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23話 ラムズ公爵家

ラムズ公爵家御用達の仕立て屋さんで子供用の貴族の服を合わせてもらう。

公用金貨6枚がサヨナラした。

めっちゃ悲しかったけど仕方ない!

親父様の父上ラムズ公爵とご対面するのだから!


ハンナに公用金貨6枚返したら、残りは公用金貨3枚と大金貨8枚と銀貨3枚…。

明日の午後から幻惑森林に行ってたくさん蝶々取るぞ!おー!!!

迎えの馬車に乗って30分。

アスムの街の貴族街の1番大きな屋敷の敷地内で止まりました!

目の前に広がってるヘキサゴナルの王城より立派な屋敷の前に広がっている大庭園にもう進みたくないと身体が訴えている。

震えてる足を一歩づつ前に進めて馬車から降りると大きな玄関ホールの長椅子に座っている超美形の男女が見えた。

赤毛の男性が親父様によく似てる。

2人は同時に立ち上がって私を挟み込み連れ去りました!

いきなりお風呂に入れられて喜んでいるとメイド達の悪意ある視線にへこむ。

やっぱり断った方が良いよね?

こんなに大きな屋敷、私には居どころがない。


やはりツンケンした侍女に食堂に案内された。

私の判断で1番下座に座ると怒られた。


「私がそうしろと言ったみたいではありませんか!」


仕方なく立ち上がって100人掛けの長〜いテーブルの上座まで移動して親父様の隣に座る。

どことなくグッタリしてる様子の親父様を心配していると公爵様から声を掛けられた。


「ケイトスくん、誠に申し訳ない!」


「……いえ、私が悪いんです。図々しくも公爵家の一員になるなんて、身の程知らずでした。今すぐ出て行きます!」


「「「待ちなさい!誤解してたんです!!!」」」


テーブルの向かい側に座った公爵夫人が顔を赤らめながら私に告白する。


「そのね、私達はエイリーンが可愛い人を見つけて養子にして連れて来たとさっきまで勘違いしてたの!

よく聞いて見たら、弟として連れて来たって言うし、大金まで貰ったって言うじゃない?

恥ずかしくて倒れそうになったわ」


「それでな、ケイトスくんさえ良ければ私達の養子になり、エイリーンを兄にしてやってくれないか?」


「……いえ、ご迷惑でしょうからこれ以上逗留するわけにはいきません。エイリーン様短い間でしたが親切にしてくださってありがとうございます」


立ち上がったのをエイリーン様に座らせられる。


「父上と母上は私しか子供に恵まれなくてね、弟を連れて来たって言ったら、とても喜んでくれたんだ。

私の養子ではいろいろと誤解されるから、大人しく父上の養子になってくれないか?」


「でも、平民の私にこんな立派なお屋敷の養子とはいえ子供が務まるでしょうか?」


「それは心配しないでいい。いろんな有象無象は私に任せておきなさい」


エイリーン様はそう言って私の頭を撫でた。


「はい、エイリーン様」


エイリーン様は笑って「兄上と呼びなさい」という。


「……はい、兄上」


父上と母上が嬉しそうに笑っている。


「そういえば名乗ってなかったね、私はランドルフ=ラムズというお父様と、呼びなさい」


「はい、お父様。よろしくお願い致します」


「では私はお母様と呼ばれたいわ!エイベル=ラムズよ!」


「……お母様。嬉しいです。家族が出来て!一生懸命稼ぎますね!」


「「「それはいいから、入学までに勉強しなさい」」」


ウッ!!!


「明日は、仕立て屋を呼んでケイトスの服を仕立ててもらいましょうね!」


「……お母様、稼いで来ますからそれからにしましょうね?それに明日は大事な予定があるのです!申し訳ありません。門限はありますか?半日は冒険者として活動したいので、勉強は午前か、午後のどちらかにお願い致します」


「それでは冒険者として活動するのに支障があるだろう?1日おきに勉強しなさい」


「ご理解いただきありがとうございます」


そうか、勉強は大事だよね。わかった、頑張ってみるよ!


