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27話 頑張る日々②

「今日は家庭教師は断ったから、午後まで寝なさいケイトス」


「はい!ありがとうございます!お父様。お母様もお休みになって下さい!」


「はいはい。お風呂に入ってから寝なさい」


「そうします!」


1人でお風呂♪嬉しいな!


ちなみに私にはお世話する女の人怖いから要らないって言ったら、侍従のヘインと侍従見習いのヨハンソンが付きました!

お風呂のお世話はヨハンソンのお仕事です。

ヨハンソンは冒険者を引退してからやる事が無くなったので、このお屋敷に行儀を習いに来たら侍従見習いの仕事があると言われて今に至る。


「ケイトス様、せめて何時に戻るか言って下さい!オレ、いえ、私は一晩中、風呂を沸かす羽目になりました!」


そんなつもりではなかった!

実家では、そこら辺ほったらかしだったので正統派な貴族になった責任が生まれた。


「……これで許して下さい」


なけなしの大金貨1枚渡すと黙ったヨハンソンは芋の子を洗うように私を洗って着替えを用意して待っているヘインに渡した。

私はヘインにも大金貨1枚渡す。

うなづいたヘインは侍従服のジャケットの内ポケットに入れて、私を部屋着に着替えさせベッドに放り込んで低い美声で言う。


「お金は私達を心配させた罰金にもらっておきます!お金で誤魔化せるのは1回だけです!次は許してあげません!今日はお昼に起こします!」


「待っててくれてありがとう。ごめんなさいヘイン。ちょっとだけいい?相談があるんです」


ヘインは紙の束を持って来るとベッドの横の小さな文机の前の簡素な椅子に座る。

ちなみにこの文机は使用人の部屋からヘインが持って来た間に合わせの家具らしい。


「剣が買いたいんですけど、アスムにはいい武器屋さんが無いって言われたんです。それで、カルトラに行って仕入れたいんですけど、ヨハンソンを連れて行って良いですか?」


「……色々穴だらけの計画ですが、アスムで剣を買うのはやめた方が良いです。王都には私を連れて行って下さい。これでも騎士で貴族ですから、いろんな工房に顔が効きます。ヨハンソンはアスム含むラムズ領でしか冒険者稼業してないんで、カルトラではコネは効きませんから。問題はお金ですね。…あるのですか?」


「……午後に確かめてみる。今日は夕食前に帰るから2人ともそれまで休んでていいよ」


ヘインって騎士何だ!…私の護衛って事かな?

ヘインは私の頭を撫でて布団をかけ直して部屋から出て行く。


グッタリ昼まで寝てヘインに布団を剥いで起こされた。

着替えて昼食は勉強部屋で!


王都に行くまでに、魔法の授業を少なくとも1回は受講することがお父様からの王都行きの条件らしい。

ふむふむなるほどと、聞きつつベビーコーンのサラダに夢中になっている私の耳に衝撃の言葉が入って来た。


「騎士団の飲み会は小ホールで行われるそうです。明日の夜に」


「……え?」


何で勝手に決まってるのさ!今日貰う依頼達成のお金だけで足りるかな⁈


ヘインは、それを聞いてため息交じりに言った。


「始めに日を決めて無いと建物の所有者に勝手に決められて当たり前です!!!お金は今すぐ確認しましょう!ついでに飲み会の食材も買い物しますよ!さ、食べたら行きましょう!」


こうして、冒険者ギルドにヘインを連れて転移した。


解体受け付け窓口にはガハト様が居て私を見るなり昨日の個室へ連れ去った。慌てず、ヘインもついて来る。


解体用のローブを脱いだガハト様に報酬の値段が付いた書類を受け取る。


******

アスム街冒険者ギルド所属

Dランク

冒険者名 ケイトス


【魔獣名/ランク/討伐数/換金額】


○パフュームバタフライ/C/307匹/公用金貨3枚/大金貨6枚/銀貨8枚/大銅貨4枚

○バースデートーチ/C/1500個/公用金貨3枚

○ブラッディウルフ/B/1050頭/素材無し

○バトルスワード/B/72匹/公用金貨14枚/大金貨4枚

○シャドウスワン/B/152羽/公用金貨76枚


【合計*公用金貨97枚銀貨8枚大銅貨4枚】

☆オークション☆

○幻惑リス/A/53頭/後日支払い

○フェアリーウイング/S/86頭/後日支払い


******


「すまん!支払いきれなかったから幻惑リスとフェアリーウイングはオークションに出した!早く支払いができるように午後イチの便で輸送したから許してくれ!」


「……どうしよう!お父様に1頭あげるって約束したのに!」


ウソつきですよ!私!!!


