いて、私が魔力枯渇で倒れてからの事を思い出しつつ話してくれた。


〜〜sideカーザ=アスコット〜〜


銀冠山脈越えする魔力量持ってるなんて、どんな化け物よ!

それなのにまだ、転移できるの⁉︎

依頼主のクラスプ男爵に口止めしなきゃならないわね!

でも、どんどん身体が冷たくなってるわ!ケイトス!


『ありがとう!君!!!出来るだけの便宜を図るからな!』


この人、帝国語が出来ないの⁈

試しに話しかけてみるとまるで話にならなかった。

ええい!!!昔取った杵柄よ!


『この子を休ませていただきたいです!私も休みたい。お願いします』


『アスコット男爵、ウチに泊まって下さい。君⁉︎君⁉︎何て冷たい身体なんだ!急いで風呂で温めよう!』


『寝たら治りますから!魔力枯渇です!!!クラスプ男爵、どうやって帰ったか、言わないでくださいね?』


『言える訳が無い!』


わかってりゃいいのよ!

私はうなづくとケイトスを抱き上げて村の自分の家に入って行くクラスプ男爵の後について石の館に入った。中では治癒魔法の使い過ぎで床に布団を敷き寝てる女性たちでいっぱいだった。


私も疲労から酷い眠気が襲って来て2階の部屋に案内されて、まともなベッドですぐに眠った。

起きたのは階下から上がって来た荒々しい足音と大勢の気配でだ。

ノックもなしに開いたドアに鍵をかけるクラスプ男爵の背中には深い太刀傷。

両手の中には寝たきりのケイトス。

クラスプ男爵の片手に握ったカードが突き出された。


『これでこの子がアレクシード=クロスディア様だと証明できる!!!頼む!これが報酬の公用金貨500枚だ。クロスディア辺境領に届ければ公用金貨1万枚、報酬がもらえる、頼む!助けてくれ!この子を!』


アレクシード=クロスディア⁉︎

発見報酬公用金貨1万枚のお宝じゃない!!!


クラスプ男爵からそのカードを受け取ると、ドアが外側から破壊されて完全武装した騎士たちが部屋になだれ込む。


えーい!考えてるヒマはない!


私は昔良く行ったブラストへとケイトスを抱えて転移した。

そこから見つからないようにクロスディア辺境領まで刻んで転移。

アンデットに囲まれた時には死を覚悟したがものすごい魔力量の聖魔法が辺り一面に広がっていたアンデットをサッパリ消した。


「……アレクシードを連れて来て下さってありがとうございます」


鎧姿の白銀の髪をうなじで束ねた美麗な年齢不詳の男がわずかに微笑んで駆け寄ってくる。

疲れ切った身体を無理矢理前に進めておそらくクロスディア辺境伯様と思われる方にケイトスを渡した。私は疲れて立ち上がれなかったが、魔力譲渡されてもう少し頑張る羽目に。