夕食後かなり遅くなっていたが、おしゃべりしたいお母様に付き合ってティータイム。


塩気があるクラッカーにストロベリージャムをスプーンにちょっと乗せてお口に入れられて幸せな気分になっていると、いっぱいいるお母様達の使用人達がニコニコ見守っている。


「……お母様は、どこの生まれとも分からない私を養子にして良かったのですか?」


「いいのよ!貴方が悪い子じゃないってわかってるわ。あの用心深いエイリーンが連れて来たんですもの!弟にして欲しいなんて、おねだりするの初めてよ!」


それから1時間エイリーン兄上の話に終始して好きな下着の色まで教えてもらった私は今度はお父様にラチられた。


お父様は私とベッドの上で布団の中でおしゃべり。

意外と武闘派らしくて、強いならどんな流派の弟子でも、外国人でも帝国語が出来れば門戸を開いて自領の騎士団に入れているらしく小競り合いが多くて困っているらしい。


「特にリトワージュ流剣術の奴らの乱暴な稽古に新しい騎士達が肋骨や鼻や利き手をやられたりして腹が立つのだ!ケイトスよ!やってしまってくれ!」


あー、エイリーン兄上に口止めしてなかったな。

仕方ないか。

いくら強くてもそれを「暴力」に替えてしまった時点でヨザック兄上も制裁発動していいって言ってたし、サラッと見学しとくかー。


「私には何が出来るか分かりませんが、見学してみたいです、お父様!」


「明日の朝一緒に稽古を見に行くぞ!寝るか!」


父上と一緒に寝た時を思い出す。

父上は怖々抱きしめてだけどランドルフお父様はギュウギュウ何ですね!

愛が苦しい!

お父様が寝入ってしまったらやっと拘束が緩んで私は足元に少しだけ下がりお父様の筋肉が程良く付いた腕を枕にして寝た。


翌朝早く元気なお父様に起こされて欠伸しながらエイリーン兄上の子供のころの騎士服に着替えたら、お父様に連れられて表玄関までの長い行程を歩き、15分かかったのでお父様に進言した。


「次から転移しましょうか?」


「駄目だぞ!急いでる時は仕方ないがなるべく歩け!それもまた、鍛錬だ!!!」


おお!立派な脳筋だなあ、お父様。

私は冒険者稼業で動くけどお父様はずっと書類とにらめっこだもんね!

私も付き合うよ!


「はい!」


馬車に乗ってエイリーン兄上を待つ間に父上にお話しておくことにした。

私が義祖父に暗殺されかけたという話は割り合いスンナリと受け入れられた。


「そうか、髪が目立つな」


「……いえ、元は茶色だったのですが、拷問中に地肌ごと剥がされて髪が伸びたら白くなってたのです。目もヒスイ色だったのですが死にかけたからか紫になってしまってたんです」


お父様は私の事をぎゅーっと抱きしめた。


「……瞳の色が変わる前に聖魔法の「再生」を受けたんじゃないか?」


「はい!あ、それで、ですか⁉︎」


お父様は私から離れると泣きそうな顔で私の頭を撫でた。


「目を酷く負傷してないとそうはならない!どこの国の馬鹿だ!!!飛空艇から木箱に詰め捨てた後、助かったら死にかける程の拷問を4歳の子供にした挙句罪人に仕立ててまで殺そうとしたヤツは!!!」


他人から聞いても酷いことされてるな私。


「ご迷惑がかかるので言えません。私は田舎貴族でしたし、「再生」を掛けてくださった方が私の本当のお祖父様がその貴族を処罰できるまでの猶予に帝国にこっそりと逃がしてくれたのです。

ですから、リトワージュ流剣術が出来ることはナイショにしていて下さい。…私がリトワージュ流剣術の上級者だったことは国では知らない人がいないのです」


「そうであろうな。ヒュージ流剣聖が呆気なく負ける4歳児とか、耳の早い者であれば知っていよう!」


お父様、よく聞いてください!