「……わかった!持ち帰りするように「伝達」するから1頭のどこが欲しいんだ?」


「待って!!!2頭にして!!!父上にもあげたい!もちろん毛皮だよ!」


ヘインが私の暴走を止めた。


「フェアリーウイングの毛皮は多分、奥様の誕生日プレゼントになさるんですよ?普通は社交界でレディ達が身につけていく襟巻きになります。父上様には荷が重いかと思われます」


何だあぁ〜、ガッカリ!


「……毛皮1枚でいいです」


「どうするおつもりでしたか?」


「こんなの獲りました!ってお手紙出したかったんです。父上が使える物なら良かったんだけど。そうじゃないならあげても意味ないし」


父上…。大変だろうなぁ…。討伐。


「……パフュームバタフライから出来る香水を差し上げてはいかがですか?」


「ん、ヘインありがとう!香りの物は毎日討伐してるから、駄目何だ。もっとなんか考えておきます!」


ガハト様が何気なく言った。


「帝国はまだ寒い日が続くから毛皮は欠かせないんだけどな、南じゃもうあったかくなってるからなぁ」


何で南の方の出身だってバレた⁉︎


「私の出身国わかりますか?」


「チェルキオ語の訛りがちょっとだけあるからと、幾ら小さな子供でもブラッディウルフくらいは知ってるぜ?よく街道に出るからな。カルトラまでは転移能力者でも2日はかかるから街に泊まれるようにしながら進むんだな。バースデートーチはメリノのババアがさっき取りに来てた!

指名依頼にしろよって言ったら、ついでに、獲ったんだもの!良いわよね?ってたった、1個大銅貨3枚で買って行きやがった!!!

もう、あのババアの依頼は受けるな!無視しろよ」


「……はい、身に染みて感じております!無視します!」


「それから、ケイトスお前、火魔法使えるだろう?その歳で隠蔽魔法使えるのは偉いけど、隠す努力が足りないだろう⁉︎使ったら、その魔法の分が、ギルドタグに表示されるから、覚えとけ!!!」


ギルドタグ侮り難し!


「教えてくださってありがとうございます。ガハト様」


「お前には貸しがあるからな!これで1つは返したぞ!それから、討伐したはずのブラッディウルフ1000頭はどうした⁈肉でかなり稼げたはずだぞ?」


「……美味しくないって聞いたよ?バフォア様に。それに全部は入らないから燃やして埋、う、うやむやにした!!!しました!」


ヤバい!自分から土魔法使えるってバラしちゃう所だったよ!


ガハト様に額に平手打ち喰らいました!


「平民が食べるには充分美味しい肉で街の食堂では、皆使ってるからもったいない事するな!全く」


「……だって捨てないと銀色のおっきいモモンガさん入らなかったんだもん!」


「今度、アイテムボックスの広げ方を教えてやるから、2〜3日空けておけ。リタ!お金持って来てくれ!」


顔に血しぶきのお姉さんが普通の受け付けの人と一緒にお金の入った袋を運んで来てそこら中において去っていった。

銀貨と大銅貨は革の巾着に入れて、公用金貨は絹の袋ごとアイテムボックスに入れかけて10枚だけ革の巾着に入れ1枚は手に握って冒険者ギルドの酒場の主人に笑顔で渡した。


「これで皆に美味しい食事とお酒をお願いします」


「……いいのか?こんなに?」


「はい!一昨日奢ってくれって言ってた方だけじゃなく黒髪のリーゼントの方や他の方にもお金が無くなるまでお願いします。貴方方も食べて飲んで下さい。それでは失礼します」


「名前は?」


答えずにヘインを連れて市場へ転移したら、じゃがいもをたくさん買って、アスパラガスと人参、ほうれん草をヘインの言うまま購入。玉ねぎとトマト、ニンニク、香草、米、チーズをたっぷり仕入れてラムズ公爵家の玄関に転移。

ヘインの案内で厨房まで歩いたら、肉屋が雁首そろえて待っていたのでお肉の支払いを牛屋さん、豚屋さん、鶏屋さんにそれぞれ済ませて待たせたお詫びに銀貨5枚づつ余分に渡したら、笑顔で帰った。


「これから明日の飲み会のアルバイト代を渡しますね!明日の夜飲み会に食事を作る方は手を挙げてください!」


大金貨5枚づつ渡したら、皆が2度見している。

下働きの人達には大金貨2枚にした。

人数が多いんで勘弁して欲しい!