それらのことを軽く話すとケイトスは食事を済ませ立ち上がった。


〜〜sideケイトス(アレクシード=クロスディア)〜〜


「アスコット男爵、お礼になるかわからないのですが、これを襟巻きにするといいらしいです」


銀色に輝く毛皮をアイテムボックスから出しアスコット男爵に渡すとアスコット男爵の口が大きく開いた。


「わ、わ、わ、わ、私に?」


「はい。お父様がお母様に贈るはずだったのですけど、貴族じゃないのにそんな贅沢出来ませんから、ガハト様に仕立てていただいたらいいかと思って」


アスコット男爵が私に抱きついて来て勢いあまってベッドに背中から倒れ込んだ。

そこに父上が来て、アスコット男爵が慌てて私の上から退いた。

父上がアスコット男爵が持つ毛皮に気づいてうなづく。


「婚約は済ませたのか?」


「「誤解です!!!」」


「冗談です。夕方には本陣に戻らなくてはいけないから手短に話して下さい。今までの事を全部聞きたいアレクシード」


父上、訛りがあるけど帝国語上手だな。

私は父上と王都で別れてからの事を時系列を追って話した。

一切、痛かったとか怖かったとか言わなかったが、アスコット男爵も父上も魔力が暴走寸前の大激怒状態に。


「それでですね、父上。クラスプ男爵領に資金援助してあげてください!」


「もちろんだ!」


「それから私の剣は見つかりませんか?」


「……諦めて新しく剣を買いなさい。魔石を持って行ってくれないか?アスターの所に」


「はい!これからは自由に会えるんですね」


「そうだな。長い休みには帰って来なさい。顔を見せるだけでいいから。元気でいると、知らせておくれ」


「……父上。身体に気をつけて!私も夕方に帰ります!虹証は父上が持っていて下さい!」


「そう言う訳にもいけない!虹証は帝国では意味がないが、自分の本当の能力が魔力鑑定紙なぞ、使わなくてもわかる便利なものだ。しかもチェルキオ語で書かれてるから帝国の大部分の奴らにはサッパリわからないというオマケ付きだし、本人の血でも垂らさないと詳細は見れない。アレクシード、魔力枯渇寸前まで、魔力を使ってはならないよ?」


「お約束出来ません」


「アレクシード……」


「父上だって守ってないでしょう?」


「私は大人だから自分の限界は分かる!」


「父上だけズルいです!!!」


「……他に、言いたいことはないか?」


あ、バフォア様の事言わなきゃ!


「旧マルカン公爵領に帝国とヘキサゴナルの王女の子供のフェンリル=バフォア様が領主になるので、力になってあげて下さい!

アンデットの魔石の直売店を置くだけでもいいですから、助けて差し上げてください!

大らかな良い方なんです、ご本人は!!!

取り巻きは知りませんが」


「……すまないが、魔石の直売所など出したらラスター伯爵領にはもっと安く卸さないといけなくなるから出来ない」


「……クソジジイめ!私を暗殺するだけじゃ事足りないのですか!いつも、父上をいじめて金を無心して!」


「私が情け無いからそれ以上はお客様の前では勘弁してくれないか、アレクシード」


「申し訳ありませんでした!父上。バフォア様は私を帝国でのお父様達に会わせて下さった、恩人なのです。アスコット男爵もエイリーン兄上とバフォア様からの紹介ですし、何かして差し上げたいです!」


「……資金の提供ではどうだ?」


「……それはしない方がマシです。わかりました!私が受けた恩ですから、私が返します!」


「そうか?やってみなさい。いくらか、渡すからその範囲内で頑張ってみなさい…私はダメな親だ。お前の望みを何一つとして叶えてやれない」


「そんな事は無いです!!!私の父上は最高の父上です!」


ベッドの端に隣り合って座る父上のお腹に抱きついて気付いた。

父上、また痩せてる。


「……父上!!!」


「……何故怒ってる?どうした?」


「父上、食事してるの!!!また、痩せてるよ!!!バカ!!!何で食べないの?」


父上は困〜った顔で私を抱きしめて頭を撫でて誤魔化した。

アスコット男爵が私をなだめる。


「だってねー、大切な人が暗殺されました。実は生きているけど運任せの亡命をしました。はい、ケイトスはご飯食べられる?」


「父上。私は元気です!今日からモリモリ食べてください!」


「顔を見て安心したら、たくさん食べれた。ではな、愛してるアレクシード」


「はい!私もです!父上」


最後に父上と抱き合って、本陣に転移で連れて行ったら、皆に髪の毛を引っ張られた。父上が激怒してやめさせていたのが印象的だった。

本陣から屋敷に転移するとアスコット男爵が屋敷前で待ち構えていた。

ダンスホールの木箱の中のアンデットの魔石の大きさを確認して20箱アイテムボックスに入れる。


まず王都の工房地区へ転移。

適当な店でアミュレットを一つ買いハンナのお土産にする。

王都のクロスディア魔石直売店に来た時に渡して貰おう。

アスコット男爵もお土産を買うのにあちこちしてたら日が暮れたので、一気に銀冠山脈越えした。

サレタ村で休もうとしたら、アスコット男爵が、王都カルトラまで転移して連れて行ってくれた。

宿に転移するとお父様達は4日前に宿を引き払っていたらしい。

私は限界を迎えていたので宿で1泊した。


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