「……その師匠が殺された敵討ちが成功したのが国から祝われてしまって、噂話が国中に広がって、比喩的な事ではなく皆に知られたので暗殺され掛けたのです」


「……なるほど、眠らせて飛空艇から落とすわけだ。いいのか?言うのが私だけで?」


「……エイリーン兄上は清らかな人ですから、探して殺しに行きかねません!私の産まれた国の法律では殺人は死刑です!殺された側がどんなに悪くてもその証拠が無くてはただの死に損です!

だから、エイリーン兄上には教えません!」


「そうか、甘く見えるかアレが」


「今では好みの下着の色まで知ってますから」


「メイベルだろう?そんな事言うのは、私のその日の気分を下着の色で決められて失敗した思い出がある。あれは、…」


父上の思い出を聞いてるとやっと兄上が来た!


「すみません、父上!寝坊しました!」


「兄上!今日の下着は何色⁉︎」


「……赤だが?」


「勝負パンツだね!!!誰と勝負するの⁉︎」


お父様とエイリーン兄上は頬を染めて顔を見合わせた。


「ねぇ!誰と!!!」


「で、では、父上と手合わせ願おう!」


「やったー!!!当てた!私の勝ちだ!!!今日のオヤツはミルフィーユだ!!!」


エイリーン兄上が馬車の中に入って来ると後ろからお父様と同い年くらいの渋いおじさまが口元を手で隠して入って来た。微かにいい香りがする。

馬車のドアが閉まって馬車が走り出す。


「初めてお目にかかります!ケイトスと申します!昨夜からラムズ公爵家にお世話になってますが、私は絶対エイリーン兄上を応援します!!!跡継ぎなんて狙いません!一筆書いても構いません!」


「ぷっ!はーはっは!!!面白すぎるわ!エイリーン様が勝負パンツの話をされたなんて!誰に言っても信じないだろうよ!!!」


そうかなぁ?バフォア様と話してそうなんだけどなぁ。


しばらく爆笑してたおじさんは馬車を降りる時になって自己紹介してくれた。


「私は、エイリーン様の騎士の1人でハイドン=ネージュと申します!以後、エイリーン様をよろしくお願い申し上げます!」


「承りました!」


そっか、ハイドン様は私にとってのアスターと一緒だからエイリーン兄上を1番にしてくれるんだ!!!


私はエイリーン兄上とお父様に手を繋がれて街の練兵場に入って行った。

皆、めっちゃ見てる!


大体、200人くらいの大人の騎士達がいて、自前の騎士服に身を包んでいたから、ビンボーな騎士はすぐわかる。

あー、あそこになんか、ハデな服を着たイヤ〜な目で私を見てる奴らがいるなぁ。

そいつらが目の前に来た。



うやうやしくお父様に略式礼をする代表者1人とひざまづき畏まってる9人の派手派手しい服の騎士にお父様が仮面でも被っているかのような無愛想な顔になった。

私は仕方なくお父様そっくりの無愛想な顔になってるエイリーン兄上に4歳の生意気な貴族の子供らしく言い放つ。


「……ねぇ、兄上!何故アイツはひざまづいてお父様にお礼しないの?無礼なんじゃないの!」


エイリーン兄上だけでなく練兵場に集まった大部分の騎士達が下を向いて笑いそうなのをごまかしている。エイリーン兄上も緩みそうになる口元をグッと噛みしめて私の頬を音がするように、しかし、軽くビンタした。


「初めて会う人でも、アイツなんて言っちゃダメだろう!」


「……だって!お父様は、公爵何だよ!!!上から数えて2番目にエラいんだよ!!!あの人は同じくらいエラいの⁉︎だから、お父様にひざまづかないの?」


ちゃんとぶたれた頬を押さえて泣きそうな震える声で言いました!