そしてシェフには期待を込めて公用金貨1枚。

スーシェフには大金貨8枚を渡した。

じゃがいもはポテトチップスとフライドポテトを切り方と調理法だけ口で説明して、たくさん作ってくれるようお願いした。

ここまでで公用金貨を64枚使った。

執事長のケインズに公用金貨25枚を渡した。


「給仕のアルバイト代はこれで間に合わせて下さい!」


「……」


ケインズから返事が返って来ない。


「……少なかったですか?」


「申し訳ありません!これは希望者が殺到しそうです!私に采配させていただいてよろしいですか?」


「はい!お願いします!ケインズさん。ケインズさんも公用金貨1枚取っておいて下さい。では、急いでいるので失礼します!」


ハンナん家へ転移。

ハンナがとびっきりのオシャレをして待っていた。


「ハンナ姉さん可愛い!」


「遅い!サッサと転移しなさい!」


照れが混じった命令を守って再び市場へ転移。

昨日と同じ場所でアスターとバランが待ちぼうけしていた。


「お待たせしてしまい申し訳ありません!私の都合で遅くなりました!お許しください。アスター様、バラン様」


「いや、さっきまでそこら辺でお付きの人とものすごい勢いで買い物してたでしょう?パーティでもするのですか?」


さすがバラン!観察力が半端ない。


昨日と同じカフェに行くのかと思ってたら4人で手を繋いで転移。

「アンジー土地・不動産屋」の看板にガラス張りの小綺麗な店に儲かってるんだろうなぁと思いながらアスターの後ろに付いて行くと髪をきっちりとオールバックにした事務系職員のオジさんがバランに何枚かの書類を見せていた。バランの隣にハンナが座り、私はアスターのヒザに座らされ、テーブルの上が見えるように。

書類だと思ってたものが家の見取り図と判明した。

私の中では出された5つの家の内、断然1つだと決まっているのだが、他の家兼店舗の値段より1桁高い。

それが原因か他の4つの候補でウンウン唸って悩んでる。

私は一番高いのをバランに差し出す。


「これにしてください!」


「私達もコレが一番いいと思ってたから、これにします」


バランがにっこり笑ってハンナに宣言した。

アスターが、お金が詰まった絹の袋をテーブルの上にガンガン置いて行く。

やっと、理解したハンナが叫ぶ。


「そんな高いの駄目です!!!ケイトス、アンタ何勝手に決めてんのよ⁈」


「私は今日も明日も忙しいの!サッサと決めてパフュームバタフライ採りに行くんです!ハンナ姉さんでも邪魔させません!それに、家の間取りが山小屋と似てるし、この広い倉庫。カーメルさんとヒュージさんが道場始めるのにいいです!」


「「道場?」」


アスターとバランの視線が私に向いた。


「ヒュージさんとカーメルさんは当代ヒュージ流剣術の剣聖何ですよ。カーメルさんはハンナ姉さんの父上でめっちゃ強いんです!」


バランの目付きが変わった。

対戦したいんだな?

アスターは倉庫のサイズを確認してまた、アイテムボックスからお金が詰まった袋をテーブルの上に積んで行く。

ハンナがごちゃごちゃ言うのをバランがレディ扱いする事でうやむやにしていた。

その間に事務員さんがアスターと売買契約を結び、見事倉庫付きの家付き店舗を下町と中心街の中程にゲット出来た!

鍵を貰えたので、今からアスターの転移でGOした。

店はそんな大きなものでは無かったが、工房が店の2倍。倉庫が店の5倍くらいある。

来歴をバランに聞くと5人ばかりの小さな染色工房だったが、染料の素材の確保が難しいので、アスムからサレタ村に引っ越したらしい。

倉庫が大きなのは、染めた布を干していたからのようだ。

手直しして倉庫は木の床になっている。


「……そうね、ここをお父さんとヒュージおじさんが道場にしたらステキよね!

2階見てくる!今夜はアスムの宿に泊まるから、アンタは虫捕りに行きなさいよ!」


「ありがとう、ハンナ姉さん!アスター様の宿に宿泊出来ますか?」


「問題無いですよ」


「じゃあこれで2晩泊まれますか?」


公用金貨3枚渡す。


「これは3カ月分ですから、1枚お預かりして残ったらバランに返させます。ケイトス様」


ハンナが居なくなってバランが付いて行った。


「公爵家のご養子になってらっしゃるのですか?」


「うん、冒険者ギルドでギルドタグ作った時に転移魔法使えるのがバレたから、商人達に競りにかけられて、奴隷になる所だったのをラムズ公爵家の跡継ぎのエイリーン兄上が引き取って助けてくれたの。アスター!!!会いたかったです!」


「……私達もです。上手に変装なさってますよ。声をかけて貰わなければ、分かりませんでした」


私達は抱き合って再会を喜んだ。


「いっぱい聞きたい事があるけど、依頼受けてて忙しいの!クロスディア商会に訪ねていくよ!近いうちに」


アスターは涙混じりでようやく返事をした。


「……はい!お待ち申し上げております!」


私はアスターと別れて、幻惑森林へと転移した。



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