3話 VIP
王都の素材採取組合は、石造りの丸い塔だった。
出入り口が虹証の色によって違うらしく、虹証を持ってないアスターさんを通してもらうのが大変だった!
王都にいる事情を一から十まで話して虹証を渡して魔石の詰まった麻袋を窓口で次から次へと出すと私達は個室へ案内された。
薬草茶を出されて2人でもうお腹がタプタプで飲めないと話していると体格の良い黒髪に赤い目の中年男性が部屋に入ってきた。
私を見てニヤリと笑うといきなり、頭を撫でた。
…びっくりした!!!
「お前さんが期待の新人さんか!俺は組合の王都本部の総組合長のヨザック=ラフネという。こんななりで何だが一応男爵をしてる。よろしくな!」
ローテーブルを挟んで向かい側に座ったヨザック男爵は虹証を僕に返した。
色が緑になってる!
「お前さんが5000個も魔石を持ち込んでくれたから、本当は青証まであげようとしたんだが、お前さん、見た目通り5歳なんだって?
緑証にするにも年齢制限があるんだが、アンデットの魔石は喉から手が出るほど欲しかったんだよ!
ちょっと今から訓練場へ行こう。
青証にするか、どうか、確認する」
そう言うとヨザック男爵は私を肩車して廊下に出た。
肩車されてハイになった私は失礼ながらヨザック男爵に話しかけた。
「なんで、アンデットのませきがそんなにほしいんですか?」
「アンデットの魔石は聖属性の魔法が付与しやすいんだよ。ドゥルジー市国で1番売れてるお守りの素材でいくらでも欲しいんだが、普通はクロスディア領内で消費されるから中々手に入らないんだよ!
また、持って来てくれ!」
「……10ねんはおうとにいるからムリです!」
「そうか、そりゃ残念だな。住む所は決めたか?お前さんちはやめとけ!」
「なぜですか?」
「……ハァー、お前さんには酷だが、俺が言わなくても王都に居たら誰でも知ってるから、教えておく」
何だろう?
しかめっ面のヨザック男爵の顔を横から覗くと頭をまた撫でられた。
「お前さんの母親は若くて容姿端麗の男たちを屋敷に部屋を与えて囲って遊び呆けてる」
……どこが友人だよ!!!ウソついてんじゃねー!執事!!!
思わずヨザック男爵の頭に添えていた手に力が入る。
「イテテテ!!!髪が抜ける!優しくしてくれ!」
背中を撫でられて、アスターさんが居た事を思い出した。ヨザック男爵の頭から手を離すとヨザック男爵が手を持って私の体を固定する。
「結構な金になるから家を買って住む方がいいだろう」
「ようねんしゃきしがっこうにはいるおかね、のこしてもだいじょうぶ?」
私がそう言うとヨザック男爵は泣きそうな顔をした。
「……そうかあ、そこまで金が無いのか。
家は買えないな。
割と入学後に馬やら剣やら買わなきゃならないから入学金はそこまで高くない無いが、制服やら、教科書、アミュレットなんかの素材にも金がかかる。
まあ、1人暮らしするなら、1カ月公用金貨1枚で俺んちに住ませてやる事も出来るから気を落とすなよ?」
「……ちちうえにたべものおくるだけおかねないかな?」
「……クロスディア辺境伯は大人なんだから、大丈夫だ!!!お前の爪の垢を煎じて母親に飲ませてやりたい!」
「……アレク様。ウチから援助しますから、まずは、ご自分の事を第一に考えて下さい!」
「アスターさまありがとう!なんとか、こっちでもませきかせぐね!」
言ってるうちに地下の訓練場とやらについた。
ヨザック男爵が「灯火」の魔法で室内を照らすと訓練場でマントを被って寝てたハンター達が起き上がり壁側に移動した。
「すまんな、稼ぎが無かった黄証の奴らが寝ぐらにしてるんだよ。剣は持ってるか?」
「ぼっけんでいいですか?」
「構わない。俺もそれにする」
訓練場の壁に掛けてある武具の中からヨザック男爵は木剣を取ると私を訓練場の真ん中に連れて行き向かい合って構えた。
アスターさんが、審判だ。
「始め!」
私はシュガル様にかかって行くより少しだけ本気を出して木剣を一閃した。風圧という力で弱いアンデットならこれでバラバラになるのだがヨザック男爵は涼しい顔で木剣を一閃して相殺した。