うるうるの目でエイリーン兄上を見たらその後ろのハイドン様が必死になって笑うのを堪えている。

笑うな!まだ!!!


エイリーン兄上はため息をついて私に冷たく言った。


「騒ぐようならもう連れて来ないぞ!」


「……ごめんなさい兄上。静かにしてます」


エイリーン兄上、つまんない終わらせ方したなぁ。

さあ、ほお袋にドングリいっぱい詰め込んでるリスと同じぐらい頬を膨らませて、ヤツを上目遣いに睨むぞ!


奴がニヤニヤしている。

素で睨めるな。


そいつが皆の方を向いて言う。


「公爵閣下に敬礼!!!」


皆が敬礼してる時に今度はそいつの所まで走って行って足を蹴った。そのムダに派手派手しい赤地に金のツタ模様の刺繍のズボンにしっかりと私の足跡がついた。


「オイ!お前!!!何故お父様にお尻を向けてる⁉︎それに、お前がそっちに向いてたらお前も敬礼されてるみたいだろう⁉︎何偉そうにしてる!」


そいつの取り巻きが言う。


「偉そうじゃなくてエラいんですよ。大隊長ですからねぇソレル様は!」


「爵位は何だ⁉︎」


私がそう言った瞬間にソレルとやらは我が意を得たりとばかりに私に牙を剥いた。


「公爵閣下、このように身分をふりかざす者を一族とおっしゃるのですか?

公爵閣下は身分の垣根を越えた強い者たちを集めてこのアスムの街を守る騎士団を編成してるっていうコトをよぉ〜く、わからせてあげてくださいね」


「あのな、私は礼儀が無いと言ってるんだ!お前の給料を出してるのはお父様だろう?身分と金にへつらえと言ってるのではない!お父様がお前達の生活を支えているその心に頭を下げよと言ってるのだ。

ここまで言ってわからないなら私が剣でお前に教えてやる!」


あー!自分から言ってしまった!

アイツから戦うように仕向けるつもりだったのに!

くーっ!私の未熟者!!!


「誰か、私にロングソードを貸して下さい!」


エイリーン兄上が木剣を2つ持って来た。


「……お前から言ったのだから、公爵家の人間として、責任を取って試合をしなさい!負けたら、きちんと謝るのですよ!」


「私の剣に誓って!」


渡す時にエイリーン兄上は私に言った。


「リトワージュ流剣術でやるのか?」


「いや、使わないですよ。多分ヒュージ流で大丈夫。体術使われたら私、ボコボコになるから頑張る!」


お父様を見たらもうめっちゃワクワクしてるのを怖い顔してごまかしてる。


騎士達はニヤニヤ軍団はソレルを囲んでニヤニヤしながら作戦会議中。

私は身体を温めたいから練兵場を走る。

ニヤニヤ軍団がやっと型をさらっているがリトワージュ流じゃない!


険しい顔で見ているエイリーン兄上に何の流派の剣術か聞くと今、王都で1番流行ってるエトレ流剣術という1000年前に作られた流派らしい。

ナメやがって!!!

じゃあ、私もそれにしてやる!

エトレ流派の1番強い人に型を教えてもらってわかったのだが、リトワージュ流剣術とヒュージ流剣術の簡易バージョンでカンタンに覚えられた。

教えてくれたその人にいわゆる「接待試合」されて、勝利して無邪気にはしゃいで威張っている子供を演じる。

奴らがそれを見てニヤニヤしながら、模擬戦を始めたので「接待試合」したおバカさんを、本気を出してボコボコにして捨てゼリフする。


「4歳児ナメんなよ」


今の試合を見てたのか、お父様がやってきて、私の頭を撫でて「スゴい試合だった!ケイトス、かっこいい!!!」と、大興奮。

まるで私のファンのようだ。


「……行くか?」


「はい!」


私は悪者退治に乗り出した。


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