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対決

 宮廷学校内の道場へ行くと、ロベルトもいて思わず笑顔になった。


「試験合格したんだ?おめでとう!」


「いや、それがめでたくも無い感じで、ね」


「手合わせしてくれよ!」


「エトレ流とヒュージ流、どっちがいい?」


「ん~!たまには他流派と戦ってみてぇ!」


「わかった。避けないでね。ケガするよ」


しかし、3合、剣を交わしただけで、ロベルトは本気で場外に逃げた。つまり、反則負け。


「強すぎるだろ?!何で何でもかんでも出来るんだよ!」


「師匠が、何でも教えてくれたんだ!じゃあ、もう1回。エトレ流でやってみる?私は同じ場所に立ってるから」


「おお?すごい自信だな!動かして見せるぜ!」


結構いい鍛練になった。エトレ流の知らなかった技をオンパレードで見せてくれたロベルトに感謝だ。


「巨石落とし!」


「……あ、動いちゃった。ロベルトの勝ちだよ」


唯一の苦手、力技の広範囲攻撃は、同じ場所に留まっていてはやられてしまう。

星崩しで対応した。

 ロベルトは、肩で息をしながら私をジトッと睨みつけている。


「中等科じゃ、俺が一番強いのに!!」


「……問題発言辞めようか?皆が睨んでるよ。ロベルト」


「だって!俺のプライドぼろぼろじゃん!!巨石落としを星崩しで防がれるとか、あり得ないから!ルーク様のバカ野郎!!」


「拗ねないの。……もう1回やる?」


「やる!」


かなり、手加減して戦ったらご機嫌になったロベルトに、それでいいのかよ?と思いつつ機嫌が直って良かったとホッとした私は試合を見られていた事に気付かず結構な人垣に驚いてしまった。

 その中に赤い騎士服を着て、女の子の取り巻きを連れた美剣士を発見した。

 つややかな流れるような金髪は、背中の中ほどまで伸びていて念入りにセットされている。目鼻立ちは中性的でハッとするほど美しい。

 それで、性格最悪、と!


目が合うとツカツカと足音も荒く近寄って来た。え~~?!初日から?対決?シッ、シッ、来るな!


「お前が【紅の騎士】か。他人の生き血を好むそうだな!唾棄すべき性癖だ。紅の名にふさわしくない!その看板を引きずり降ろしてやる!【紅の騎士】と名乗っていいのは、私だけだ!」


「「「「「「「「きゃあああ!ステキ!メフィ様ぁあ!仕置きしておしまいになって!」」」」」」」」」


……キザ野郎め。なぁ~にが生き血を好むだ!

鼻っ柱をボキボキに折ってやる。


「ハイハイ、ケガさせないように頑張りますねー」


「キサマァ!!私を馬鹿にした報いを受けるといい!ロベルト!審判をやれ!」


「俺はお前の先輩なんだけど?何で名前を呼び捨てられなきゃならないんだよ!ルーク様の為に審判はやるけどさ」


ロベルトもお怒りモードである。


場内に入って来た途端、「始め」の声も待たずに斬りかかって来た。エトレ流の縮地からの流星。ザトー子爵が自慢してただけある。ロベルトより下手したら強い。

星崩しで対応してこちらも流星で公用金貨6枚の騎士服を剣圧で裂いてやる。

 どうだ?キザ野郎!大勢の前で素っ裸になった気分は!