「……お前なぁ!青証になると稼ぎが違うんだから本気でかかって来い!」
「……斬身」
私は割と本気でリトワージュ剣術の足技「斬身」という分身技を使って魔法と剣技でヨザック男爵にかかって行った。
「待て待て待て⁉︎お前、全属性か!どわぁ!!!グハッ!やめて!助けて!何だよ!めっちゃ強いじゃねーか!」
土魔法「アースクエイク」で身動き取れなくなったハンターとヨザック男爵を魔法で掘り出し、お詫びにアンデットの小さな魔石を2つづつ配ったら、皆さん起き上がり走って訓練場を出て行った。
皆さんにお礼を言われたが埋めたお詫びだ。
「……まぁだ、持ってんのか!全部出せ!」
「……クズいしだって、ししょうにいわれたから」
「エンゲージリングに使うなら上等な大きさだ」
そう言うのは師匠にもらった異空間袋に入れている。
粉タバコ入れみたいなコンパクトさだ。
…そう言えば師匠、お土産は粉タバコがいいって言ってたな。ガイコツなのに味判るかな?
またヨザック男爵に肩車されて今度は青証の窓口に移動する。
アスターさんが身分証を提示して私達にピッタリついて来る。
この人、貴族らしいよね?割と。
男爵以下の長男以外は礼儀が身に付いてないと師匠が言ってたが、昔より厳しいのかもしれない。
窓口の担当者はいきなり現れた総組合長のヨザック男爵に硬直して対応した。
「総組合長!とうとう養子を迎えたんですか!」
「バカ!これが、魔石の元だよ。強いから青証にする」
「……はあ」
担当者は私の虹証を受け取って窓口から離れた。
「……ラフネだんしゃくさま、おこさんがいないのですか?」
「居るけどラフネ村で結婚せずに暮らしてんだよ。ちょっと難しい仕事に就いているから」
「さみしいね」
「いや、全然。もうそろそろ俺も組合辞めるし、村帰ったら会えるしな!」
四半刻待たされて、また個室へ移動。
さっきの窓口の担当者が青証にサファイアみたいな小さな宝石が付いている物を私に両手を添えて差し出した。
「買い取り額が大きいので国民証の機能も付けました。これで虹証をかざすだけでヘキサゴナル国内の組合加入の商会ならどこでも買い物出来ます。
残高は魔力を少しだけ流すと確認出来ます。やってみてくださいますか?」
「はい!」
私は青証に魔力をほんのちょっとだけ流した。
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アレクシード=クロスディア(5歳)
○身元証明人○
グレイシード=クロスディア辺境伯家当主
○体力→1900
○魔力→560000
○リトワージュ剣術師範代
○ルーサス流弓術2段
○魔法
火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、時空魔法、闇魔法、
☆国民預金残高☆
公用金貨3089枚
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「……どこから突っ込んでいいやら、なあ?ピサロ」
「多才な方なのですね」
「ところで【こうようきんか】ってなに?ステラになおすといくらなの?」
ピサロさんが教えてくれた。
「ヘキサゴナル国内以外ではステラは使いません。
10万ステラが公用金貨1枚ですから3億890万ステラを貴方は今、お持ちです」
さんおく…師匠が言ってたより随分多いよ!
「……ウマはいくらくらいなの?」
「だいたい金貨30枚くらいがちょうどいいラインですね。剣はお持ちですか?」
「きしがっこうにはいってからかう!」
「「「ダメです!!!」」」
アスターさんが私の手を取って目を見て真剣に言う。
「魔獣は剣じゃないと切れません!それにいくら転移できるからと言っても転移魔法使いは多いから、追いかけて来られると剣があった方がいいです!
明日買いに行きましょう!」
こうして明日の予定が決まった。
本日の更新はこれでラストです。
明日ケイタイを変えるので使い方がわからなければ、しばらく更新出来ないかもしれません。
…ものスゴイ機械オンチなのです。
更新出来たら11/10(金)に更新致します。
これからもよろしくお願いします!