「きゃ、きゃあああああ!」


まるで女の子みたいな声を出す。うずくまって動かないメンフィールドに話しかける。


「で?まだ、続けますか?ザトー様」


「ヒック、ヒック、おじい様に言ってやる!うわぁあああん」


「「「「「「「メフィ様!!」」」」」」」」


ロベルトが近寄って行き、マントをかけて前身を隠してやっている。

 優しいな。私の騎士は。


「これに懲りたら、初対面の方に失礼なことを言うなよ?ザトー様」


後は取り巻きに任せたらいいか。


「ロベルト、帰るよ」


「うわぁ、ルーク様女の子にも容赦ないな!帰ろうぜ」


「今、なんて言った?……女の子って聞こえたんだけど?」


「ザトー子爵令嬢だよ!……知らなかったのか?!」


「生意気な子としか聞いて無いもの!今、超びっくりしてるよ!」


「「「「「「「「このませガキ!!メフィ様に謝りなさいよ!」」」」」」」」


「それとこれは別!私だけけなされて何で温和しくしてなきゃいけないの?!ザトー様が増長した原因は貴女たちにもあるんだからね!全員で反省すれば?ロベルト帰ろう」


学校から屋敷まで、鍛練に走って帰った。


母上に包み隠さず決闘の一部始終を言ったら母上は唸り始めた。


「下手したら責任取って嫁入りさせろっていうかもね。やり方がまずかったわね!でも、ざまあみろだけど!!良くやったわ!ルーク」


「何で女の子なのに男装の美剣士してたのかな?」


ルティーナ母上は一言で片付けた。


「自分の理想の男性像を演じてたんじゃない?バカじゃないかしら?」


「女の子ってわからない!」


翌日エメリヒ工房に行って仕入れをしてメリエレさんとルメリーさん、ギルドの運び屋ジェラルドさんを連れて銀冠山脈越え。アイテムボックスに荷物がいっぱいで、なかなか、しんどかった。

 リオラの街に着くとジェラルドさんも私も、一切合切の仕入れた荷物を出して、あとはメリエレさんと新しく雇った従業員のヤムさんと、ミリリさんにお任せした。

 

職人村に行き銀の延べ棒を200程買って、アイテムボックスにしまい、ナツメ男爵領のリッツの元へ転移したら、訪問を待ちかねられていた。


「まだ、3分の1でこれだけあった!銀貨36枚分だから、銀貨7枚分くれ!」


「へぇ、すごいね。はい、銀貨7枚ね」


粗末な巾着袋にパンパンに詰まった小粒の宝石は、リグルが細工に使うのにちょうど良いくらいの大きさで私は大いに満足した。


「リョウちゃん!帰りましょう!」


『私の後任決まるまでは、ここにいるわ!』


『そう。ありがとう!なんか困ってる事ある?』


『あるわ!5回くらい水浴びが覗かれたの!ブチ殺して』


『ちょっと待ってて衛兵2人連れて来る!』


『あと、食材の仕入れもお願い!』


 チャトン伯爵領の市場にジェラルドさんを連れて行き、小麦粉、バター、チーズ、ベーコン、ハム、野菜を二人のアイテムボックスいっぱいまで買い、二人で王都の屋敷と幻想庭園の厨房と、リョウちゃんの差し入れに使った。

リチャード司令官にお願いして、なるべく屈強な兵士を2人貸してもらった。天幕とベッドも借りてきて、ナツメ男爵領のリョウちゃんに組み立てて渡した。


 王都の銀細工師アイルを訪ねると、グチられた。リグルさんの親方ヨームさんが、いちいちどんなやり取りをしたかまで詳細に聞いてくるので答えるのに苦慮したらしい。


「約束破るのとか絶対許せない人だから、何か言われるかもな」


そうだった。すっぽかしたんだった!


恐々、夕飯の時刻にヨーム工房に行くと風呂敷包みを背中に背負ったリグルさんしか出てこなかった。


「……よろしくお願い致します!ケイトスさん!」


「親方は?渡す物があるんだけど?」


「何ですか?」


「銀の延べ棒。1本銀貨5枚で買わないかな、って」


アイルが食いつく。


「俺に売ってくれ!金持って来るな!」


言うなり転移した。

 リグルさんも慌ててヨーム工房に入って行く。その手に銀の延べ棒を一つ握らせた。

 品質を疑われたら困るからだ。

親方が出て来た。


「入れ!」


工房の隅にある商談スペースで机を挟んで座る。


「随分安いじゃねぇか!どういうつもりだ!」


「これは、私が採掘して来ました。腕の良いお弟子さんをいただくお礼です。100本あります。買いますか?」


「買うぞ!でも、そんなに金が無い!50本買う!」


「大金貨5枚ですね。後払いでもよろしいですよ?」


「じゃあ、100本全部買う!契約書書くからちょっと待ってろ!」


工房の中にアイルが転移して来た。


「俺にも!!ケイトス!」


銀貨のたっぷり入ってる麻袋を重そうに両手で持ちながらアピールしているアイルに、他の工房には絶対しゃべるな!と釘を刺して銀の延べ棒50本を売った。

 ヨーム工房と後払いの契約書を交わして、リグルさんを連れて王都の食堂街の中心にある、元パン屋をリノベーションした新店舗に転移した。店の鍵を渡すとフルフルと震えながら玄関の鍵を開け中に入ってランプを点灯する。

 万感の思いに浸ってるところ悪いが、私のスケジュールは分刻み。金庫を教えて宝石と銀の延べ棒50本をブチ込むと「じゃ!」と片手を上げて退去した。

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